啓蟄(けいちつ)は、二十四節気(にじゅうしせっき)の第3番目にあたる春の節気で、2026年は3月5日頃に訪れます。「冬ごもりしていた虫たちが地中から這い出る頃」という意味を持ち、大地が温まり始めて生き物が動き出す時期です。日差しに春の力強さが加わり、梅や桃の花が咲き誇るこの節気は、本格的な春の到来を告げる季節の変わり目です。

CHAPTER 01
意味と二十四節気の位置づけ

「啓」は「開く」、「蟄」は「土の中で冬ごもりしている虫」という意味です。つまり啓蟄とは、冬ごもりをしていた虫が春の陽気に誘われて巣穴を開き、地上に出てくる時期を表しています。太陽の黄経が345度に達する日で、二十四節気では雨水の次、春分(しゅんぶん)の前に位置します。
なお、ここでいう「虫」は現代の昆虫に限らず、蛇やカエル、トカゲなど冬眠する生き物全般を指す言葉でした。立春(りっしゅん)を過ぎて少しずつ地温が上がり、土の中の生き物たちが目を覚まし始める様子を、古人は暦の名前に託したのです。
新米パパ / 2歳児のパパ
啓蟄って「虫が出てくる」という意味なんですね。でもなぜ「啓」という字を使うのですか?
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
「啓」には「ひらく」「あける」という意味があります。つまり、虫たちが自ら巣穴の戸を開いて外に出てくるという情景を、たった二文字で表した言葉なのです。自然の目覚めを感じさせる、美しい節気の名前ですね。
3月5日頃
啓蟄の時期
第3番目
二十四節気での順番
春分の前
雨水の次に位置
花にとまる蝶
啓蟄は虫たちが冬眠から目覚める頃

CHAPTER 02
啓蟄の七十二候

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INFO / 七十二候とは?二十四節気をさらに3つに分けた季節の暦
七十二候(しちじゅうにこう)は、二十四節気をさらに3等分して約5日ごとの季節の変化を表したものです。気象や動植物の変化を短い文で記し、より細やかに季節の移ろいを感じ取る仕組みになっています。中国で生まれた暦ですが、日本の気候風土に合わせて独自に改訂された「本朝七十二候」も使われています。
啓蟄の期間は、初候・次候・末候の三つに分けられます。日本の七十二候では以下の三候が定められており、それぞれが春の訪れを象徴する自然の変化を描いています。

初候:蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)

3月5日頃からの約5日間。冬の間、土の中に隠れていた虫たちが巣穴の戸を開いて地上に姿を現す時期です。啓蟄という節気の名前そのものを体現する候であり、大地の温もりとともに生き物たちが一斉に動き出す瞬間を捉えています。

次候:桃始笑(ももはじめてさく)

3月10日頃からの約5日間。春の到来とともに桃の花が咲き始める時期です。注目すべきは「笑」の字が「咲く」の意味で使われている点です。古語では花が咲くことを「笑う」と表現しました。桃の花がほころぶ様子を、まるで花が笑っているかのように見立てた、日本人ならではの繊細な感性が表れています。

末候:菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

3月15日頃からの約5日間。菜の花などの葉を食べていた青虫が羽化して、蝶となって飛び始める時期です。幼虫から成虫への変態は、冬から春への劇的な季節の転換を象徴しています。畑や野原にモンシロチョウが舞い始めると、春の到来を実感できるでしょう。

中国の七十二候との違い

中国の啓蟄の七十二候は日本とやや異なります。中国では次候が「倉庚鳴(そうこうなく)」、すなわちウグイスが鳴き始めるとされています。また、日本の「桃始笑」に対して中国では「桃始華(ももはじめてはなさく)」と表記され、同じ桃の開花でも「笑」と「華」という字の選び方に日中の文化的な感性の違いが見て取れます。
さらに興味深いのが、中国の啓蟄に関連する表現「鷹化為鳩(たかけしてはととなる)」です。これは猛々しい鷹が、春のうららかな日差しのもとで穏やかな鳩(一説にはカッコウとも)のようになるという意味で、春の温かさが万物の気質さえも和らげるという中国的な自然観を反映しています。
啓蟄の七十二候:日本と中国の比較
日本中国
初候蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)桃始華(ももはじめてはなさく)
次候桃始笑(ももはじめてさく)倉庚鳴(そうこうなく)
末候菜虫化蝶(なむしちょうとなる)鷹化為鳩(たかけしてはととなる)

CHAPTER 03
旬の食べ物と春の味覚

この時期は春の山菜や野菜が本格的に出回り始めます。
  • たらの芽:「山菜の王様」と呼ばれ、天ぷらが絶品
  • うど:独特の香りとシャキシャキした食感が魅力。酢味噌和えやきんぴらに
  • 新玉ねぎ:辛みが少なくみずみずしい。サラダでそのまま味わえる
  • しらす:春の解禁を迎え、釜揚げしらす丼が旬の味覚
冬の間に体内に溜まった老廃物を排出するため、昔から「春には苦味のあるものを食べよ」といわれてきました。山菜のほろ苦さは新陳代謝を促し、体を春の活動モードに切り替えてくれると考えられています。
TIP / 啓蟄の旬の食材
タラの芽、つくし、ワラビなどの山菜が出回り始めます。「春の皿には苦みを盛れ」ということわざの通り、春の山菜のほろ苦さには冬の間に溜まった老廃物を排出する効果があるとされています。

CHAPTER 04
春の行事と風物詩

この節気の頃はひな祭り(3月3日)の余韻が残り、卒業式シーズンが始まる時期でもあります。梅の花が見頃のピークを迎え、各地の梅園では観梅のイベントが催されます。水戸の偕楽園や東京の湯島天神、大阪城公園の梅林は名所として有名です。
農業の面では、春の種まきや苗の準備が本格化します。家庭菜園では春野菜の種を蒔く適期にあたり、ガーデニングショップが活気づく季節です。昆虫や爬虫類が活動を再開するため、庭仕事の際には蛇や蜂への注意も必要になってきます。この時期は卒業式や卒園式のシーズンでもあり、門出を祝う花束やフラワーアレンジメントの需要が高まります。花屋の店先にはチューリップやラナンキュラス、スイートピーなど色とりどりの春の花が並び、見ているだけでも心が弾む華やかな季節です。
新米パパ / 2歳児のパパ
啓蟄って虫が出てくる日ですよね。子どもと何か体験できることはありますか?
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
啓蟄の頃は自然観察にぴったりの時期です。てんとう虫やチョウチョが活動し始め、カエルの声も聞こえてきます。公園や田んぼで春の生き物探しをすると、お子さんにとって素敵な体験になりますよ。

CHAPTER 05
時候の挨拶と暮らしのヒント

手紙やメールでは「啓蟄の候」「仲春の折」「春暖のみぎり」といった時候の挨拶が使えます。「啓蟄を過ぎ、日ごとに春めいてまいりました」のような書き出しが季節感を伝えます。
暮らしの面では、スギ花粉の飛散がピークに近づく時期のため、花粉対策を万全にしておきましょう。三寒四温を繰り返しながらも確実に暖かくなっていくこの時期、冬物のコートやブーツをクリーニングに出し、春物への衣替えを進めるのにもよいタイミングです。冬の間に蓄えた体重を戻すためにウォーキングやジョギングを始めるのにも最適な気候で、体を動かすことで花粉症の症状が和らぐという研究結果もあります。春の陽光を浴びながら適度な運動を心がけ、心身ともに爽やかにリフレッシュしましょう。
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INFO / 啓蟄と桃の節句
啓蟄(3月5日頃)はひな祭り(3月3日)のすぐ後にあたります。桃の花が咲き始める時期でもあり、「桃始笑(ももはじめてさく)」という七十二候の名にも春の喜びが表されています。
A.
2026年の啓蟄は3月5日です。啓蟄の期間は約15日間で、3月20日頃の春分まで続きます。
A.
「けいちつ」と読みます。「啓」は「開く」、「蟄」は「虫が土の中に隠れる」という意味で、冬ごもりの虫が穴を開いて出てくるという意味です。
A.
「啓蟄の候」「春暖の候」「日増しに暖かくなってまいりました」などが使えます。
『日本のしきたりがまるごとわかる本』によれば、啓蟄(けいちつ)は二十四節気の一つで、冬ごもりをしていた虫たちが土の中から姿を現す頃を意味します。「啓」は「開く」、「蟄」は「虫が土中に隠れる」を意味し、大地が暖まり始めることで蛇やカエル、てんとう虫などの生き物が活動を再開します。この時期は桃の花が咲き始めることから「桃始笑(ももはじめてさく)」という七十二候の名も持ち、自然界の目覚めを告げる春の節気として親しまれています。

CHAPTER 06
まとめ

啓蟄は冬ごもりの虫たちが地上に姿を現す春の節気で、大地に生命力がみなぎり始める時期です。たらの芽やうどなど春の山菜が旬を迎え、梅の花が見頃のピークを迎えます。花粉対策に気を配りながら、春の訪れを存分に楽しみましょう。虫や花が動き出すこの節気は、自然界の生命力が一気に高まる季節でもあります。身近な草花の変化に目を向けながら、春の息吹を感じる日々を大切に過ごしてみてください。