立春(りっしゅん)は、二十四節気(にじゅうしせっき)の第1番目にあたり、暦の上で春の始まりを告げる日です。まだ寒さが厳しい時期ですが、少しずつ日が長くなり、春の気配が感じられるようになります。この記事では、立春の意味や2026年の日付、立春大吉のおまじない、食べ物や時候の挨拶までわかりやすく解説します。

CHAPTER 01
立春とは?意味と二十四節気の位置づけ

立春(りっしゅん)とは、二十四節気の第1番目にあたる節気で、暦の上で春が始まる日を意味します。太陽の黄経が315度に達した日が立春にあたり、毎年2月4日頃に訪れます。2026年の立春は2月4日(水)です。
二十四節気は中国の古代農業暦に由来し、太陽の運行をもとに一年を24等分した暦の仕組みです。立春は立夏(りっか)・立秋(りっしゅう)・立冬(りっとう)とともに「四立(しりゅう)」と呼ばれる季節の区切りのひとつで、旧暦では立春が一年の始まりとされていました。そのため、節分(立春の前日)は旧暦の大晦日(おおみそか)にあたる特別な日として重んじられてきたのです。
立春から雨水(うすい)の前日までの約15日間が「立春」の期間です。七十二候では「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」「魚上氷(うおこおりをいずる)」の三候に分けられ、春の訪れを告げる自然の変化が暦に刻まれています。実際にはまだ真冬の寒さが続きますが、日照時間は冬至(とうじ)に比べて約1時間ほど長くなり、陽射しに少しずつ力強さが戻ってくる時期です。
旧暦(太陰太陽暦)では、立春は正月の始まりに近い日として特別に重んじられていました。現在でも「新春」「迎春」「初春」といった年賀状の挨拶語が残っているのは、かつて立春と正月がほぼ同時期にあった名残です。また、干支(えと)や厄年の切り替わりを立春とする考え方も根強く、節分の豆まきが大晦日の行事として位置づけられていたことからも、立春が一年の真の始まりと考えられていたことがわかります。
2月4日
2026年の立春
第1番目
二十四節気の順番
315度
太陽黄経

CHAPTER 02
立春大吉のおまじない

立春の日には、「立春大吉」と書いた紙を玄関に貼る風習があります。これは古くから伝わる縁起のよいおまじないで、禅宗のお寺では檀家に「立春大吉」のお札を配る習わしが今も残っています。
「立春大吉」のおまじないには、面白い言い伝えがあります。「立春大吉」の四文字はすべて左右対称で、紙の裏から見ても表から見ても同じように読めます。鬼が玄関から家の中に入ってきたとき、振り返ると同じ「立春大吉」の文字が目に入るため、「まだ家に入っていない」と勘違いして外に出て行ってしまうというのです。こうして厄を払い、一年の無病息災を願うのが立春大吉の由来です。
お札は立春の日に、玄関の入り口に向かって右側の目線の高さに貼ります。和紙や半紙に墨で「立春大吉」と縦書きするのが正式な作法ですが、近年は寺社で授与されるお札を使う方も多くなっています。翌年の立春まで貼り続け、新しいお札に貼り替えるのが一般的です。
立春大吉の風習は、もともと禅宗の曹洞宗のお寺で始まったとされています。大本山の永平寺や總持寺をはじめ、全国の曹洞宗寺院では今でも檀家に立春大吉のお札を配る習わしが続いています。近年では宗派を問わず、縁起物として一般の方にも広まり、書道教室やワークショップで立春大吉を書く体験イベントも各地で開催されています。
TIP / 家族で立春大吉を書いてみよう
立春大吉のお札は、家族で手書きするのもおすすめです。お子さんと一緒に筆ペンで書けば、日本の伝統行事を体験する良い機会になります。左右対称の文字の不思議さに、子どもたちも興味を持ってくれるはずです。

CHAPTER 03
立春の食べ物と風習

立春には、春の始まりを祝うさまざまな食べ物や風習があります。どれも新しい季節の訪れを寿ぐ意味が込められており、日本各地で古くから親しまれてきました。

立春朝搾り

立春朝搾り(りっしゅんあさしぼり)は、立春の日の早朝にしぼり上がったばかりの日本酒を、その日のうちに届けて味わうという特別なお酒です。全国の酒蔵が参加する催しで、杜氏たちは立春の前夜から夜通し作業にあたります。できたての新酒は、フレッシュで華やかな香りが特徴。一年に一度、立春の日だけに味わえる贅沢な一杯として、日本酒好きの間で人気を集めています。

立春生菓子と立春大福

立春生菓子(りっしゅんなまがし)は、和菓子屋が立春の日にあわせて作る季節限定の上生菓子です。梅の花や鶯(うぐいす)など、春を象徴するモチーフが美しくかたどられ、目でも舌でも春の訪れを楽しめます。また、立春大福は立春の日に作られる大福餅で、この日に食べると一年の幸運を招くといわれています。朝についた餅は縁起がよいとされ、買い求める人で和菓子店が賑わいます。

豆腐

古くから「立春の日に豆腐を食べると縁起がよい」という言い伝えがあります。豆腐は白い色が邪気を払うとされ、体を浄化する食べ物と考えられてきました。節分で豆を使って厄を払った翌日に、同じ大豆から作られた豆腐を食べることで、心身を清めて新しい春を迎えるという意味が込められています。湯豆腐や冷奴など、シンプルな食べ方で春の始まりを祝いましょう。
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
立春の食べ物はいろいろあるのですね。子どもと一緒に楽しめるものはありますか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
立春大福がおすすめですよ。和菓子屋さんで当日限定で販売されることが多いので、お子さんと一緒に買いに行くのも楽しいイベントになります。「春が来たお祝いのお餅だよ」と伝えれば、季節の行事への関心も育まれますね。
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
立春大吉のお札も一緒に作ってみようかな。左右対称の文字って子どもが喜びそうです。
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
とてもいいですね。筆ペンと半紙があれば手軽にできます。鬼が間違えて出ていくお話をしながら書くと、お子さんも楽しみながら日本の文化に触れられますよ。

CHAPTER 04
八十八夜・二百十日 ─ 立春を起点にした暦

立春は暦の上で春の始まりであるだけでなく、農業や漁業の目安となる「雑節(ざっせつ)」の起算日としても重要な役割を果たしています。旧暦では立春が一年の最初の日(元日)とされていたため、さまざまな季節の節目が立春から数えて定められました。なかでも八十八夜二百十日は、農家や漁師にとって欠かせない暦の知恵です。
八十八夜(はちじゅうはちや)は、立春から数えて88日目にあたる日で、例年5月2日頃に訪れます。「夏も近づく八十八夜」の茶摘み歌でも知られるように、この時期は新茶の摘み取りが最盛期を迎えます。八十八夜に摘んだ新茶は「一番茶」と呼ばれ、八十八夜の新茶を飲むと一年間無病息災で過ごせるという言い伝えがあります。また、八十八夜は霜が降りなくなる時期の目安でもあり、農家はこの日を境に稲の種まきや茶摘みなどの農作業を本格的に始めました。「八十八」の字を組み合わせると「米」という漢字になることから、農業との深い結びつきがうかがえます。
二百十日(にひゃくとおか)は、立春から数えて210日目にあたる日で、例年9月1日頃です。ちょうど台風シーズンと重なるため、古くから農家の厄日・荒れ日として警戒されてきました。稲の開花時期に暴風雨に見舞われると収穫に大きな打撃を受けるため、この日の前後には風鎮めの祭りが各地で行われます。同様に、立春から220日目の二百二十日(にひゃくはつか)も台風への警戒日とされ、二百十日とあわせて「二大厄日」と呼ばれることもあります。
このように、立春を起点として数える雑節は農業だけでなく、漁業や日常生活にも大きな影響を与えてきました。現代ではカレンダーや天気予報に頼ることが多くなりましたが、八十八夜に新茶を楽しんだり、二百十日に台風への備えを見直したりすることで、先人たちが積み重ねてきた暦の知恵を暮らしに取り入れることができます。お子さんと一緒に「立春から何日目」と数えてみるのも、季節を学ぶよい機会になるでしょう。
八十八夜
立春から数えて88日目(5月2日頃)。茶摘みや種まきの目安となる雑節。新茶を飲むと無病息災になるといわれる。
二百十日
立春から数えて210日目(9月1日頃)。台風シーズンの警戒日として農家の厄日とされる。各地で風鎮めの祭りが行われる。
二百二十日
立春から数えて220日目(9月11日頃)。二百十日と並ぶ台風の警戒日で、稲の収穫期を前に注意が必要な時期。
TIP / 八十八夜の数え方
八十八夜は立春の日を1日目として数えて88日目の日です。2026年の立春は2月4日ですから、2026年の八十八夜は5月2日(土)にあたります。なお、閏年などの影響で前後することもあります。新茶のシーズンとも重なるため、お茶好きの方はこの時期に新茶を楽しんでみてはいかがでしょうか。
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
八十八夜や二百十日って、全部立春から数えるんですね。昔の人は立春をそんなに大切にしていたのですか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
はい。旧暦では立春が一年の始まりでしたから、農作業の計画もすべて立春を基準に立てていたのです。天気予報のない時代、こうした暦の知恵が農家の生活を支えていたのですね。

CHAPTER 05
立春の時候の挨拶と暮らしのヒント

立春を過ぎると暦の上では春ですが、実際にはまだ寒さが厳しい日が続きます。この時期に送る季節の挨拶状が「余寒見舞い(よかんみまい)」です。寒中見舞い松の内明け(1月7日頃)から立春の前日までに送るのに対し、余寒見舞いは立春から2月末頃までに届けるのが一般的です。
時候の挨拶には「立春の候」「余寒の候」「春寒の候」などの表現が使えます。ビジネス文書では「立春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」、手紙では「立春とは名ばかりの寒さが続きますが、お変わりありませんか」のように使い分けるとよいでしょう。
暮らしの面では、立春を境に少しずつ春の準備を始める時期です。冬物衣類の整理や、ひな人形の準備(立春から2月中旬に飾り始めるのがよいとされています)、花粉症対策のスタートなど、春に向けた暮らしの切り替えを意識しましょう。庭やベランダでは、梅の花がほころび始め、春の訪れを最初に知らせてくれます。
また、立春を過ぎると気になるのが「春一番」です。春一番とは、立春から春分(しゅんぶん)までの間に吹く、その年最初の強い南寄りの風のことで、気象庁が毎年発表しています。暖かい南風が吹き込むため気温が一気に上がりますが、春一番が吹いた翌日以降は再び冬型の気圧配置に戻り、「寒の戻り」で冷え込むことも珍しくありません。体調管理には十分注意しましょう。
春一番の語源には、1859年(安政6年)に長崎県壱岐で起きた海難事故が深く関わっています。この年、春先に吹いた突然の強い南風によって漁船が転覆し、53人もの漁師が命を落としました。地元の漁師たちはこの恐ろしい風を「春一」や「春一番」と呼んで警戒するようになり、やがてこの言葉が全国に広まったとされています。現在では春の訪れを告げる風物詩として親しまれていますが、もともとは漁師たちの命がけの経験から生まれた言葉なのです。
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
春一番って、もともとは怖い風だったのですね。子どもと散歩するときも気をつけたほうがいいですか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
春一番が吹く日は風速8メートル以上の強風になることがあります。小さなお子さんとの外出時は飛来物に注意し、翌日以降の寒の戻りにも備えて上着を用意しておくと安心ですよ。春一番が過ぎれば、本格的な春はもうすぐそこです。
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INFO / 余寒見舞いを送る時期
余寒見舞いは立春(2月4日頃)から2月末までに届くように送ります。寒中見舞いの時期を過ぎてしまった場合や、喪中のため年賀状を控えた方への挨拶としても活用できます。寒さが残る時期ならではの気遣いの言葉を添えましょう。

CHAPTER 06
よくある質問

A.
2026年の立春は2月4日(水)です。立春の日付は毎年2月3日から2月5日頃の間で変動しますが、近年はほとんどの年で2月4日にあたります。
A.
節分は立春の前日にあたる日です。旧暦では立春が一年の始まりとされていたため、その前日の節分は大晦日のような役割を持ち、豆まきで邪気を払って新しい春を迎える準備をしました。
A.
立春大吉の四文字はすべて左右対称のため、紙の裏側から見ても表と同じように読めます。鬼が家に入ってきても、振り返ると同じ文字が見えるので「まだ入っていない」と勘違いして出て行くという言い伝えがあり、厄除けの効果があるとされています。
A.
立春朝搾り(日本酒)、立春大福、立春生菓子、豆腐などが代表的です。特に豆腐は白い色が邪気を払うとされ、立春の日に食べると縁起がよいといわれています。
A.
立春は暦の上での春の始まりであり、実際の気候とは差があります。二十四節気は太陽の運行に基づく暦のため、地表の気温が上がるまでには時間差があるのです。実際に暖かさを感じ始めるのは、3月の啓蟄(けいちつ)や春分の頃からが一般的です。
A.
八十八夜は立春から数えて88日目にあたる日で、毎年5月2日頃に訪れます。茶摘みの最盛期や農作業の本格的な開始を告げる目安として、古くから農家に重んじられてきました。「八十八」の字を合わせると「米」の漢字になることからも、農業との深いつながりがわかります。
『冠婚葬祭 暮らしのマナー大百科』では、立春は二十四節気のひとつで、暦の上で春が始まる日とされています。毎年2月4日ごろにあたり、前日の節分と合わせて季節の変わり目を強く意識する時期です。同書によると、立春は旧暦では一年の始まりとされ、「立春大吉」のお札を門口に貼って厄除けとする風習があります。「立春大吉」は左右対称の文字で構成されており、裏から見ても同じに読めることから鬼が入ってきても振り返ると同じ文字が見えるため、まだ入っていないと勘違いして出ていくという言い伝えがあると紹介されています。
桜
立春は春の始まりを告げる二十四節気

CHAPTER 07
まとめ

立春は単なる季節の区切りではなく、八十八夜や二百十日といった農業暦の起算日でもあり、日本人の暮らしに深く根ざした暦の要です。春一番の吹く時期を知ることで季節の移り変わりを肌で感じ、八十八夜には新茶を味わい、二百十日には台風への備えを意識する ── こうした暦の知恵は、現代の暮らしにも十分に活かすことができます。
立春は二十四節気の第1番目で、暦の上で春の始まりを告げる大切な節目です。「立春大吉」のお札を玄関に貼って厄を払い、立春朝搾りや立春大福で新しい季節の訪れを祝う風習は、日本ならではの美しい文化です。まだ寒さは残りますが、少しずつ長くなる日差しに春の気配を感じながら、余寒見舞いや春の準備など、季節の移ろいを暮らしの中に取り入れてみてはいかがでしょうか。