土用干し(どようぼし)は、夏の土用(7月下旬〜8月上旬)の時期に、梅干し・衣類・書籍などを天日や風に当てる日本の伝統的な風習です。2027年の夏の土用は7月20日〜8月7日。梅雨明け後の強い日差しと乾いた風を利用して、カビや虫を防ぎ、保存性を高める先人の暮らしの知恵が詰まっています。この記事では、土用干しの意味と時期、梅干しの干し方、衣類・書籍の虫干しのやり方、現代の暮らしへの活かし方まで解説します。
雨粒が水面に落ちる
土用干し ─ 梅雨明けの日差しで衣類や書物を虫干しする風習

CHAPTER 01
土用干しとは?意味と2027年の時期

「土用」とは立春(りっしゅん)・立夏(りっか)・立秋(りっしゅう)・立冬(りっとう)の直前約18日間を指す雑節(ざっせつ)で、年に4回あります。一般に「土用」といえば夏の土用(立秋前の約18日間)を指し、2027年は7月20日〜8月7日がこれにあたります。
夏の土用は梅雨が明けて晴天が続き、一年でもっとも日差しが強い時期です。古くから衣類や寝具、書物を日光や風に当てて湿気やカビ、害虫を払う風習が行われてきました。「虫干し」「曝書(ばくしょ)」とも呼ばれ、寺院や博物館では経典や所蔵品に風を通す行事が今も続いています。
7月下旬〜8月上旬
夏の土用干しの時期
梅干し
代表的な干し物
3日3晩
伝統的な天日干し期間
「土用」は中国の五行思想(木・火・土・金・水)に由来する暦の概念です。春は「木」、夏は「火」、秋は「金」、冬は「水」にそれぞれ配当され、残った「土」が各季節の変わり目(約18日間)に割り当てられました。土用は年に4回(春・夏・秋・冬の各土用)ありますが、一般的に「土用」というと夏の土用(7月中旬〜8月上旬)を指すことがほとんどです。
土用干しが行われる夏の土用は、梅雨が明けて晴天が続く時期です。強い日差しを利用して梅干しを干したり、梅雨の間にこもった衣類や書籍の湿気を飛ばしたりするのが土用干しの本来の目的です。2027年の夏の土用は7月20日(火)〜8月7日(土)で、梅雨明け後に晴れが続く日がベストタイミングです。
2027年の四季の土用
季節期間丑の日
冬の土用1月17日〜2月3日1月22日・2月3日
春の土用4月17日〜5月5日4月28日
夏の土用7月20日〜8月7日7月21日・8月2日
秋の土用10月21日〜11月7日10月25日・11月6日

土用干しの種類 — 何を干す?

土用干しで干すものは大きく分けて3つのカテゴリがあります。最も有名な「梅干しの天日干し」、衣類や着物を干す「虫干し」、そして書籍や掛け軸を日光にあてる「曝書(ばくしょ)」です。いずれも強い夏の日差しと乾燥した風を利用して、カビや害虫を防ぐ目的があります。
梅干しの土用干し
塩漬けした梅を3日間天日干しする。梅干し作りのハイライトで、色・味・保存性が決まる重要な工程
虫干し(衣類・着物)
着物や衣類を日陰で風に当て、湿気やカビ、虫食いを防ぐ。直射日光は色褪せの原因になるため陰干しが基本
曝書(書籍・掛け軸)
古い書籍や掛け軸を風に当てて湿気を飛ばす。図書館や寺院でも行われる伝統的な保存行為
田んぼの土用干し
水田の水を一時的に抜いて田んぼを乾かす。稲の根を強くし、収穫量を増やす重要な農業技術のひとつ

CHAPTER 02
梅干しの土用干しのやり方

かめに漬けた梅干し
土用の時期に梅干しを三日三晩干す「土用干し」
この風習でもっとも身近なのが梅干しづくりです。6月頃に塩漬けした梅を、夏の土用に入ったら三日三晩天日に干します。
  1. 01
    1日目:ザルに並べて天日干し
    塩漬けした梅をザルに重ならないように並べ、朝から日当たりの良い場所で干します。日中は一度裏返して両面に日光を当て、夜は取り込みます。
  2. 02
    2日目:裏返しながら干す
    同じように天日干しします。梅がくっつかないよう、午前中に一度ザルから離してから戻すと均一に乾きます。
  3. 03
    3日目:仕上げの干し
    3日目はそのまま夜露に当てる方法と、夕方に取り込む方法があります。夜露に当てると柔らかく仕上がりますが、急な雨に注意が必要です。3日間の天日干しが終わったら、梅酢に戻すか、そのまま保存容器に入れます。
土用干しのポイントは天気の良い3日間を選ぶことです。梅雨明け直後の晴天が続く時期が理想で、天気予報をチェックして3日間連続で晴れる日を狙いましょう。万が一途中で雨に降られてしまった場合は、すぐに室内に取り込み、晴れた日に改めて干し直せば問題ありません。
青梅
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CAUTION
土用干し中の突然の雨には要注意です。特に梅干しは雨に濡れるとカビの原因になります。外出中に雨が降る可能性がある場合は、室内の日当たりの良い窓辺で干すか、短時間だけ外に出して目を離さないようにしましょう。天気予報アプリの雨雲レーダーをこまめにチェックするのがおすすめです。ベランダに洗濯物カバー(雨よけシート)を用意しておくと、急な雨でも安心です。
夜露に当てる方法は、梅の皮を柔らかくする効果があるとされています。3日目の夜まで外に出しておき、最終的にしっとりとした仕上がりを目指します。ただし、にわか雨の心配がある場合は室内に取り込んでおくのが安全です。
土用干しを成功させるポイントは、「日当たり」「風通し」「裏返し」の3つです。直射日光がしっかり当たる場所に干し、風通しが良いと乾燥が均一に進みます。1日に1〜2回梅を裏返すことで、まんべんなく日光を当てましょう。
干し加減の目安は、梅の表面が乾いてしわが寄り、指で押すと弾力がある状態です。干しすぎるとカチカチになり、干し足りないとカビが生えやすくなります。初めての方は3日間を目安に、好みの固さになるまで調整してください。
土用干しに最適なのは、湿度が低く日差しが強い晴天の日です。理想的な条件は気温30度以上、湿度50%以下、風が適度にある日。天気予報で「洗濯日和」と表示される日は土用干しにも最適です。梅雨明け直後は空気中の水分が多いため、梅雨明けから3〜4日経ってから始めるのがベストです。
朝露が乾く午前9時頃から干し始め、午後3時頃には取り込むのが基本です。夜露に当てると梅が柔らかくなるという伝統的な方法もありますが、虫や急な雨のリスクがあるため初心者は室内に取り込むほうが安全です。曇りの日や雨の日は無理に干さず、天候の回復を待ちましょう。
「三日三晩」が基本ですが、天候次第で日数を調整します。曇りや雨の日は取り込み、晴れた日に改めて干し直しましょう。赤紫蘇を一緒に干すと、鮮やかな赤色の梅干しに仕上がります。干し上がった梅は保存瓶に入れ、冷暗所で保管すれば数年間は美味しくいただけます。

初めての梅干し作り

梅干し作りは、塩漬け(6月)→ 赤しそ漬け(6月下旬〜7月)→ 土用干し(7月下旬〜8月)→ 保存という流れで約2か月かかります。初めての方には塩分濃度18%以上のレシピがおすすめです。塩分が高いほどカビが生えにくく、失敗しにくいからです。
必要な材料は、完熟梅(黄色く熟したもの)、粗塩(梅の重さの18〜20%)、赤しそ(お好みで)、焼酎(消毒用)だけです。容器はホーロー製の漬物容器かガラス瓶が適しています。プラスチック容器は酸に弱いため避けましょう。
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
子どもと一緒に梅干し作りに挑戦したいのですが、何歳くらいからできますか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
梅を洗ったりヘタを取ったりする作業は3〜4歳から手伝えます。塩を揉み込む工程は5歳くらいから。土用干しで梅を裏返す作業は小学生なら一人でできますよ。自分で作った梅干しは特別な味がするもの。食育としてもおすすめです!

CHAPTER 03
衣類・書籍の虫干しのやり方

衣類や書籍の虫干しも、この時期に行うと効果的です。着物や礼服などを風通しの良い日陰に半日ほど広げて、湿気を飛ばします。直射日光に長時間当てると色褪せの原因になるため、衣類は日陰干しが基本です。 ウール製品は特に虫食いに注意が必要で、防虫剤と一緒にたたんで保管するのがおすすめです。
衣類の虫干し
着物の虫干しでは、着物を衣紋掛け(えもんかけ)にかけて日陰で風通しの良い場所に吊るすのが基本です。直射日光に当てると生地が色褪せたり傷んだりするため、必ず日陰で行います。2〜3時間程度風に当てたら、シミや虫食いがないか丁寧にチェックします。この機会に防虫剤の交換やたとう紙の取り替えも一緒に行うと効率的です。
虫干しの手順は簡単です。晴天で湿度の低い日(10〜14時がベスト)に、衣類をハンガーにかけて風通しの良い日陰に吊るします。直射日光は色褪せの原因になるため、必ず日陰で干してください。2〜3時間干したら取り込み、新しい防虫剤と一緒に収納します。
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
虫干しって最近はあまり聞きませんが、今でもやった方がいいんですか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
現代でも湿気対策は大切です。特に着物や大切な書籍は、年に1〜2回風を通すとカビや虫食いを防げます。土用の時期は気温が高く湿度も下がるので、虫干しに最適なんですよ。

書籍・写真・掛け軸の虫干し

古い書籍や掛け軸の曝書(ばくしょ)は、日光に直接当てず風に当てるのが原則です。ページを開いた状態で扇風機の微風を当てるか、風通しの良い部屋で広げておくだけで十分です。お寺や美術館では毎年土用の時期に「虫払い」として所蔵品の点検と曝書を行っており、一般公開されることもあります。
古い本や写真アルバム、掛け軸なども土用干しの対象です。紙はカビの大敵なので、年に一度は風を通しておくことが大切です。本は表紙を開いた状態でパラパラとページをめくり、風を通します。掛け軸は吊るして広げた状態で2〜3時間風に当てます。
写真アルバムは直射日光に当てると写真が劣化するため、日陰で風を通すだけにとどめましょう。デジタルカメラが普及した現代でも、紙焼きの写真には独特の温かみがあります。大切な思い出を長く残すために、年に一度の虫干しを心がけてください。

マンションでの土用干し

新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
マンションで虫干しするスペースがないんですが…
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
マンションの場合は、窓を開けて風を通すだけでも効果があります。エアコンの除湿モードや除湿機を活用するのも効果的です。クローゼットの扉を開けて扇風機の風を当てるだけでも、湿気の放出につながります。防虫剤と除湿剤をこまめに交換するのも大切ですよ。
エアコンや除湿機が普及した現代でも、天日干しの効果は侮れません。布団や枕を干せばダニ対策になり、クローゼットを開け放って風を通すだけでもカビの予防に役立ちます。
現代の住宅事情では、密閉性の高いマンションや戸建てが多く、昔ながらの風通しの良い日本家屋に比べて湿気がこもりやすい環境です。そのため、土用干しの考え方はむしろ現代の暮らしにこそ必要だといえます。エアコンのフィルター掃除、布団の天日干し、クローゼットの換気、キッチンの除湿。これらを「土用の時期にまとめてやる」と決めておけば、季節のリズムに沿った合理的な家事習慣になります。

季節ごとの虫干し

虫干しは夏の土用だけでなく、空気が乾燥する冬の「寒干し(かんぼし)」や、秋の晴れた日に行う「秋の虫干し」とあわせて、年に数回行うと理想的です。
3回すべて行うのが難しい場合は、梅雨明けの土用干しだけでも行いましょう。一年で最も湿気がたまるこの時期に一度風を通すだけで、大切なものの寿命が大きく変わります。
梅干しを天日に干すと、表面の水分が飛んで保存性が高まり、日光に当たることで皮がやわらかく、色も鮮やかに仕上がります。衣類や書籍も、湿気を飛ばして風を通すことでカビの発生を防げます。
布団などは日光に当てて乾燥させることで、ダニが好む湿った環境を防げます。一方、着物や大切な衣類は直射日光で色褪せやすいため、日陰で風を通すのが基本です。防虫剤や除湿剤と組み合わせて、湿気をためない保管を心がけましょう。

CHAPTER 04
土用干しの歴史と土用の行事

土用干しは、日本の気候と密接に結びついた古くからの知恵です。梅雨明けの土用の時期(7月下旬〜8月上旬)は一年で最も日差しが強く、湿度も高い時期です。この気候条件を利用して、食品の保存性を高め、衣類や書物を虫やカビから守る「土用干し」の風習が生まれました。
四季彩る日本の季節
宮中や寺社では古くから大切な品に風を通す「虫干し」が行われ、奈良の正倉院では今も毎年秋に宝庫を開いて宝物を点検する「開封の儀」が行われています。江戸時代には庶民の間にも虫干しが広まり、商家では帳簿、武家では鎧兜や刀、寺院では経典に風を通しました。
梅干しの効能は、平安時代の医学書『医心方(いしんぼう)』にも記されており、古くから薬として重宝されてきました。梅の実を塩漬けにして天日に干す技法は、日本の高温多湿な気候に合った保存の知恵として各地に広がり、江戸時代には庶民の食卓にも梅干しが定着します。「梅はその日の難のがれ」という言い伝えとともに、夏の土用に梅を干す光景が日本各地で見られるようになりました。

土用干しと土用の丑の日

うなぎの蒲焼き
土用の丑の日にはうなぎを食べる風習も
土用は季節の変わり目を知らせる暦の節目であり、年に4回(春夏秋冬)あります。最もよく知られているのは夏の土用ですが、冬の土用(1月下旬頃)もあり、この時期に干し大根や切り干し大根を作る地域もあります。
夏の土用といえば「土用の丑の日」にうなぎを食べる風習が有名ですが、これは江戸時代の蘭学者・平賀源内が、夏場に売れないうなぎ屋のために「本日丑の日」という看板を出したのが始まりとされています。「う」のつく食べ物(うどん、梅干し、瓜など)を食べると夏バテしないという言い伝えもあります。

CHAPTER 05
土用干しに関するよくある質問

A.
夏の土用(2027年は7月20日〜8月7日)の期間に行います。梅雨明け後の晴天が3日以上続く時期が最適です。
A.
伝統的には「3日3晩」干します。1日目で表面の水分を飛ばし、2〜3日目で中まで乾燥させて保存性を高めます。
A.
虫干しは夏の土用のほか、寒の入り(1月)の「寒干し」、秋の「秋干し」と年3回行うのが伝統的です。
A.
天日干しをしない「梅漬け」として食べることは可能ですが、土用干しをすることで余分な水分が飛び保存性が格段に上がります。また日光に当てることで梅の色が鮮やかになり、果肉が柔らかくしっとりした食感に仕上がります。土用干しは梅干しの美味しさを決める最も重要な工程といえます。
A.
同じ「土用」の時期の風習ですが、直接の関係はありません。土用の丑の日にうなぎを食べるのは夏バテ防止が目的で、平賀源内が考案したとされるキャッチコピーがきっかけで広まりました。土用干しは保存・防虫が目的で、どちらも夏の暑さを利用・乗り越えるための先人の知恵です。
A.
土用は立春・立夏・立秋・立冬の前の約18日間を指す暦の雑節です。一般に「土用」というと夏の土用(立秋前の約18日間、7月下旬〜8月上旬)を指します。この時期が一年で最も暑く、丑の日にうなぎを食べる「土用の丑の日」もこの期間にあたります。
A.
3日間は目安であり、天候や仕上がりの好みによって調整して構いません。カリカリ梅が好みなら4〜5日間干し、しっとり柔らかい梅が好みなら2〜3日間で取り込みます。大切なのは晴天が続く日を選ぶことです。

CHAPTER 06
まとめ

土用干しは、夏の土用の強い日差しと風を活かして、梅干し・衣類・書籍を干す日本の伝統的な風習です。2027年の夏の土用は7月20日〜8月7日。梅干しは梅雨明け後の晴天が3日続く日を選んで三日三晩干し、着物や大切な衣類は日陰で風を通しましょう。子どもと一緒に梅仕事をすれば、食べ物ができるまでの過程を学ぶよい食育の機会になります。青梅を生で口にしないよう見守りながら、家族で夏の手仕事を楽しんでください。