贈り物にはさまざまなタブーがあり、知らずに贈ると相手に失礼になることがあります。忌み数(4・9)やNGアイテム(刃物・ハンカチ・櫛など)を知らないまま贈ってしまうと、せっかくの気持ちが台無しになりかねません。この記事では、贈答にまつわる忌み数やNGアイテム、相手別の注意点など、贈り物の基本マナーをわかりやすく解説します。

CHAPTER 01
贈り物のタブーとは?知っておきたい基本ルール

贈り物は相手への感謝や祝福の気持ちを形にして届けるものです。品物の選び方ひとつで相手を喜ばせることもできれば、逆に不快な思いをさせてしまうこともあります。特に日本の贈答文化には、品物の種類・数・贈り方など、注意すべきポイントが数多くあります。
贈り物のタブーの多くは、日本古来の言霊(ことだま)信仰に根ざしています。言霊信仰とは「言葉には霊的な力が宿る」という考え方で、縁起の悪い言葉や音を連想させるものは贈り物としてふさわしくないとされてきました。たとえば「4」は「死」に通じるため避ける、というのは言霊の考え方に基づくものです。
現代では「気にしない」という方も増えていますが、特に目上の方やご年配の方への贈り物では、これらのタブーを押さえておくことが大切です。基本的なマナーを知っておけば、贈り物選びに迷うことも少なくなるでしょう。
日本の贈答文化の根底には、室町時代に武家の礼法として確立した「折形(おりがた)」の伝統があります。折形とは、贈り物を和紙で包む際の折り方や作法を定めたもので、包み方そのものに敬意や祝意を表す意味がありました。伊勢貞丈(いせさだたけ)が江戸時代にまとめた『包結記(ほうけつき)』には、目的に応じた数十種類の折形が記録されており、たとえば慶事には右前、弔事には左前というように、包む向きひとつにも明確なルールが定められています。現在ののし紙やご祝儀袋のデザインは、この折形の様式を簡略化したものです。
贈り物に欠かせない水引(みずひき)の結び方にも、それぞれ深い意味が込められています。何度でも結び直せる蝶結び(花結び)」は、出産や入学など繰り返してもよい慶事に使います。一方、一度結ぶとほどけない結び切りは、結婚や弔事など一度きりであるべき場面に用いられます。さらに結び切りの変形である「あわじ結び(あわび結び)」は、両端を引くとさらに固く結ばれることから「末永く続く」という意味を持ち、慶弔どちらにも使える万能な結び方です。水引の本数にもルールがあり、慶事には5本・7本など奇数が基本で、結婚祝いでは「両家が合わさる」意味で5本を2束にした10本が正式とされています。

CHAPTER 02
忌み数(いみかず)── 避けるべき数字とその理由

贈り物の個数や金額を決めるとき、まず気をつけたいのが忌み数(いみかず)です。忌み数とは、語呂合わせなどにより縁起が悪いとされる数字のことで、贈答の場面では避けるのがマナーとされています。
代表的な忌み数は「4」と「9」です。「4」は「死」、「9」は「苦」に通じるため、贈り物の個数や金額に使うのは避けましょう。また、慶事(お祝い事)では偶数も好まれない傾向があります。偶数は「割り切れる=縁が切れる」として、特に結婚祝いでは避けるのが一般的です。
ただし、偶数であっても例外はあります。「2」はペア(夫婦・対になるもの)を連想させるため結婚祝いの品として喜ばれることがあり、「8」は末広がりの形が縁起よいとされています。数字のマナーは絶対的なルールではなく、場面や相手との関係性によって柔軟に判断することが大切です。
贈り物で注意すべき数字の一覧
数字意味・由来避けるべき場面許容される場合
4「死」に通じる贈答全般(個数・金額)基本的に避ける
9「苦」に通じる贈答全般(個数・金額)「苦を乗り越える」として吉とする地域もあり
偶数全般「割り切れる=縁が切れる」結婚祝い・慶事の金額「2」はペア、「8」は末広がりとしてOK
6特に忌み数ではないが偶数結婚祝いの金額一般的な贈り物ではあまり気にしない
13西洋の忌み数(キリスト教圏)外国の方への贈り物日本国内では気にしないことが多い
TIP / 結婚祝いの品は「ペア」が喜ばれる
結婚祝いでは偶数を避けるのが基本ですが、ペアのグラスやペアの箸など「2つで1組」の品物は例外です。夫婦の象徴として喜ばれるため、「2」はむしろ好ましい数字とされています。

CHAPTER 03
贈ってはいけないNGアイテム一覧

贈り物には、品物そのものがタブーとされるものがあります。語呂合わせや連想によって縁起が悪いと考えられているアイテムを一覧で確認しておきましょう。
贈り物でタブーとされるNGアイテム
アイテムNGとされる理由例外・補足
刃物(包丁・はさみ)「縁を切る」を連想させる最近は「未来を切り開く」として贈る人も。料理好きの方にはリクエストがあればOK
ハンカチ漢字で「手巾(てぎれ)」と書き「手切れ」に通じる実用品として気にしない方も多いが、年配の方には避けた方が無難
櫛(くし)「く=苦」「し=死」の語呂合わせ高級な櫛をリクエストで贈る場合は問題ないことも
白いハンカチ故人の顔にかける白布を連想させ弔事を思わせる柄入りや色付きのハンカチなら問題ない
日本茶弔事の引き出物の定番として定着している慶事には避けるのが無難。紅茶やコーヒーなら問題なし
靴・靴下・スリッパ「踏みつける」という意味があり目上の方には失礼親しい間柄や本人のリクエストがあれば問題ない
時計・鞄「勤勉」を促す意味があり目上の方には失礼にあたる同僚や友人への贈り物としては問題ない
現金(目上の方へ)「生活の足しに」と受け取られる可能性がある結婚祝いや香典など、慣習として現金を贈る場面は別
陶器・ガラス製品「割れる」を連想させ、特に結婚祝いでは縁起が悪いとされる新郎新婦のリクエストがあればOK。ペアグラスなど「2つで1組」の品は例外として喜ばれる
新米パパ / 2歳児のパパ
義理の母が料理好きなので、結婚記念日に包丁を贈ろうと思っていたんですが、やめたほうがいいですか?
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
最近は「未来を切り開く」というポジティブな解釈で、刃物を贈る方も増えています。ただし年配の方は気にされる場合もあるので、事前に「包丁をお贈りしてもよいですか」とひと言確認するのが安心ですよ。
なお、祝儀袋・不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)の使い方の記事でも紹介しているとおり、贈答のマナーは品物だけでなく、包み方や表書きにも細かなルールがあります。品物選びとあわせて確認しておくとよいでしょう。

CHAPTER 04
贈る相手別に気をつけるマナー

贈り物のタブーは、贈る相手や場面によって異なる点にも注意が必要です。ここでは、特に気をつけたい場面ごとのマナーを確認しましょう。

目上の人への贈り物

上司や恩師など目上の方への贈り物では、「上から目線」と受け取られかねない品物を避けることが大切です。具体的には、現金・商品券(「生活の足しに」と受け取られる)、靴・靴下(「踏みつける」の意味)、時計・鞄(「もっと勤勉に」の意味)は避けましょう。食品や花など、消えもの(消耗品)の贈り物が無難です。
目上の方へのお祝い金の相場については、ご祝儀(しゅうぎ)の金額相場一覧も参考にしてください。

お見舞いの贈り物

病気やケガで入院中の方へのお見舞いの品物には、特有のタブーがあります。鉢植えは「根付く=寝つく(寝たきりになる)」を連想させるため避けましょう。また、シクラメンは「死」「苦」の音を含み、椿(つばき)は花がぽとりと落ちる様子が「首が落ちる」を連想させるとして、お見舞いにはふさわしくないとされています。
赤い花も血を連想させるため避けるのが一般的です。お見舞いの花を選ぶときは、明るい色合いで香りの強すぎないものを選ぶとよいでしょう。なお、病院によっては衛生面から生花の持ち込みを禁止しているところもあるため、事前に確認してから贈ることをおすすめします。

新築祝いの贈り物

新築祝いでは、火を連想させるものがタブーとされています。ライター・灰皿・キャンドル、さらには赤いもの全般(赤い花、赤い食器など)も「火事」を連想させるとして避けるのがマナーです。新築祝いには、インテリア小物やタオルセットなど、新生活に役立つ実用品が喜ばれます。新築祝いのマナーについて詳しくは、新築祝い・引越し祝いの記事もあわせてご覧ください。

CHAPTER 05
贈り物の数と金額のマナー

贈り物の個数や包む金額にも、知っておくべきルールがあります。慶事では奇数が基本とされています。奇数は「割り切れない=縁が切れない」という意味を持ち、3・5・7が特に好まれる数字です。一方、弔事の香典(こうでん)でも偶数を避ける傾向がありますが、これも「故人との縁が切れる」ことを連想させるためです。
金額に関しては、4万円・9万円は忌み数のため避けるのが鉄則です。同様に4千円・9千円も避けましょう。結婚祝いでは「割り切れる」偶数の金額(2万円・6万円など)を避けるのが伝統的なマナーですが、近年は2万円を「ペア」と解釈して問題ないとする考え方も広まっています。
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CAUTION / 「4」と「9」は贈答全般で避ける
「4」と「9」は金額でも個数でも、贈答のあらゆる場面で避けるのが基本です。お菓子の詰め合わせを贈るときは4個入り・9個入りを避け、3個入り・5個入り・8個入りなどを選びましょう。
お歳暮お中元を贈る際にも、金額の目安やのし紙のマナーと合わせて、忌み数を意識しておくと安心です。

CHAPTER 06
贈り物を受け取るときのマナー

贈り物のマナーは、贈る側だけでなく受け取る側にもあります。知っておくと、いざというとき恥ずかしい思いをせずに済むでしょう。
まず、日本では贈り物を受け取ったとき、その場で開封しないのが一般的なマナーです。西洋では相手の前で開けて喜びを示すのが礼儀ですが、日本では贈り主が謙遜して「つまらないものですが」と差し出す文化があるため、目の前で開けるのは気まずくなることがあります。ただし、相手から「ぜひその場で開けてください」と言われた場合は開封しても問題ありません。
もうひとつ大切なのがお返し(内祝いの習慣です。お祝いをいただいたら、一般的にいただいた金額の半額から3分の1程度の品物をお返しするのがマナーとされています。これを「半返し」と呼びます。お返しの時期は、お祝いをいただいてから1か月以内が目安です。
新米パパ / 2歳児のパパ
出産祝いをたくさんいただいたのですが、全員に半返しをするとかなりの出費になりそうです……。
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
高額なお祝いをいただいた場合は、無理に半返しにこだわらず3分の1程度でも問題ありません。大切なのは金額よりも、感謝の気持ちを込めたお礼状を添えることです。最近は赤ちゃんの名前を入れたお菓子やタオルなど、出産内祝いらしい品物が喜ばれますよ。

CHAPTER 07
贈答タイミング早見表

贈り物は贈る時期を間違えるとマナー違反になることがあります。以下の早見表で、主なお祝い事の贈答タイミングと水引(みずひき)の種類を確認しておきましょう。
お祝いの種類贈る時期の目安水引
結婚祝い挙式の1〜2ヶ月前(遅くとも1週間前まで)紅白結び切り(10本)
出産祝い生後7日〜1ヶ月(お七夜お宮参りの頃)紅白蝶結び
初節句祝い半月前まで紅白蝶結び
入学祝い決定後〜入学の2〜3週間前紅白蝶結び
成人祝い成人の日の前後紅白蝶結び
新築祝い新築後半月〜1ヶ月以内紅白蝶結び
開業・開店祝い開業当日まで紅白蝶結び
快気祝い(お返し)回復後なるべく早く紅白結び切り
香典返し忌明け四十九日法要後)黒白・双銀結び切り
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INFO
結び切りは「二度と繰り返さない」という意味があるため、結婚祝い・快気祝い・弔事に使います。一方、蝶結びは「何度あっても嬉しい」お祝い事に使います。水引の選び間違いは重大なマナー違反になるので注意しましょう。

CHAPTER 08
贈り物のタブーに関するよくある質問

A.
伝統的には「縁を切る」を連想させるためタブーとされてきましたが、最近は「未来を切り開く」というポジティブな意味で贈る方も増えています。相手が気にしない方であれば問題ありませんが、年配の方やフォーマルな場面では避けたほうが無難です。事前に相手の意向を確認できると安心です。
A.
「4」は「死」に通じる忌み数のため、贈答用としては避けるのが基本です。お菓子を贈るなら3個入り・5個入り・8個入りなど、忌み数を避けた個数を選びましょう。ただし、普段のちょっとした手土産であれば、そこまで厳密に気にしなくても問題ないでしょう。
A.
国や文化によってタブーが異なります。たとえば中国では「時計を贈る」ことが「送終(葬式を出す)」に通じるため避けられます。イスラム圏ではお酒や豚革製品はNGです。西洋では13が忌み数とされます。相手の文化背景を事前に調べておくことが大切です。
A.
もし気づいた場合は、相手にひと言お詫びを伝えるのがよいでしょう。ただし、最近はこうしたタブーを気にしない方も多いため、あまり深刻に考えすぎる必要はありません。大切なのは贈る気持ちであり、相手もその気持ちを汲み取ってくれることがほとんどです。
A.
お見舞いでは鉢植え(根付く=寝つく)、シクラメン(死・苦)、椿(花首が落ちる)、赤い花(血を連想)を避けます。お祝い全般では菊(弔事の花というイメージ)を避ける方もいます。ただし、洋菊やアレンジメントに入る小菊などは華やかで問題ないとされることも多いです。

CHAPTER 09
まとめ

贈り物のタブーやマナーは、相手への敬意と思いやりの表れです。忌み数の「4」「9」を避けること、刃物やハンカチなどNGアイテムを把握しておくこと、贈る相手や場面に応じた配慮をすることが基本です。
とはいえ、時代とともにマナーの捉え方は変化しています。大切なのは形式にとらわれすぎることではなく、相手のことを思って品物を選ぶ姿勢そのものです。基本的なルールを押さえたうえで、相手が本当に喜ぶものを心を込めて贈りましょう。六曜を参考にして贈る日柄を選ぶのも、贈り物のマナーとして覚えておくとよいでしょう。