夏祭りの会場で、櫓(やぐら)を囲んで大勢が輪になって踊る——その光景を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。盆踊りは、お盆に帰ってくるご先祖様の霊を迎え、慰め、再びあの世へ送り出すために踊られてきた日本の伝統行事です。この記事では、盆踊りの由来や歴史、全国の有名な盆踊り、そして家族で楽しむための基本の踊り方まで、やさしく解説します。

CHAPTER 01
盆踊りとは?お盆に踊る理由

盆踊りとは、お盆の時期に、ご先祖様の霊を供養するために踊られる踊りのことです。もともとは亡くなった人の魂を慰め、無事にあの世へ帰ってもらうための宗教的な意味を持つ行事でした。現在では地域の夏祭りやイベントとして親しまれ、世代を超えて人々が交流する場にもなっています。
多くの盆踊りは、会場の中央に組んだ櫓(やぐら)を囲み、その周りを輪になって踊る形が基本です。音頭(おんど)と呼ばれる歌や太鼓に合わせ、同じ振り付けをみんなで繰り返します。踊りの輪は誰でも自由に加わることができ、見よう見まねでも楽しめるのが盆踊りの大きな魅力です。
櫓(やぐら)
会場の中央に組む高い台。太鼓を打つ人や音頭を取る人が乗り、踊りの輪の中心となる
音頭(おんど)
盆踊りで歌われる歌や、その節回しのこと。「東京音頭」「炭坑節」などが全国的に知られる
輪踊り
櫓を中心に円を描いて踊る形式。もっとも一般的な盆踊りのスタイル
流し踊り
列をつくって道を進みながら踊る形式。徳島の阿波おどりなどが代表的

CHAPTER 02
盆踊りの由来と歴史

盆踊りの起源は、平安時代に空也(くうや)上人が広めたとされる「踊念仏(おどりねんぶつ)」にさかのぼると言われています。念仏を唱えながら踊ることで功徳を積むという信仰が、鎌倉時代に一遍(いっぺん)上人によって全国へと広まりました。
これがお盆の先祖供養の風習と結びつき、室町時代ごろには、亡くなった人の霊を慰める「盆踊り」として定着していきました。江戸時代になると宗教的な意味合いはしだいに薄れ、村の若い男女が出会う娯楽や、地域の結束を深める行事としての性格を強めていきます。
新米パパ
盆踊りって、ただのお祭りの踊りだと思っていました。もともとはご先祖様の供養だったんですね。
カゾイロ博士
そうなんです。お盆に帰ってきたご先祖様の霊を、みんなで踊って迎え、楽しませて送り出す——それが盆踊りのいちばん古い意味です。今でも踊りの輪には、目に見えないご先祖様も一緒に加わっていると考える地域がありますよ。
i
INFO / 盆踊りと宗教
盆踊りのルーツである踊念仏は、仏教の念仏信仰と民間の踊りが結びついたものです。現在の盆踊りは特定の宗教行事というより、地域の文化・娯楽として受け継がれていますが、その根底にはご先祖様を敬う気持ちが流れています。

CHAPTER 03
全国の有名な盆踊り

盆踊りは全国各地にあり、地域ごとに独特の音頭や振り付けが伝わっています。なかでも「日本三大盆踊り」と呼ばれるものは、規模や歴史の点で特に有名です。
代表的な盆踊り
名称開催地特徴
郡上おどり岐阜県郡上市約400年の歴史を持つ。お盆の数日間は夜通し踊る「徹夜おどり」で知られる
阿波おどり徳島県徳島市「踊る阿呆に見る阿呆」の掛け声で有名。列をつくって進む流し踊り
西馬音内の盆踊り秋田県羽後町端縫い衣装と編笠が幻想的。国の重要無形民俗文化財
東京音頭東京都内各所昭和に生まれた音頭で、全国の盆踊りで親しまれる定番曲
このほか、北海道の「北海盆唄」、福岡の「炭坑節」、沖縄の「エイサー」など、土地ごとに個性豊かな盆踊りが受け継がれています。京都では、お盆の最終日に行われる五山送り火とともに、各地で六斎念仏(ろくさいねんぶつ)の踊りが奉納(ほうのう)されます。

CHAPTER 04
盆踊りの基本の踊り方と楽しみ方

盆踊りは、特別な練習をしていなくても気軽に参加できます。基本は前の人の動きをまねること。同じ振り付けを何度も繰り返すので、数周まわるうちに自然と体が覚えていきます。
  1. 01
    会場に着いたら輪を観察する
    まずは踊りの輪を少し離れて眺め、手や足の動き、回るタイミングを目で追ってみましょう。曲ごとに振り付けが決まっています。
  2. 02
    輪のうしろに入る
    タイミングを見て、踊りの輪のうしろからそっと加わります。盆踊りの輪は出入り自由なので、気負わなくて大丈夫です。
  3. 03
    前の人をまねて踊る
    前後の人の動きに合わせて、手拍子や足の運びをまねていきます。最初はゆっくりで構いません。
  4. 04
    間違えても気にしない
    盆踊りは上手・下手を競うものではありません。輪の流れに乗って、笑顔で踊ること自体が供養であり、楽しみ方です。
TIP / 持ち物と服装
浴衣で参加すると気分が高まりますが、動きやすい普段着でも問題ありません。会場は屋外で蒸し暑いことが多いので、うちわや扇子、タオル、飲み物を用意しておくと快適です。足元は鼻緒ずれしにくい履き慣れた下駄やサンダルがおすすめです。

CHAPTER 05
子どもや家族で楽しむ盆踊り

盆踊りは、小さな子どもからお年寄りまで一緒に楽しめる数少ない行事のひとつです。子どもにとっては、地域の人とふれあい、日本の夏の文化を肌で感じる貴重な機会になります。
新米パパ
子どもがまだ小さいんですが、盆踊りデビューはいつごろがいいでしょう?
カゾイロ博士
歩けるようになれば、抱っこやベビーカーでも十分に雰囲気を楽しめますよ。太鼓の音や提灯の灯りは、子どもにとって忘れられない夏の思い出になります。人混みで迷子にならないよう、はぐれたときの集合場所を決めておくと安心です。
盆踊りがなぜお盆に行われるのかを子ども向けにやさしく伝えたいときは、お盆を子どもにわかりやすく説明する記事もあわせて読むと、由来を話してあげる際のヒントになります。

CHAPTER 06
盆踊りに関するよくある質問

A.
多くは8月13日から16日のお盆の期間や、その前後の週末に開催されます。地域によっては7月のお盆(新暦盆)に合わせて行うところもあります。お住まいの自治体や町内会の案内で日程を確認しましょう。
A.
はい、盆踊りの輪は出入り自由が基本です。曲の途中でも、踊りの輪のうしろからそっと加われば問題ありません。疲れたら抜けて休んでも構いません。
A.
問題ありません。前の人の動きをまねているうちに自然と覚えられます。同じ振り付けの繰り返しなので、数周もすればコツがつかめます。
A.
阿波おどりは徳島県発祥の盆踊りの一種です。櫓を囲む輪踊りではなく、列をつくって進む「流し踊り」が特徴で、独自の発展を遂げた盆踊りといえます。
A.
屋外開催の盆踊りは、雨天時に中止や順延となることがあります。一方、体育館などの屋内で行う地域もあります。天候があやしいときは主催者の案内を確認してください。

CHAPTER 07
まとめ

盆踊りは、お盆に帰ってくるご先祖様の霊を迎え、慰め、送り出すために踊られてきた日本の伝統行事です。平安時代の踊念仏を起源とし、先祖供養の風習と結びついて全国へ広まりました。今では地域の夏祭りとして親しまれ、世代を超えた交流の場となっています。踊り方を知らなくても、前の人をまねて輪に加われば誰でも楽しめます。この夏は家族で近くの盆踊りに出かけ、日本の夏ならではの風情を味わってみてはいかがでしょうか。