雨水(うすい)は、二十四節気(にじゅうしせっき)の第2番目にあたる早春の節気で、2026年は2月19日頃に訪れます。「空から降るものが雪から雨に変わり、氷が溶けて水になる」という意味を持ち、厳しかった冬の寒さが少しずつ緩み始める時期です。農耕の準備が始まる目安として古くから大切にされてきた節気であり、春の足音を最初に感じる季節の変わり目です。
水面に広がる雨の波紋
雨水 ─ 雪が雨に変わり、氷が解けて水になる頃

CHAPTER 01
意味と二十四節気の位置づけ

二十四節気は太陽の黄経をもとに一年を24等分した暦で、この節気は黄経330度の地点にあたります。立春(りっしゅん)の次、啓蟄の前に位置し、暦の上ではすでに春ですが、実際にはまだ寒い日が続きます。この時期はまだ大雪が降ることもあり、本格的な春はまだ先です。
七十二候では「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」「草木萌動(そうもくめばえいずる)」の三候に分けられ、雪解け水が大地を潤し、霞がたなびき、草木が芽吹き始める早春の情景が暦に記されています。
雨水という名前には、厳しい冬がようやく峠を越え、自然の循環が再び動き始めるという深い意味が込められています。雪が雨に変わるということは、気温が氷点を上回る時間が長くなり始めた証拠です。山に積もった雪が少しずつ溶けて川となり、やがて田畑を潤す水となる。この水の循環こそが、農耕民族である日本人にとって一年の始まりを実感させるものでした。二十四節気の中でも雨水は「水」にまつわる節気であり、同じく水に関係する穀雨(4月20日頃)と対をなす存在です。穀雨が「穀物を育てる雨」であるのに対し、雨水は「雪が雨に変わる」という変化そのものを表しており、春という季節が「始まろうとしている」瞬間を切り取った節気と言えます。
2月19日頃
雨水の時期
雪が雨に変わる
名前の由来
春の兆し
農作業準備の目安

CHAPTER 02
三寒四温と春一番

雨水の頃の気候を表す言葉に「三寒四温」があります。寒い日が3日続くと暖かい日が4日続くという意味で、もともとは中国の華北地方の冬の気候を表す言葉でしたが、日本の早春の気候にもよく当てはまることから広く使われるようになりました。三寒四温を繰り返しながら、季節は少しずつ春へと向かっていきます。
また、この時期は「春一番」が吹く季節でもあります。春一番とは、立春から春分(しゅんぶん)の間に吹く最初の強い南風のことです。1859年に長崎県壱岐で漁師53人が遭難した強い南風を「春一」と呼んだことが語源とされています。春一番が吹いた後は寒さが戻ることも多く、その後の南風は「春二番」「春三番」と呼ばれます。暖かい風が吹いたからといって油断せず、防寒対策を怠らないことが大切です。
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CAUTION / 春一番の後は寒の戻りに注意
春一番が吹くと一気に暖かくなりますが、翌日以降は冬型の気圧配置に戻り、気温が急降下することがあります。この時期はまだ大雪が降ることもあるため、本格的な春はまだ先と心得て、防寒着はすぐに片付けないようにしましょう。
三寒四温という言葉は、もともと中国の華北地方や朝鮮半島における冬の気候パターンを表す言葉です。大陸ではシベリア高気圧の勢力が周期的に強まったり弱まったりすることで、寒い日が3日ほど続いた後に暖かい日が4日ほど続くという規則的な寒暖の繰り返しが冬の間中みられます。つまり本来は真冬の現象を指す言葉であり、「三寒四温で暖かくなっていく」という使い方は厳密には誤用に近いのです。
しかし日本では、大陸ほど明確な周期的寒暖が現れるのは真冬よりもむしろ2月から3月にかけての早春です。低気圧と高気圧が交互に日本列島を通過するこの時期、数日単位で寒い日と暖かい日が入れ替わる体感が三寒四温の言葉にぴったり重なります。そのため日本では雨水の頃の気候を象徴する言葉として定着しました。本来の意味を知っておくと、季節の言葉への理解がいっそう深まります。
春一番は立春(2月4日頃)から春分(3月20日頃)の間に吹く、その年最初の強い南風で、風速8m/s以上が目安とされています。温帯低気圧が日本海を発達しながら通過する際に、南から暖かく湿った空気が一気に流れ込むことで発生します。春一番が吹いた翌日は寒さが戻ることが多く、気温が10度以上下がることも珍しくありません。その後に吹く南風は「春二番」「春三番」と呼ばれ、こうした南風の到来を繰り返しながら本格的な春へと季節が進んでいきます。

CHAPTER 03
雨水の頃の自然と暮らし

雨の波紋雨水を迎える頃になると、自然界にもはっきりとした変化が現れます。空から降るものが雪から雨に変わり、凍っていた池や川の氷が少しずつ溶け始めます。朝晩はまだ冷え込むものの、日中の日差しには確かな温もりが感じられるようになり、冬の間はどんよりと低く垂れ込めていた雲が少しずつ高くなっていきます。空の色が冬のグレーから淡い水色に変わり始めるのもこの時期の特徴です。
植物の世界では、梅の花がほころび始めるのがこの時期です。梅は「百花の魁(さきがけ)」とも呼ばれ、まだ寒さの厳しい中で他の花に先駆けて咲き始めます。白梅、紅梅、枝垂れ梅と品種によって開花時期が少しずつ異なり、2月中旬から3月上旬にかけて順に見頃を迎えます。梅の花の甘い香りは、春がそこまで来ていることを五感で教えてくれます。
鳥の世界にも変化が訪れます。ウグイスの初鳴きが聞かれるのもこの頃です。「ホーホケキョ」という美しいさえずりは春の訪れを告げる代表的な音として古くから親しまれてきました。ただしウグイスの初鳴きには地域差が大きく、九州や四国の暖かい地域では2月上旬に聞かれることもあれば、東北では3月下旬になることもあります。また、冬の間は「チャッチャッ」という地鳴きだった鳥たちのさえずりが、繁殖期を迎えて美しい歌声に変わっていくのもこの季節の楽しみです。
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INFO / 雨水の頃に見られる自然の変化
梅の開花、ウグイスの初鳴き、タンポポの芽吹きなど、雨水の前後は自然の「春のスイッチ」が次々と入る時期です。散歩のときに足元や木々に目を向けてみると、季節の移ろいを身近に感じることができます。
小さなお子さんがいるご家庭では、雨水の頃の自然の変化は季節を学ぶ絶好の機会です。散歩の途中で梅の花を見つけたり、鳥のさえずりに耳を傾けたりすることで、子どもの五感が刺激されます。「今日のお空は何色かな」「氷が溶けて水たまりになっているね」といった声かけを通じて、季節の移り変わりを親子で共有する時間を持つことができます。また、雨水の頃はちょうどひな人形を飾る時期でもあるため、女の子のいる家庭では「お雛様を一緒に飾る」という行事を通じて、日本の伝統文化に親しむきっかけにもなります。

CHAPTER 04
農業との関わりとひな人形

この節気は古くから農耕の準備を始める時期の目安とされてきました。雪解け水が田畑を潤し始めることから、種籾(たねもみ)の選別や農具の手入れを始める合図として農村で重視されていました。
また、この日にひな人形を飾ると良縁に恵まれるという言い伝えがあります。水は生命の源であり、豊穣や子孫繁栄と結びつくことから、女の子の健やかな成長を願うひな祭りの準備にふさわしい日とされているのです。3月3日のひな祭りに向けて、この節気を目安に飾り始める家庭も多いです。
農家にとって雨水は、一年の農作業を左右する重要な節目でもあります。「雨水に種を蒔けば芽が出る」という言い伝えが各地に残っており、実際にこの時期は土の中の温度が少しずつ上がり始め、種が発芽しやすい環境が整い始めます。特に米作りにおいては、種籾を水に浸して発芽させる「浸種(しんしゅ)」の準備をこの頃から始める地域が多くあります。雪国では「雪の下から土が顔を出したら農作業の始まり」と言われ、雪解けの進み具合がそのまま農作業のスケジュールを決めていました。現代でも家庭菜園を楽しむ方にとって、雨水はジャガイモの種芋の植え付けやエンドウ豆の支柱立てなど、春の庭仕事を始める良いきっかけになります。
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INFO / 雨水とひな人形
雨水の日にひな人形を飾ると良縁に恵まれるという言い伝えがあります。水は命の源であり、水の神様が子宝や安産に縁があることから、この風習が生まれたとされています。

CHAPTER 05
旬の食べ物と春の味覚

まだ寒さが残るこの時期ですが、春を告げる食材が少しずつ出回り始めます。
  • ふきのとう:春一番に芽を出す山菜。天ぷらやふき味噌で楽しむ
  • 菜の花:ほろ苦い風味が早春の味覚を代表する
  • いよかん・はっさく:柑橘類が旬を迎え、ビタミンC補給に最適
  • わかめ:新わかめが出回り始め、味噌汁やサラダに
温かい粕汁や甘酒(あまざけ)は体を芯から温めてくれる冬の名残の味わいです。春の食材と冬の料理が共存するこの時期ならではの食卓を楽しみましょう。
また、雨水(2月19日頃)はバレンタインデー(2月14日)の直後にあたります。バレンタインでもらったチョコレートや、手作りで余った材料がある場合は、この時期ならではのお菓子作りを楽しんでみてはいかがでしょうか。残ったチョコレートを溶かしてブラウニーやチョコマフィンを焼くのは、まだ肌寒いこの季節にぴったりの楽しみです。焼き菓子の甘い香りが部屋に広がると、春を待つ時間がいっそう温かく感じられます。
雨粒
雨水は雪が雨に変わり始める頃を表す二十四節気
雨水の頃の旬の食材一覧
食材分類おすすめの食べ方旬の時期
ふきのとう山菜天ぷら、ふき味噌2月〜3月
菜の花野菜おひたし、パスタ、からし和え2月〜3月
春キャベツ野菜サラダ、浅漬け、回鍋肉2月〜4月
いよかん果物そのまま、ジュース、ゼリー1月〜3月
はっさく果物そのまま、サラダ2月〜3月
新わかめ海藻味噌汁、サラダ、酢の物2月〜4月
あさり貝類味噌汁、酒蒸し、パスタ2月〜4月
しらうお刺身、天ぷら、卵とじ2月〜4月
この時期の食卓では、冬の根菜と早春の葉物を組み合わせた料理がおすすめです。例えば、大根やかぶといった冬野菜の甘みが増す時期でもあるため、菜の花と大根のサラダや、ふきのとうとかぶの味噌汁など、季節の境目ならではの組み合わせを楽しめます。旬の食材を取り入れることは、栄養面だけでなく、食卓から季節を感じるという日本の食文化の豊かさにつながります。
新米パパ / 2歳児のパパ
雨水の時期に食べるものって何かありますか?
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
フキノトウ、菜の花、春キャベツなど、春の訪れを感じる食材が出回り始めます。フキノトウの天ぷらや菜の花のおひたしは春の味覚の代表格。ほろ苦い味わいが冬の体を目覚めさせてくれますよ。

CHAPTER 06
時候の挨拶と暮らしのヒント

手紙やメールでは「雨水の候」「残寒の折」「春浅のみぎり」といった時候の挨拶が使えます。「雨水の候、少しずつ春の気配が感じられる頃となりました」のような書き出しが季節感を伝えます。
ビジネスシーンで使える時候の挨拶の例文をいくつか紹介します。「雨水のみぎり、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます」「残寒厳しき折、皆様にはお変わりなくお過ごしでしょうか」「三寒四温の日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか」などが定番です。プライベートな手紙では「梅のつぼみもほころび始め、少しずつ春の気配を感じる頃となりました」「雪解けの水音に春の近さを感じる今日この頃です」といった、自然の情景を織り交ぜた書き出しが季節感を伝えます。メールやSNSでのやり取りでも、一言添えるだけで心のこもった印象になります。
暮らしの面では、花粉症シーズンの始まりにあたるため、スギ花粉への対策を早めに始めることが大切です。マスクや空気清浄機の準備、洗濯物の室内干しなど、花粉を室内に持ち込まない工夫を心がけましょう。三寒四温を繰り返すこの時期は体調を崩しやすいため、重ね着で気温の変化に対応するのがおすすめです。日中は暖かく感じても朝晩は冷え込むことが多いため、脱ぎ着しやすい服装を心がけましょう。少しずつ日差しが明るくなるこの時期、窓辺に春の花を飾るだけでも気分が華やぎます。水仙やクロッカスなど早春の花は寒さに強く、初心者でも育てやすいのでおすすめです。小さな鉢植えを窓辺に置くだけで、部屋に春の気配が漂い、心まで温かくなります。
TIP / 雨水の暮らしのヒント
雨水は「三寒四温」で気温差が大きい時期です。春一番が吹いた翌日に真冬の寒さに逆戻りすることもあるため、重ね着で体温調節できる服装を心がけましょう。ガーデニングでは種まきの土づくりを始めるのに良い時期です。
新米パパ / 2歳児のパパ
三寒四温って「だんだん暖かくなる」って意味だと思ってました。本当は冬の言葉なんですね。
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
はい、もともとは中国大陸の真冬の気候パターンを指す言葉です。ただ日本では2月頃の寒暖差のある気候にぴったり合うので、早春の季語として定着しました。言葉の由来を知ると、季節への感じ方も変わりますよ。お子さんと一緒に「今日は寒の日かな、温の日かな」と数えてみるのも楽しいですね。
A.
2026年の雨水は2月19日です。雨水の期間は約15日間で、3月5日頃の啓蟄まで続きます。
A.
水の神様が子宝・安産に縁があるとされ、雨水の日にひな人形を飾ると良縁に恵まれるという言い伝えがあります。
A.
「うすい」と読みます。「空から降るものが雪から雨に変わり、氷が水になる」という意味の二十四節気です。
A.
寒い日が3日続くと暖かい日が4日続くという気候のパターンを表す言葉です。もともとは中国の華北地方の冬の気候を表す言葉でしたが、日本の早春の気候にもよく当てはまるため、雨水の頃の気候を表す言葉として広く使われています。
A.
1859年に長崎県壱岐で漁師53人が遭難した強い南風を「春一」と呼んだことが語源とされています。立春から春分の間に吹く最初の強い南風を指し、春一番の後は寒さが戻ることも多いです。
A.
梅が代表的です。「百花の魁(さきがけ)」とも呼ばれ、まだ寒さの厳しい中で他の花に先駆けて咲き始めます。白梅、紅梅、枝垂れ梅と品種によって開花時期が少しずつ異なります。また、早咲きの河津桜やクロッカス、スノードロップなどもこの時期に花を咲かせます。
A.
地域差がありますが、九州や四国の暖かい地域では2月上旬、関東では2月中旬から下旬、東北では3月下旬頃が目安です。雨水の頃はちょうど関東以西でウグイスの初鳴きが聞かれ始める時期にあたります。
『日本のしきたりがまるごとわかる本』では、雨水(うすい)について二十四節気の一つで、雪が雨に変わり氷が解け始める頃を意味すると紹介されています。梅の花がほころび始め、春の気配がそこかしこに感じられる季節です。雨水の日にひな人形を飾り始めると良縁に恵まれるという言い伝えもあり、梅の開花とともに春の訪れを実感する節気として、古くから農事や暮らしの大切な目安とされてきました。

CHAPTER 07
まとめ

雨水は雪が雨に変わり始める早春の節気で、農耕の準備やひな人形を飾る時期の目安です。ふきのとうや菜の花など春を告げる食材が出回り始め、少しずつ季節が動き出します。三寒四温の寒暖差に気をつけながら、春の訪れを心待ちにしましょう。雨水という名が示すように、降るものが雪から雨へと変わるこの時期は、自然界が少しずつ目覚め始める瞬間です。まだ肌寒い日が続きますが、日脚は確実に伸びており、夕方の明るさに春の近づきを実感できる頃でもあります。ひな人形の準備とともに、心も春に向けて動き出す季節をゆっくりと楽しんでください。