お正月は、新しい年の幸せを願い、家族が揃って過ごす日本の最も大切な年中行事です。初詣やおせち料理、お年玉など伝統的な楽しみ方から、家族みんなで盛り上がれる正月遊びまで、お正月の過ごし方を幅広くご紹介します。小さなお子さんがいるご家庭でも楽しめるアイデアが満載です。
CHAPTER 01お正月とは?簡単におさらい
お正月は、新年の神様である年神様(としがみさま)を家にお迎えし、一年の幸せと豊作を祈る行事です。もともとは旧暦の1月を指す言葉でしたが、現在では1月1日〜3日の三が日、広くは松の内(1月7日まで、関西は1月15日まで)の期間を「お正月」と呼びます。
旧暦1月の和名は「睦月(むつき)」。家族や親族が集い、互いに仲睦(なかむつ)まじくする月という意味が込められています。ほかにも「初春月(はつはるづき)」「端月(たんげつ)」「太郎月(たろうづき)」「初空月(はつそらづき)」「嘉月(かげつ)」「年端月(としはづき)」など多くの異名があり、新しい年の始まりをいかに大切にしてきたかがうかがえます。
年神様は各家庭に幸福をもたらす神様で、先祖の霊が神格化した存在とも考えられています。年神様は盆と正月の年2回、家に帰ってくると信じられてきました。門松は年神様の依代(よりしろ)で、神様が降り立つ目印として飾ります。「松」は「保つ」に通じ百木の長とされますが、古くは榊(さかき)・椿(つばき)・樫など冬でも枯れない常緑樹ならどの木でもよいとされていました。注連縄は向かって右が太い方を上にして張り、その場所が年神様のいる清らかな区域であることを示します。現代では宝船や輪飾りなど形も多様化しています。鏡餅は年神様へのお供え物で、三方(さんぼう)やお盆の上に半紙を敷いて置き、橙を載せます。
CAUTION / 正月飾りを飾ってはいけない日
正月飾りは12月26〜28日に飾るのが良いとされています。29日は「九松(くまつ)」とも呼ばれ「苦」に通じるため避けます。31日は「一夜飾り」といって年神様に対して誠意がないとされ、縁起が悪い日です。28日は末広がりの「八」がつく吉日として最も人気があります。
- 年神様(としがみさま)
- 新年に各家庭を訪れ、一年の幸福と五穀豊穣をもたらすとされる神様。先祖の霊が神格化したものとも考えられています。
- 三が日(さんがにち)
- 1月1日・2日・3日の3日間。多くの会社や学校が休みになり、家族で過ごす期間です。
- 松の内(まつのうち)
- 正月飾りを飾っている期間。もともとは1月15日(小正月)までを松の内としていましたが、寛文2年(1662年)の法令により関東では1月7日までとなりました。関西では今も1月15日までとする地域が多いです。松の内が過ぎた翌日以降は「松明け(まつあけ)」と呼ばれます。
- お屠蘇(おとそ)
- 正月に飲む薬草入りの日本酒。一年の邪気を払い、長寿を願って元旦に家族で盃を交わします。
1月1日〜3日
三が日(お正月の中心期間)
約9,500万人
三が日に初詣に出かける推定人数
1,000年以上
日本のお正月の歴史
正月飾りの縁起物とその意味
正月飾りにはそれぞれ深い意味が込められています。鏡餅は三方(さんぽう)に半紙を敷き、うらじろ・ゆずり葉などを添えて飾ります。うらじろは葉の裏が白いことから「裏表のない清い心」と「白髪になるまでの長寿」を、ゆずり葉は新しい葉が出てから古い葉が落ちることから「子孫繁栄」を象徴しています。
門松は年神様が迷わず家を訪れるための目印です。竹は成長が早く生命力の象徴、松は常緑で不老長寿の願いが込められています。注連縄(しめなわ)は神域と俗世の境界を示し、神聖な場所であることを表します。注連縄に付ける紙垂(しで)は清浄を意味し、家の中を年神様をお迎えするにふさわしい清らかな空間にします。
注連縄に縁起物をつけたしめ飾りは、不浄なものが入らないよう結界(けっかい)を張る意味を持つ正月飾りです。飾る場所や地域によっていくつかの種類があります。
- 玉飾り
- 注連縄に橙や扇、裏白などの縁起物を華やかにあしらったもの。玄関先に飾ることが多い
- 輪飾り
- 注連縄を輪の形にした簡素なしめ飾り。台所や水回りなど家の各所に飾る
- ごぼう注連
- 片方が太く片方が細い注連縄。太い方を向かって右に飾るのが一般的で、神棚に多く用いられる
しめ縄そのものにもいくつかの種類があり、代表的なものに牛蒡注連(ごぼうじめ)と大根注連(だいこんじめ)があります。牛蒡注連は一方の端が細くなった形状で、その姿がごぼうに似ていることからこの名が付きました。一方、大根注連は両端が太く中央がくびれた形で、大根を思わせる堂々とした見た目が特徴です。出雲大社に掛かる巨大なしめ縄は大根注連の代表格として知られています。いずれも藁(わら)を左綯(ひだりな)いにするのが神事の決まりで、日常の右綯いとは逆にすることで神聖な結界であることを示しています。
TIP / 元日の掃き掃除はお休み
年神様は元日の朝に玄関から入ってくるとされるため、元日に掃き掃除をすると年神様の運んできた福を掃き出してしまうという言い伝えがあります。大掃除は年末のうちに済ませておきましょう。
鏡餅の名前の由来は、丸い形が古代の銅鏡に似ていることにあります。大小二つの餅を重ねるのは「円満に年を重ねる」という意味があり、上に飾る橙(だいだい)は「代々栄える」という語呂合わせです。伊勢海老や昆布(よろこぶ)を添えることもあり、一つひとつの飾りに家族の幸せへの願いが込められています。
鏡餅の正式な飾り方には、一つひとつに意味があります。まず三方(さんぼう)の上に四方紅(しほうべに)という赤い縁取りの紙を敷き、その上に裏白(うらじろ)と譲り葉(ゆずりは)を左右対称に置きます。裏白はシダの一種で、葉の裏が白いことから「裏表のない潔白な心」を、譲り葉は新しい葉が育ってから古い葉が落ちることから「家系が絶えず続くこと」を表します。その上に大小二段の丸餅を重ね、頂上に橙(だいだい)を載せます。橙は冬を越しても実が落ちないことから「代々(だいだい)栄える」という縁起を担いでいます。
CHAPTER 02家族での過ごし方アイデア7選
お正月の過ごし方は家庭によってさまざまですが、伝統行事を取り入れつつ家族みんなで楽しめる過ごし方をご紹介します。
1. 初詣に出かける
お正月といえば初詣。新年に初めて神社やお寺にお参りし、一年の幸せを祈願します。三が日は混雑するので、小さなお子さん連れなら1月4日以降や地元の氏神様への参拝がおすすめです。おみくじを引いたり、屋台で食べ歩きしたりするのも楽しみのひとつです。
参拝の際は「二拝二拍手一拝」の作法が基本です。お賽銭を入れたら鈴を鳴らし、深いお辞儀を二回、拍手を二回、最後にもう一度深くお辞儀をします。お賽銭の金額に決まりはありませんが、「ご縁がありますように」と五円玉を入れる方も多くいます。
初詣の時期は松の内(関東は1月7日まで、関西は1月15日まで)に行くのが一般的です。混雑を避けたい場合は、三が日を過ぎてからでもご利益に差はありません。おみくじは持ち帰って1年間大切にしても、境内の結び所に結んでも構いません。
初詣の楽しみの一つであるおみくじは、もともと国の政策や後継者選びなど重大な事柄を神仏の意志によって決める「籤(くじ)」が起源です。鎌倉時代以降、個人の運勢を占う形に変わり、現在のような吉凶を記した紙のおみくじへと発展しました。一般的な順序は大吉・吉・中吉・小吉・末吉・凶・大凶ですが、神社によって順序や種類は異なります。凶を引いても「これ以上悪くならない=これから良くなる」と前向きに捉える考え方もあり、利き手と反対の手で結ぶと願いが叶うという言い伝えも広く知られています。
2. おせち料理とお雑煮(ぞうに)を楽しむ
元旦の朝は家族でおせち料理を囲みましょう。黒豆(くろまめ)、数の子(かずのこ)、田作り(たづくり)など、一つひとつの料理に込められた意味をお子さんに伝えながら食べると、食育にもなります。お雑煮は地域によって味付けや具材が異なるので、おじいちゃん・おばあちゃんの家のお雑煮を味わうのも楽しみです。
3. お年玉を渡す
子どもたちが最も楽しみにしているのがお年玉です。もともとは年神様からの贈り物であるお餅(御年魂)を分け与える風習が由来とされています。ポチ袋に入れて渡すのがマナーで、金額は年齢に応じて決めるのが一般的です。
お年玉の由来は、年神様にお供えした丸餅を「御歳魂(おとしだま)」として家長が家族に分け与えたことに遡ります。この丸餅には年神様の魂(としだま)が宿ると信じられており、それを食べることで1年間の生命力をいただくとされていました。現在のようにお金を贈る形になったのは商家の文化が広まった江戸時代後期からです。
お年玉を渡す際のマナーとして、ポチ袋(お年玉袋)に入れて渡すのが礼儀です。「ポチ」の語源は関西弁の「ぽちっと(少しだけ)」から来ているとされ、控えめな気持ちを表しています。お札は肖像画を内側にして三つ折りにし、袋の表面にお子さんの名前を書くのが丁寧な渡し方です。
4. 正月遊びを楽しむ
凧揚げ、羽根つき、かるた、福笑い、すごろく、コマ回しなど、日本の伝統的なお正月遊びは家族で盛り上がれるものばかりです。スマホやゲームから離れて、昔ながらの遊びに挑戦してみましょう。
羽根つきは、羽根の玉に使われている黒い実が「無患子(むくろじ=子が患わない)」という木の種であることから、子どもの無病息災を願う縁起物です。さらに羽根を羽子板でコンコンと打つ音は邪気を祓うとされ、羽根つきは子どもを病から守る遊びとして室町時代から親しまれてきました。
凧揚げは、空を見上げることから「立春(りっしゅん)の頃に空を見上げると目が良くなる」という言い伝えに由来します。江戸時代には男の子が生まれた家で初正月に凧を揚げる風習があり、子どもの健やかな成長を願う意味がありました。
福笑いは、目隠しをしておたふくの顔の上に目・鼻・口などのパーツを置く遊びです。出来上がった顔のおかしさに笑いが起き、「笑う門には福来たる」の縁起担ぎになっています。かるた・百人一首は江戸時代にはお正月の遊びとして定番になっており、読み札と取り札を使って遊びながら古典文学に親しめる知的な正月遊びです。
5. 年賀状を読む・書く
届いた年賀状を家族で読むのもお正月の楽しみです。年賀状の原型は、江戸時代の「年礼回り(ねんれいまわり)」です。2日から15日にかけて親戚や知人を訪問する風習でしたが、生活圏が広がるにつれて簡略化され、玄関先での挨拶や名札を置いて帰る形に変わりました。明治6年(1873年)に郵便はがきが発売されると、年始の挨拶を手紙で送る年賀状の文化が一気に広まりました。
INFO / 年賀状の賀詞マナー
年賀状に書く賀詞(お祝いの言葉)には格式の違いがあります。「賀正」「迎春」「寿」は略式のため、目上の方には使わないのがマナーです。上司や恩師には「謹賀新年」「恭賀新年」など4文字の賀詞を使いましょう。「あけましておめでとうございます」は万人に使える無難な表現です。
お年賀の贈り物マナー
年始の挨拶回りで持参する品物を「お年賀」といいます。もともとは年神様へのお供え物を持ち寄る習慣が変化したもので、現在は日頃お世話になっている方への年始の挨拶として定着しています。訪問先では玄関先で手短に済ませるのが基本ですが、「どうぞお上がりください」と言われた場合も長居は避けましょう。
お年賀の金額は2,000〜5,000円が相場です。品物は日持ちのする焼き菓子・コーヒー・紅茶・海苔などが定番で、のし紙は紅白蝶結びに「御年賀」と表書きします。お年賀を贈れるのは松の内(関東は1月7日、関西は1月15日)までです。松の内を過ぎた場合は「寒中見舞い」として贈りましょう。
| 贈り先 | 全体 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 4,174円 | 3,000円 | 3,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
| 勤務先の上司 | 4,921円 | 5,000円 | 3,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
| 取引先/関係 | 3,000円 | 3,000円 | 2,000〜5,000円 | 3,000円 | 5,000円 |
| 親・親類 | 1,894円 | 1,000円 | 1,000円 | 1,000〜3,000円 | 4,000円 |
INFO
お年賀は年始の挨拶の手土産ですので、お中元・お歳暮と比べて金額は控えめです。手ぶらで行きにくい場合はタオルセットやクッキーなど、相手の負担にならない実用品がおすすめです。
6. 初日の出を見に行く
元旦の早朝に初日の出を見るのは、新年を特別なものにしてくれる体験です。海岸や山頂、展望台など、地域のおすすめスポットをチェックしておきましょう。防寒対策を万全にして、温かい飲み物を持っていくのがポイントです。
7. 新年の目標を立てる
家族で集まって新年の抱負を発表し合うのもお正月ならではの楽しみ方です。お子さんには「今年がんばりたいこと」を絵や文字で書いてもらい、リビングに飾っておくと一年間の励みになります。
パ
新米パパ / 2歳児のパパ
小さい子供がいると、お正月も普段と変わらない過ごし方になりがちです。何か特別感を出せる工夫はありますか?

博
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
お子さんと一緒に鏡餅を飾るところから始めるのがおすすめです。「年神様がやってくるよ」と説明しながら一緒に準備すると、お正月への期待感が高まります。元旦の朝はいつもより少しだけ特別な食器を使うだけでもお正月気分が出ますよ。
CHAPTER 03初夢と書き初め|1月2日の風習
お正月の2日目は「事始め」と呼ばれ、新年初めて仕事や作業を行う日とされています。元日は年神様をもてなす日であり仕事を休むべきとされていたため、2日が実質的な新年のスタートの日でした。この日に見る夢が「初夢」、新年初めて筆を執るのが「書き初め」です。
初夢|縁起の良い夢を見るおまじない
1月2日の夜に見る夢を初夢と呼びます。縁起の良い初夢を見るために、七福神が乗った宝船の絵を枕の下に敷いて眠る風習がありました。宝船には「長き世のとお眠りの皆覚め波乗り船の音のよきかな」という回文(上から読んでも下から読んでも同じ歌)が書かれており、この歌を3度唱えてから眠ると幸運が訪れるとされていました。
縁起の良い夢として有名な「一富士、二鷹、三茄子(なすび)」は、駿河国(現在の静岡県)の名物に由来するとされています。富士山・愛鷹山・初物の茄子の値段が高いことにちなむ説や、富士=「無事」、鷹=「高い」、茄子=「成す」の語呂合わせ説など諸説あります。かつては多くの神社で宝船のお札が売られていましたが、現在は取り扱う神社が減っています。
初夢を良いものにするためのおまじないとして、宝船の絵を枕の下に敷いて寝るという風習があります。七福神が乗った宝船の絵に「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」という回文(上から読んでも下から読んでも同じ歌)を書き添えるのが正式な形です。もし悪い夢を見てしまった場合は、翌朝その絵を川に流すと悪夢が去るとされていました。
また、夢を食べてくれるという伝説の動物獏(ばく)の力を借りる方法もあります。「獏」と書いた紙を枕の下に敷くと、悪い夢を獏が食べてくれるという言い伝えがあり、江戸時代には獏の絵が描かれた枕や枕カバーが売られていました。
パ
新米パパ / 2歳児のパパ
子どもに「良い夢見てね」って宝船の絵を枕に入れてあげたら喜びそうですね。
博
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
いいですね。お子さんと一緒に宝船の絵を描いて枕の下に入れるのも楽しいですよ。翌朝「どんな夢を見た?」と聞き合うのもお正月ならではの家族の時間になります。
書き初め|新年の抱負を筆に込めて
書き初め(かきぞめ)は「吉書(きっしょ)」とも呼ばれ、平安時代の宮中行事「吉書始め」に由来します。新年に天皇が初めて文書をご覧になる儀式として始まり、やがて江戸時代に寺子屋を通じて庶民へ広まりました。1月2日に書くのは、この日が事始めの日だからです。
現在では学校の冬休みの宿題として定番になっている書き初めですが、家族でそれぞれ今年の目標を書いて見せ合うのも楽しい過ごし方です。毎年1月5日に日本武道館で開催される「書初め席書大会」は昭和40年から続く伝統行事で、制限時間内に課題を書き上げる大会として多くの参加者が集まります。
TIP / 小さなお子さんとの書き初め
筆が難しい幼児には、太めのクレヨンやフェルトペンで好きな文字や絵を大きな紙に描かせてあげましょう。「書き初め」の形式にこだわらなくても、新年に家族で何かを書く体験そのものが大切です。書いた作品をリビングに飾れば、お正月の良い思い出になります。
CHAPTER 04お正月の伝統的な遊び
お正月には古くから伝わる遊びがたくさんあります。それぞれの遊びには縁起の良い意味が込められており、ただ楽しいだけでなく、新年の願いを込めて遊ぶ文化があります。
| 遊び | 対象年齢 | 意味・由来 | 必要なもの |
|---|---|---|---|
| 凧揚げ | 3歳〜 | 子どもの健やかな成長を祈る。「願いを天に届ける」意味も | 凧、広い場所 |
| 羽根つき | 5歳〜 | 邪気を払う厄除けの遊び。負けると顔に墨を塗られる | 羽子板、羽根 |
| かるた | 4歳〜(読み札を読んでもらう) | 藤原定家が選んだ小倉百人一首が定番。貝合わせとポルトガルのcartaが融合した遊び | かるたセット |
| 福笑い | 2歳〜 | 笑う門には福来る。家族で笑い合う縁起物 | 福笑いセット |
| すごろく | 3歳〜 | サイコロの出目で運試し。家族団らんの定番 | すごろくセット |
| コマ回し | 4歳〜 | 「ものごとがうまく回る」「お金が回る」縁起物 | コマ、紐 |
お年玉を渡す範囲は、一般的に自分の子ども・甥姪・孫までが多く、友人の子どもには渡さないのが通例です。ただし地域や親戚付き合いの濃さによって慣習が異なるため、事前に配偶者の家族と金額を相談しておくとトラブルを避けられます。赤ちゃんや小学校入学前のお子さんには、現金の代わりにおもちゃや絵本を贈るのもよいでしょう。
最近ではキャッシュレスお年玉も増えています。電子マネーやQRコード決済で渡す家庭もありますが、お正月ならではの「ポチ袋を開けるワクワク感」を大切にしたいという声も根強く、現金派が依然として多数派です。お年玉をもらった子どもに貯金や管理の習慣を教えるきっかけにするのもよい教育の機会です。
なかでも百人一首(小倉百人一首)は、お正月遊びの花形です。藤原定家(1162〜1241年)が飛鳥時代から鎌倉時代初期までの歌人100人の代表作を1首ずつ選んだもので、定家の山荘があった京都・小倉山にちなんで名付けられました。1首を上の句と下の句に分け、読み手が上の句を詠み、取り手が下の句の札を取る遊び方は、平安時代の宮廷遊び「貝合わせ」と、ポルトガルから伝来したカルタ(carta)の形式が融合して生まれました。元禄年間に京都で木版刷りの札が売り出され、庶民の正月遊びとして定着しました。
TIP / 家族で楽しめるかるたの遊び方
「ちらし取り」は取り札をバラバラに並べて読み手が詠む基本ルールで、初心者にも楽しめます。「源平合戦」は二組に分かれて対戦する方式で盛り上がります。本格的な競技かるたは明治37年(1904年)に全国大会が始まった歴史あるスポーツで、名人戦・クイーン戦が毎年開催されています。
パ
新米パパ / 2歳児のパパ
2歳の子でも楽しめるお正月遊びはありますか?凧揚げやかるたはまだ早い気がして。
博
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
福笑いは2歳からでも十分楽しめますよ。顔のパーツを置くだけなので、小さなお子さんでも参加できます。あとはシール貼りで年賀状づくりや、新聞紙で簡単な凧を作って室内で飛ばすのもおすすめです。大人も一緒に笑えるのがお正月遊びの良いところですね。
CHAPTER 05年齢別のお正月の楽しみ方
お子さんの年齢によって楽しめることが変わります。年齢に合ったお正月の過ごし方を知っておくと、家族全員が楽しめる計画を立てやすくなります。
| 年齢 | おすすめの過ごし方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 0〜1歳 | 初めてのお正月を記念撮影。お宮参り用の祝着があれば着せてもOK | 人混みの初詣は避ける。防寒対策を万全に |
| 2〜3歳 | 福笑い、シール遊び、鏡餅の飾りつけ手伝い、お雑煮デビュー | お餅は喉に詰まるので小さく切って。3歳以降が安心 |
| 4〜6歳 | かるた、凧揚げ、コマ回し、お年玉の意味を教える | 正月遊びの「負けた」で泣く子も。勝敗より楽しむことを教えて |
| 小学生 | 百人一首、すごろく、初日の出、新年の目標を書く、書き初め | お年玉の使い方を一緒に考えるのが金融教育の第一歩 |
CHAPTER 06お正月の行事食を楽しむ
お正月はおせち料理、お雑煮、お屠蘇(とそ)をはじめ、さまざまな行事食を楽しむ時期です。一つひとつの料理に込められた願いを知ると、食卓がもっと楽しくなります。
おせち料理は、もともと年神様にお供えする料理でした。黒豆(まめに働けるように)、数の子(子孫繁栄)、田作り(五穀豊穣)、海老(えび)(腰が曲がるまで長生き)など、一品ごとに縁起の良い意味が込められています。お子さんに「これは何の意味?」とクイズ形式で教えると盛り上がります。
お雑煮は地域によって驚くほど違います。関東は角餅を焼いてすまし仕立て、関西は丸餅を煮て白味噌仕立てが主流です。香川県のあん餅雑煮や、新潟県の鮭入り雑煮など、各地のお雑煮を調べてみるのも面白いですよ。
お屠蘇(おとそ)は「邪気を屠り、魂を蘇らせる」という意味を持つ薬酒です。山椒・桔梗・防風・肉桂などの生薬を日本酒やみりんに浸して作ります。正式には屠蘇器(とそき)と呼ばれる朱塗りの酒器セット──銚子(ちょうし)・三つ組盃(みつぐみさかずき)・盃台(さかずきだい)──を用いて注ぎ分けます。飲む順番にも決まりがあり、年少者から年長者の順に盃を回します。これは若い人の生気を年長者に分けるという意味が込められています。
正月の食卓では「祝い箸」と呼ばれる両端が細い箸を使います。一方は人が、もう一方は年神様が使うとされ、神人共食(しんじんきょうしょく)の思想が表れています。箸の長さは末広がりの八寸(約24cm)が縁起がよく、箸袋には家族の名前を書き、松の内は洗って同じ箸を使い続ける風習があります。
お正月の和菓子として忘れてはならないのが「花びら餅(はなびらもち)」です。薄いピンクの求肥(ぎゅうひ)で白味噌餡(みそあん)とごぼうを包んだ上品な菓子で、宮中の正月行事「菱葩(ひしはなびら)」に由来します。もともとは宮中で年始に食べられていた餅菓子が茶の湯に取り入れられ、裏千家の初釜では必ず供される正月菓子の代表格となりました。和菓子店では12月末〜1月中旬の期間限定で販売されることが多いので、見つけたらぜひ味わってみてください。
TIP / お餅は小さなお子さんに要注意
お餅は3歳未満のお子さんには与えないのが安全です。3歳以上でも必ず小さく切り、大人が見守りながら食べさせましょう。お餅の代わりにお豆腐やはんぺんをお雑煮に入れると、小さなお子さんも安心してお正月の雰囲気を楽しめます。
パ
新米パパ / 2歳児のパパ
おせち料理を子どもが全然食べてくれません。大人向けの味付けだからでしょうか?

博
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
お子さん向けに「キッズおせち」を用意するご家庭が増えていますよ。ミートボール、ハンバーグ、エビフライなど洋風のおかずを重箱に詰めるだけで、お子さんも喜ぶおせちになります。伊達巻(だてまき)や栗きんとん(くりきんとん)は甘くて子どもにも人気なので、そこから少しずつ伝統のおせちにも挑戦してみてください。
CHAPTER 07お年玉のマナーと金額の相場
お年玉は子どもたちの最大のお楽しみですが、贈る側には金額の相場やマナーがあります。お年玉の由来から金額の目安まで押さえておきましょう。
| 贈る相手の年齢 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 未就学児(0〜6歳) | 500〜1,000円 | 硬貨でもOK。おもちゃやお菓子で代用する家庭も |
| 小学校低学年(7〜9歳) | 1,000〜3,000円 | 1,000円が最多。学年×1,000円という考え方も |
| 小学校高学年(10〜12歳) | 3,000〜5,000円 | 3,000円が主流 |
| 中学生 | 5,000円 | 5,000円が一般的 |
| 高校生 | 5,000〜10,000円 | 5,000円か10,000円が主流 |
| 大学生・社会人 | 10,000円 | 就職を機にお年玉卒業とする家庭が多い |
| 贈り先 | 平均金額 | 最多回答額 | 第2位回答額 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 5,253円 | 5,000円 | 10,000円 |
| 小学校低学年 | 2,663円 | 3,000円 | 1,000円 |
| 小学校高学年 | 4,470円 | 5,000円 | 3,000円 |
| 中学生 | 5,470円 | 5,000円 | 10,000円 |
| 高校生 | 7,597円 | 5,000円 | 10,000円 |
| 大学生 | 9,737円 | 10,000円 | 5,000円 |
| その他 | 8,571円 | 10,000円 | 5,000円 |
INFO
現金ではないお年玉として、図書券(図書カード)、文房具、おもちゃなども選ばれています。特に幼い子どもには金銭感覚がまだ育っていないため、おもちゃや絵本のほうが喜ばれることもあります。
INFO / お年玉のマナー
お年玉はポチ袋(お年玉袋)に入れて渡すのがマナーです。お札は三つ折りにして肖像画が内側になるように入れます。金額は「4」(死)を避け、硬貨の場合も表面(絵柄や植物が描かれた面)を上にして入れましょう。自分の子どもと同年齢の親戚の子がいる場合は、事前に金額を合わせておくとトラブルを防げます。
- 01ポチ袋を選ぶお子さんの年齢や好みに合ったデザインを選びます。キャラクターものは幼児〜小学校低学年に人気。中学生以上にはシンプルなデザインが無難です。
- 02お札を三つ折りにする肖像画が内側に来るように左→右の順で三つ折りにします。新札を使うのがマナーですが、お年玉の場合はきれいなお札であれば新札でなくても構いません。
- 03表書きを書く「お年玉」と書き、下に自分の名前を書きます。裏面に金額を書く方もいます。
- 04直接手渡しするお年玉は本人に直接渡すのが基本。相手が不在の場合は親に託しても構いません。「今年もよろしくね」「勉強がんばってね」と一声添えましょう。
CHAPTER 08七福神詣で新年の福を集める
お正月の風物詩として七福神詣(しちふくじんめぐり)があります。七福神とは、恵比寿・大黒天・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋尊の七柱の神様で、それぞれが異なるご利益を持っています。元日から7日までの間に七つの社寺を巡り、すべてのご利益をいただくのが七福神詣です。
| 神様 | ご利益 | 特徴 |
|---|---|---|
| 恵比寿 | 商売繁盛・豊漁 | 鯛と釣り竿を持つ唯一の日本出身の神 |
| 大黒天 | 五穀豊穣・財運 | 打ち出の小槌と大きな袋を持つ |
| 毘沙門天 | 武道成就・勝運 | 甲冑をまとい宝塔と槍を持つ |
| 弁財天 | 芸術・学問・財運 | 琵琶を持つ七福神唯一の女神 |
| 福禄寿 | 長寿・幸福 | 長い頭と白い髭が特徴 |
| 寿老人 | 健康・長命 | 鹿を従え、桃を持つ |
| 布袋尊 | 家庭円満・無病息災 | 大きな腹と布袋が目印 |
七福神信仰は室町時代に始まり、江戸時代に庶民の間で大流行しました。徳川家康が七福神を愛好したことも広まるきっかけになったとされます。現在でも東京の谷中七福神、鎌倉の江ノ島七福神、大阪の七福神めぐりなど、全国各地にコースが設定されており、御朱印(ごしゅいん)やスタンプを集めながら巡る楽しみがあります。
七福神めぐりは、正月の松の内に七つの寺社を巡拝して七柱の福の神すべてにお参りする風習で、江戸時代に庶民の正月行楽として爆発的に流行しました。東京の谷中七福神や日本橋七福神をはじめ、全国各地にコースが設定されており、すべて巡ると「七難即滅・七福即生」(七つの災いが消え、七つの福が生まれる)のご利益があるとされています。御朱印やスタンプを集める楽しみもあるため、家族連れのウォーキングイベントとしても人気があります。
パ
新米パパ
七福神って全部日本の神様じゃないんですか?
博
カゾイロ博士
実は日本出身は恵比寿だけなんです。大黒天・毘沙門天・弁財天はインド、福禄寿・寿老人は中国の道教、布袋尊は中国の実在した禅僧がモデルとされています。異なる文化の神様が集まっているのは、日本の信仰の懐の深さを表していますね。
CHAPTER 09お正月はなぜおめでたいのか|年神様と年取りの深い意味
お正月が「おめでたい」とされるのには、単なる新年の始まりという以上の深い民俗学的な理由があります。民俗学者の柳田國男は著作『年中行事覚書』(1955年)の中で、お正月の本質を「年神様を迎え、新しい生命力を授かる儀式」として論じています。現代の私たちが何気なく行っている正月の風習には、古来の日本人が大切にしてきた生命の更新と再生への祈りが込められているのです。
「年取り」の本当の意味|年の魂を受ける
現代では誕生日に一歳年を取りますが、かつての日本ではお正月に全員が一斉に年を取る「数え年」の風習がありました。この正月に年齢を加えることを「年取り(としとり)」と呼びます。しかし「年取り」とは単に年齢が増えることではなく、もともとは「年の魂(年魂=としだま)を受ける」という意味を持っていました。
年神様が各家庭を訪れる際に、家族一人ひとりに新しい年の生命力・魂(たま)を授けてくださる。その魂を受け取ることで人は新たな一年を生きる力を得る。これが「年取り」の本来の意味です。お正月が「おめでたい」のは、年神様から新しい生命力を授かる日だからなのです。
INFO / お年玉と年魂のつながり
お年玉の由来である「御年魂(おとしだま)」は、まさにこの年神様から授かる魂を意味しています。年神様にお供えした鏡餅を家長が家族に分け与えることで、年神様の魂を分かち合う。つまりお年玉とは、もともと年神様の生命力を家族で共有する神聖な儀式だったのです。
年神様の正体|歳神・歳徳神・祖霊との関わり
年神様は歳神(としがみ)、歳徳神(としとくじん)とも呼ばれ、地域によってさまざまな呼び名を持っています。年神様の性格には大きく分けて二つの側面があります。一つはその年の福や実りを司る穀物神としての側面、もう一つは祖霊(先祖の霊)としての側面です。
日本の古い信仰では、亡くなった先祖の霊はやがて浄化されて祖霊となり、子孫を見守る存在になると考えられていました。年神様はこの祖霊と結びつく存在であり、お正月に先祖の霊が家に帰ってくるという考え方は、お盆の風習とも通じるものです。つまり年神様は盆と正月の年二回、家に帰ってくる先祖の霊でもあったのです。
- 歳神(としがみ)
- 新年に各家庭を訪れ、一年の幸福と生命力を授ける神様の総称。穀物神としての性格も持ち、五穀豊穣をもたらすとされる。
- 歳徳神(としとくじん)
- その年の福徳を司る神様。歳徳神のいる方角が「恵方」であり、毎年方角が変わる。
- 祖霊(それい)
- 亡くなった先祖の霊が浄化されて神格化した存在。年神様と祖霊は深く結びついており、正月は先祖の霊を迎える行事でもあった。
- 依り代(よりしろ)
- 神様が降り立つ際の目印となるもの。門松は年神様の依り代であり、年神様が迷わず家を訪れるための目印として飾られる。
パ
新米パパ / 2歳児のパパ
年神様って先祖の霊でもあるんですか?お盆みたいですね。
博
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
そうなんです。お盆とお正月は、どちらも先祖の霊を家にお迎えする行事という共通の根を持っています。門松は年神様が降り立つための依り代(よりしろ)、鏡餅は年神様へのお供え物であると同時に年神様が宿る場所でもあります。正月飾りの一つひとつが、年神様をお迎えするための大切な準備なのです。
CHAPTER 10予祝と除災招福|正月行事に込められた祈り
お正月の行事を深く理解するうえで欠かせないのが、「予祝(よしゅく)」と「除災招福(じょさいしょうふく)」という二つの考え方です。正月飾りやおせち料理、正月遊びの多くには、この予祝と除災招福の思想が色濃く反映されています。
予祝(よしゅく)|あらかじめ祝う力
予祝とは、良い結果が出る前にあらかじめ祝うことで、その実現を願うという日本古来の信仰です。秋の豊作を願って春に花見をするのも予祝の一つとされています。お正月の行事の多くはこの予祝の性格を持っており、新しい年が良い年になるよう、先に「おめでたい」と祝うことで幸福を引き寄せると考えられてきました。
たとえば、おせち料理に黒豆(まめに暮らす)や数の子(子孫繁栄)、栗きんとん(金運上昇)など縁起の良い意味を込めるのも予祝の表れです。「こうなってほしい」という願いを食べ物の形にして先に祝う。これが日本のお正月の根底に流れる精神なのです。
除災招福|災いを除き福を招く
除災招福とは、文字どおり災いを除き、福を招くという考え方です。正月飾りの注連縄は邪気を家の中に入れないための結界であり、門松は福を運ぶ年神様の目印です。羽根つきの「邪気を払う」意味や、お屠蘇の「邪気を屠り魂を蘇らせる」効能も、すべてこの除災招福の思想に基づいています。
予祝が「良いことを先に祝って引き寄せる」攻めの祈りであるなら、除災招福は「悪いものを遠ざけて福を呼び込む」守りの祈りです。お正月の風習はこの攻めと守りの両面から、家族の一年間の幸せを願う仕組みになっているのです。
予祝
あらかじめ祝うことで実現を願う信仰
除災招福
災いを除き福を招く正月飾り・おせちの思想
年取り
年神様から新しい生命力(年魂)を授かること
CHAPTER 11歳徳神と恵方|その年の福を司る神様
年神様の呼び名の一つである歳徳神(としとくじん)は、その年の福徳を司る神様として特別な存在です。歳徳神には独自の信仰があり、特に恵方(えほう)と深い関わりを持っています。
恵方とは、歳徳神がいるとされる方角のことで、毎年変わります。恵方は十干(じっかん)に基づいて決まり、東北東・西南西・南南東・北北西の四方向のいずれかです。現在では節分の恵方巻(えほうまき)きで知られる恵方ですが、もともとはお正月の風習として広く行われていたものでした。
恵方参り|江戸時代の正月の風習
江戸時代には、お正月に恵方の方角にある神社仏閣に参拝する「恵方参り(えほうまいり)」が一般的に行われていました。初詣の原型ともいえるこの風習は、歳徳神のいる方角に向かって参拝することで、一年間の福を最大限にいただくという考え方に基づいています。
現在の初詣は特定の有名神社に出かけることが多いですが、江戸時代の人々はその年の恵方にあたる方角の寺社を選んで参拝していました。鉄道の発達とともに遠方の有名社寺へ参拝する習慣が広まり、恵方参りの風習は次第に薄れていきましたが、恵方の考え方自体は節分の恵方巻きとして現代にも受け継がれています。
TIP / 恵方参りを復活させてみよう
お正月に自宅から見て恵方の方角にある神社を調べて参拝するのも、一味違った初詣の楽しみ方です。恵方は「東北東・西南西・南南東・北北西」の4つしかないので、スマートフォンのコンパスアプリで簡単に確認できます。お子さんと一緒に方角を調べて「今年の福の神様はこっちの方角にいるんだよ」と伝えれば、初詣がより特別な体験になります。
年取り膳と大晦日(おおみそか)の儀式
大晦日の夜に家族で食べる特別な食事を「年取り膳(としとりぜん)」と呼びます。年取り膳は、新しい年を迎えるにあたって年神様と共に食事をする儀式であり、各地に独自の形で残っている伝統です。
年取り膳の内容は地域によって異なりますが、尾頭つきの魚(鯛(たい)や鮭)、煮物、なます、お餅など、正月のごちそうに準じた料理が並びます。長野県や新潟県などでは今も大晦日の夜に年取り膳を囲む風習が残っており、年越しそばとは別に、格式のある食事を家族全員で食べて新年を迎えます。
この風習の背景には、かつて日没が一日の境目とされていた時代の名残があります。旧暦では大晦日の日没とともに新年が始まると考えられていたため、大晦日の夕食はすでに新年最初の食事でもありました。年取り膳を囲むことは、年神様を迎える準備が整ったことを示す神聖な食事の儀式だったのです。
パ
新米パパ / 2歳児のパパ
年越しそばだけじゃなくて、もっと特別な食事をする風習もあったんですね。知りませんでした。
博
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
年取り膳は今でも長野県や東北地方などで大切に守られている風習です。大晦日の夜にいつもより少し豪華な食卓を用意して、「今日から新しい年が始まるね」と家族で乾杯するだけでも、年取りの儀式の精神を取り入れることができますよ。
お正月が「おめでたい」のは、年神様から新しい年の生命力を授かる日だからである。門松は年神様の依り代、鏡餅は年神様が宿る場所。正月の風習はすべて、年神様をお迎えし、新しい魂をいただくための準備にほかならない。
お正月の行事・風習ガイド
お正月にまつわる行事や風習の詳細は、それぞれの記事で解説しています。
CHAPTER 12万葉の正月 ─ 古の歌に詠まれた新年の祈り
1300年前の奈良時代から、人々は歌に新年の喜びと願いを込めてきました。万葉集には正月を祝う歌が数多く収められています。
新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事
万葉集の最後を飾る一首。天平宝字3年(759年)の正月、因幡国庁での新年祝宴で詠まれました。「降り積もる雪のように、良いことがいっそう重なりますように」という祈りは、現代の年賀状にも通じる普遍的な新年の願いです。
正月立ち春の来らばかくしこそ梅を招きつつ楽しきを経め
天平2年(730年)正月、大宰府での梅花宴で詠まれた三十二首のひとつ。この宴の序文が「令和」の元号の出典となりました。新春に梅を愛で、楽しい時を過ごそうという歌意は、お正月の過ごし方そのものです。
CHAPTER 13お正月に関するよくある質問
A.
松の内(関東は1月7日、関西は1月15日)まで飾るのが一般的です。松の内が過ぎたら外し、1月15日の小正月に行われる「どんど焼き」でお焚き上げしてもらいましょう。ゴミとして処分する場合は、塩で清めてから紙に包んで出します。
A.
喪中の場合は、正月飾り・おせち料理・年賀状を控えるのが一般的です。初詣は忌明け(50日後)であれば問題ないとされています。「おめでとう」の挨拶は避け、「今年もよろしくお願いします」と伝えましょう。
A.
一般的には高校卒業まで、または大学生の場合は就職するまで渡す家庭が多いです。社会人になったらお年玉は卒業し、逆に年下の親戚に渡す側になります。家庭ごとのルールがあるので、親戚間で確認しておくとよいでしょう。
A.
昔は「年神様が休んでいるから台所仕事を控える」という考え方があり、元旦に包丁を使うのは縁起が悪いとされていました。そのため保存のきくおせち料理を年末に作っておく文化が生まれました。現代では気にしない方がほとんどですが、三が日くらいはおせちを中心に過ごすのも風情があります。
A.
元旦〜松の内は「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」が定番です。目上の方には「新年のお慶びを申し上げます」とより丁寧に伝えましょう。松の内を過ぎたら「おめでとうございます」は使わず、「今年もよろしくお願いします」のみにするのがマナーです。
A.
12月29日と12月31日は避けるのがマナーです。29日は「二重苦(にじゅうく)」に通じるため縁起が悪いとされ、31日は「一夜飾り」と呼ばれ、年神様に失礼にあたるとされています。12月28日は「八」が末広がりで縁起がよい日とされており、お正月飾りを出すのに最適です。遅くとも12月30日までに飾りつけを済ませましょう。
CHAPTER 14まとめ
お正月は、家族が揃って新年の幸せを願い、日本の伝統文化に触れる大切な時間です。初詣やおせち料理、お年玉、正月遊びなど、お正月ならではの過ごし方を取り入れて、家族の思い出を増やしていきましょう。お子さんの年齢に合わせた楽しみ方を工夫すれば、小さなお子さんがいるご家庭でもお正月を存分に満喫できます。年神様をお迎えする正月飾り、家族の健康を願うおせち料理、子どもの成長を見守るお年玉。それぞれの風習には先人たちの知恵と祈りが詰まっています。お正月が「おめでたい」のは、年神様から新しい生命力(年魂)を授かる日だから。予祝で幸福を引き寄せ、除災招福で災いを遠ざける。その二つの祈りが正月のすべての風習に息づいています。伝統を大切にしながらも、家族のスタイルに合わせてアレンジすることで、毎年のお正月がより特別な時間になるはずです。

