土用干し(どようぼし)は、夏の土用(どよう)の時期(7月中旬〜8月上旬)に衣類・書籍・梅干しなどを天日に干す日本の伝統的な風習です。高温で湿度が下がる真夏の日差しを利用して、カビや虫を防ぎ、保存性を高める先人の暮らしの知恵が詰まっています。特に梅干しづくりでは欠かせない工程として、今も多くの家庭で実践されています。

CHAPTER 01由来と「土用」の意味
「土用」とは立春(りっしゅん)・立夏(りっか)・立秋(りっしゅう)・立冬(りっとう)の直前約18日間を指す雑節(ざっせつ)で、年に4回ありますが、一般に「土用」といえば夏の土用(立秋前の約18日間)を指します。2026年は7月19日〜8月6日頃がこれにあたります。
この時期は一年でもっとも日差しが強く、気温も高いため、殺菌・乾燥に最適な条件が揃います。古くから衣類や寝具、書物を日光に当てて湿気やカビ、害虫を払う風習が行われてきました。「虫干し」「曝書(ばくしょ)」とも呼ばれ、寺院や神社では経典や宝物を干す行事が今も続いています。
7月下旬〜8月上旬
夏の土用干しの時期
梅干し
代表的な干し物
3日3晩
伝統的な天日干し期間
「土用」は中国の五行思想(木・火・土・金・水)に由来する暦の概念です。春は「木」、夏は「火」、秋は「金」、冬は「水」にそれぞれ配当され、残った「土」が各季節の変わり目(約18日間)に割り当てられました。土用は年に4回(春・夏・秋・冬の各土用)ありますが、一般的に「土用」というと夏の土用(7月中旬〜8月上旬)を指すことがほとんどです。
土用干しが行われる夏の土用は、一年で最も日差しが強く湿度が高い時期です。この強い日差しを利用して梅干しを干したり、衣類や書籍を日光消毒したりするのが土用干しの本来の目的です。2026年の夏の土用は7月19日(日)〜8月6日(木)で、特に7月下旬の晴れた日が土用干しのベストタイミングです。
| 季節 | 期間 | 丑の日 |
|---|---|---|
| 冬の土用 | 1月17日〜2月3日 | 1月27日 |
| 春の土用 | 4月17日〜5月4日 | 4月25日 |
| 夏の土用 | 7月19日〜8月6日 | 7月21日・8月2日 |
| 秋の土用 | 10月20日〜11月6日 | 10月25日 |
CHAPTER 02土用干しの種類 — 何を干す?
土用干しで干すものは大きく分けて3つのカテゴリがあります。最も有名な「梅干しの天日干し」、衣類や着物を干す「虫干し」、そして書籍や掛け軸を日光にあてる「曝書(ばくしょ)」です。いずれも強い夏の日差しと乾燥した風を利用して、カビや害虫を防ぐ目的があります。
- 梅干しの土用干し
- 塩漬けした梅を3日間天日干しする。梅干し作りのハイライトで、色・味・保存性が決まる重要な工程
- 虫干し(衣類・着物)
- 着物や衣類を日陰で風に当て、湿気やカビ、虫食いを防ぐ。直射日光は色褪せの原因になるため陰干しが基本
- 曝書(書籍・掛け軸)
- 古い書籍や掛け軸を風に当てて湿気を飛ばす。図書館や寺院でも行われる伝統的な保存行為
- 田んぼの土用干し
- 水田の水を一時的に抜いて田んぼを乾かす。稲の根を強くし、収穫量を増やす重要な農業技術のひとつ
CHAPTER 03梅干しの干し方

- 011日目:ザルに並べて天日干し塩漬けした梅をザルに重ならないように並べ、朝から日当たりの良い場所で干します。日中は一度裏返して両面に日光を当て、夜は取り込みます。
- 022日目:裏返しながら干す同じように天日干しします。梅がくっつかないよう、午前中に一度ザルから離してから戻すと均一に乾きます。
- 033日目:仕上げの干し3日目はそのまま夜露に当てる方法と、夕方に取り込む方法があります。夜露に当てると柔らかく仕上がりますが、急な雨に注意が必要です。3日間の天日干しが終わったら、梅酢に戻すか、そのまま保存容器に入れます。
土用干しのポイントは天気の良い3日間を選ぶことです。梅雨明け直後の晴天が続く時期が理想で、天気予報をチェックして3日間連続で晴れる日を狙いましょう。万が一途中で雨に降られてしまった場合は、すぐに室内に取り込み、晴れた日に改めて干し直せば問題ありません。
CAUTION
土用干し中の突然の雨には要注意です。特に梅干しは雨に濡れるとカビの原因になります。外出中に雨が降る可能性がある場合は、室内の日当たりの良い窓辺で干すか、短時間だけ外に出して目を離さないようにしましょう。天気予報アプリの雨雲レーダーをこまめにチェックするのがおすすめです。ベランダに洗濯物カバー(雨よけシート)を用意しておくと、急な雨でも安心です。
この風習でもっとも身近なのが梅干しづくりです。6月頃に塩漬けした梅を、夏の土用に入ったら三日三晩天日に干します。- 1日目:梅を竹ざるや干し網に並べ、朝から夕方まで日光に当てる。夜は室内に取り込む
- 2日目:同様に干す。途中で裏返して均一に乾燥させる
- 3日目:最終日は夜露に当てると皮がしっとり仕上がるとされる
「三日三晩」が基本ですが、天候次第で日数を調整します。曇りや雨の日は取り込み、晴れた日に改めて干し直しましょう。赤紫蘇を一緒に干すと、鮮やかな赤色の梅干しに仕上がります。干し上がった梅は保存瓶に入れ、冷暗所で保管すれば数年間は美味しくいただけます。
TIP / 梅干し作りのコツ
土用干しは梅雨明け後の晴天が3日以上続く時期を選びましょう。朝から夕方まで天日に干し、夜は室内に取り込みます。3日間干すと皮が柔らかくなり、色も鮮やかになります。赤紫蘇と一緒に干すときれいな赤色に仕上がります。
CHAPTER 04衣類・書籍の虫干し
衣類や書籍の虫干しも、この時期に行うと効果的です。着物や礼服などを風通しの良い日陰に半日ほど広げて、湿気を飛ばします。直射日光に長時間当てると色褪せの原因になるため、衣類は日陰干しが基本です。 ウール製品は特に虫食いに注意が必要で、防虫剤と一緒にたたんで保管するのがおすすめです。
着物の虫干しでは、着物を衣紋掛け(えもんかけ)にかけて日陰で風通しの良い場所に吊るすのが基本です。直射日光に当てると生地が色褪せたり傷んだりするため、必ず日陰で行います。2〜3時間程度風に当てたら、シミや虫食いがないか丁寧にチェックします。この機会に防虫剤の交換やたとう紙の取り替えも一緒に行うと効率的です。
古い書籍や掛け軸の曝書(ばくしょ)は、日光に直接当てず風に当てるのが原則です。ページを開いた状態で扇風機の微風を当てるか、風通しの良い部屋で広げておくだけで十分です。お寺や美術館では毎年土用の時期に「虫払い」として所蔵品の点検と曝書を行っており、一般公開されることもあります。
書籍は背表紙を上にして扇形に開き、風を通します。博物館や図書館では「曝涼(ばくりょう)」と呼ばれる所蔵品の虫干し行事が毎年行われ、普段は見られない貴重な資料が一般公開されることもあります。正倉院の宝物を点検する「開封の儀」も、このような虫干しの伝統に連なるものです。

パ
新米パパ / 2歳児のパパ
虫干しって最近はあまり聞きませんが、今でもやった方がいいんですか?
博
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
現代でも湿気対策は大切です。特に着物や大切な書籍は、年に1〜2回風を通すとカビや虫食いを防げます。土用の時期は気温が高く湿度も下がるので、虫干しに最適なんですよ。
CHAPTER 05現代の暮らしへの活かし方
エアコンや除湿機が普及した現代でも、天日干しの効果は侮れません。布団や枕を干せばダニ対策になり、クローゼットを開け放って風を通すだけでもカビの予防に役立ちます。
現代の住宅事情では、密閉性の高いマンションや戸建てが多く、昔ながらの風通しの良い日本家屋に比べて湿気がこもりやすい環境です。そのため、土用干しの考え方はむしろ現代の暮らしにこそ必要だといえます。エアコンのフィルター掃除、布団の天日干し、クローゼットの換気、キッチンの除湿。これらを「土用の時期にまとめてやる」と決めておけば、季節のリズムに沿った合理的な家事習慣になります。
梅干し作りは近年、手仕事ブームの影響で若い世代にも人気が広がっています。SNSで「今年も梅仕事始めました」と投稿する人が増え、梅干し作りキットやオンラインワークショップも充実しています。子どもと一緒に梅を漬けて土用干しまでの過程を体験することは、食育の観点からも意義深いものです。スーパーで購入する梅干しとは一味違う、自分で作った梅干しの味は格別です。
パ
新米パパ
土用干しって梅干しだけかと思っていました。マンションでもできることはありますか?
博
カゾイロ博士
マンションでも十分できますよ。ベランダで梅干しを干すのはもちろん、クローゼットの扉を開けて風を通すだけでも虫干しの効果があります。除湿剤の交換や防虫シートの見直しも、この時期にまとめてやると効率的です。「夏の大掃除」として土用干しを取り入れると、季節の節目を意識する良い習慣になりますよ。
梅干しづくりは近年「梅仕事」として若い世代にも人気が高まっており、SNSで手作り梅干しの写真を共有する方も増えています。真夏の強い日差しを暮らしに活かすこの風習は、日本の気候と上手に付き合う知恵として、これからも受け継いでいきたい文化です。土用干しをきっかけにクローゼットや押し入れの整理を行えば、夏の大掃除にもなります。梅仕事で手作りの梅干しを仕込み、衣類や寝具を天日で清潔にする――真夏ならではのこの習慣は、四季のある日本の気候を最大限に活かした暮らしの知恵といえるでしょう。土用干しの習慣を毎年の恒例行事にすれば、季節の移ろいを実感しながら家の中を清潔に保つことができます。夏の太陽の恵みを存分に活用して、心地よい暮らしを送りましょう。真夏の強い日差しは、先人が見出した最高の天然消毒剤です。
CAUTION / 干す際の注意点
梅干しの土用干しは、急な雨に注意が必要です。天気予報を確認し、すぐに取り込めるようにしておきましょう。また、直射日光に長時間当てすぎると色が変わることがあるため、西日は避けるのが無難です。
CHAPTER 06土用干しの歴史と文化的背景
土用干しは、日本の気候と密接に結びついた古くからの知恵です。梅雨明けの土用の時期(7月下旬〜8月上旬)は一年で最も日差しが強く、湿度も高い時期です。この気候条件を利用して、食品の保存性を高め、衣類や書物を虫やカビから守る「土用干し」の風習が生まれました。
平安時代にはすでに宮中で「虫干し」が行われていた記録があり、正倉院の宝物も毎年この時期に虫干しされていました。江戸時代には庶民の間にも広まり、商家では帳簿の虫干し、武家では鎧兜や刀の手入れ、寺院では経典の虫干しが行われていました。
書物によれば、梅干しの土用干しは奈良時代にはすでに行われていたとされ、平安貴族の間では梅を「花の兄」と称して愛でる文化がありました。梅の実を塩漬けにして天日に干す技法は、もともと中国から伝わった保存食の知恵であり、日本の高温多湿な気候に適応する形で独自に発展しました。江戸時代には庶民の間にも梅干し文化が広がり、「梅はその日の難のがれ」という言い伝えとともに、夏の土用に梅を干す光景が日本各地で見られるようになりました。
衣類や書物の土用干しについても、正倉院の宝物を曝涼(ばくりょう)する行事が奈良時代から続いていることが知られています。虫干しは単なる実用行為ではなく、大切なものを守り伝えるという精神文化の表れでもありました。梅干し・衣類・書物のいずれにおいても、土用干しは日本人が自然の恵みを活かして暮らしの質を高めてきた知恵の象徴といえるでしょう。
CHAPTER 07梅干しの土用干し
土用干しの基本手順
梅干しの土用干しは、6月に塩漬けした梅を、梅雨明け後の3日間晴天の日に天日干しする作業です。ざるや干し網に梅を重ならないように並べ、朝から夕方まで太陽の光に当てます。夜は梅酢に戻すか、夜露に当てるかの2つの方法があります。
夜露に当てる方法は、梅の皮を柔らかくする効果があるとされています。3日目の夜まで外に出しておき、最終的にしっとりとした仕上がりを目指します。ただし、にわか雨の心配がある場合は室内に取り込んでおくのが安全です。
CAUTION / 土用干しの注意点
土用干しは晴天が3日間以上続く時期に行いましょう。途中で雨に濡れるとカビの原因になります。天気予報を確認し、確実に晴れが続く日を選んでスタートしてください。万が一雨に濡れた場合は、焼酎でさっと洗って再度干し直します。
土用干しのポイント
土用干しを成功させるポイントは、「日当たり」「風通し」「裏返し」の3つです。直射日光がしっかり当たる場所に干し、風通しが良いと乾燥が均一に進みます。1日に1〜2回梅を裏返すことで、まんべんなく日光を当てましょう。
干し加減の目安は、梅の表面が乾いてしわが寄り、指で押すと弾力がある状態です。干しすぎるとカチカチになり、干し足りないとカビが生えやすくなります。初めての方は3日間を目安に、好みの固さになるまで調整してください。
衣類の土用干し(虫干し)
衣類の土用干しは、着物やウール製品などの大切な衣類をカビや虫から守るための作業です。梅雨の間に吸収した湿気を飛ばし、防虫剤を入れ替えることで、秋冬の衣替えまで良い状態で保管できます。
虫干しの手順は簡単です。晴天で湿度の低い日(10〜14時がベスト)に、衣類をハンガーにかけて風通しの良い日陰に吊るします。直射日光は色褪せの原因になるため、必ず日陰で干してください。2〜3時間干したら取り込み、新しい防虫剤と一緒に収納します。
パ
新米パパ
マンションで虫干しするスペースがないんですが…
博
カゾイロ博士
マンションの場合は、窓を開けて風を通すだけでも効果があります。エアコンの除湿モードや除湿機を活用するのも効果的です。クローゼットの扉を開けて扇風機の風を当てるだけでも、湿気の放出につながります。防虫剤と除湿剤をこまめに交換するのも大切ですよ。
書物・写真の土用干し
古い本や写真アルバム、掛け軸なども土用干しの対象です。紙はカビの大敵なので、年に一度は風を通しておくことが大切です。本は表紙を開いた状態でパラパラとページをめくり、風を通します。掛け軸は吊るして広げた状態で2〜3時間風に当てます。
写真アルバムは直射日光に当てると写真が劣化するため、日陰で風を通すだけにとどめましょう。デジタルカメラが普及した現代でも、紙焼きの写真には独特の温かみがあります。大切な思い出を長く残すために、年に一度の虫干しを心がけてください。
現代の暮らしと土用干し
エアコンや除湿機が普及した現代では、土用干しを行うご家庭は減少傾向にあります。しかし、機械に頼りきりにならず、自然の力を借りてものを大切に扱う「土用干し」の精神は、サステナブルな暮らしに通じるものがあります。
梅干し作りを通じた土用干しは、食育としても優れています。お子さまと一緒に梅を塩漬けし、土用干しを行い、完成した梅干しを食べる。この一連の体験は、食べ物が手元に届くまでの過程を学ぶ貴重な機会になります。
土用干しは、日本の夏の風物詩のひとつです。ざるに並んだ梅干しが太陽の光を浴びて赤く輝く光景、洗い立ての着物が風にそよぐ光景は、日本の夏ならではの美しさです。今年の土用は、ぜひ昔ながらの知恵を暮らしに取り入れてみてください。
CHAPTER 08土用干しの効果と科学
土用干しには科学的な根拠があります。梅干しの場合、天日干しによって水分が蒸発し、塩分濃度が高まることで保存性が飛躍的に向上します。また、紫外線による殺菌効果もあり、カビや雑菌の繁殖を抑制する効果が期待できます。
衣類の虫干しについても、紫外線にはダニや害虫の卵を死滅させる効果があることが知られています。さらに、風を通すことで湿気を飛ばし、カビの発生を予防します。現代の防虫剤や除湿剤では完全に代替できない、自然の力を活用した合理的な方法なのです。
季節ごとの虫干し
虫干しは土用の時期だけでなく、年に3回行うのが理想的です。寒干し(かんぼし)は1月〜2月の乾燥した時期に行う冬の虫干しで、湿度が低いため衣類や書物の乾燥に最適です。曝書(ばくしょ)は秋の彼岸(9月頃)に行う虫干しで、夏の湿気で傷んだ書物や掛け軸の手入れに適しています。
3回すべて行うのが難しい場合は、梅雨明けの土用干しだけでも行いましょう。一年で最も湿気がたまるこの時期に一度風を通すだけで、大切なものの寿命が大きく変わります。
土用干しは、日本人が自然と共生してきた知恵の結晶です。現代のテクノロジーでは代替できない、太陽と風の力を借りた伝統的な暮らしの技術。その精神は、持続可能な社会を目指す現代にこそ、見直されるべき価値があるのではないでしょうか。
今年の土用は、梅干し作りに挑戦してみませんか?太陽の恵みをたっぷり受けた手作りの梅干しは、格別の味わいです。家族の健康を守り、日本の食文化を次の世代に伝える。土用干しには、そんな大きな意味が込められています。
梅干しの健康効果
土用干しで仕上げた梅干しには、さまざまな健康効果があるとされています。クエン酸による疲労回復効果は科学的にも認められており、夏バテ防止の定番食材として昔から親しまれてきました。また、梅干しに含まれる有機酸には殺菌作用があり、お弁当に入れると食中毒予防に効果的です。
梅干しには食欲増進効果もあり、暑さで食欲が落ちる夏場に特に重宝されます。梅干し一粒でごはんが進む経験は、多くの日本人に共通するものでしょう。おにぎりの具として、お茶漬けのお供として、日本の食卓に欠かせない存在です。
初めての梅干し作り
梅干し作りは、塩漬け(6月)→ 赤しそ漬け(6月下旬〜7月)→ 土用干し(7月下旬〜8月)→ 保存という流れで約2か月かかります。初めての方には塩分濃度18%以上のレシピがおすすめです。塩分が高いほどカビが生えにくく、失敗しにくいからです。
必要な材料は、完熟梅(黄色く熟したもの)、粗塩(梅の重さの18〜20%)、赤しそ(お好みで)、焼酎(消毒用)だけです。容器はホーロー製の漬物容器かガラス瓶が適しています。プラスチック容器は酸に弱いため避けましょう。
パ
新米パパ
子どもと一緒に梅干し作りに挑戦したいのですが、何歳くらいからできますか?
博
カゾイロ博士
梅を洗ったりヘタを取ったりする作業は3〜4歳から手伝えます。塩を揉み込む工程は5歳くらいから。土用干しで梅を裏返す作業は小学生なら一人でできますよ。自分で作った梅干しは特別な味がするもの。食育としてもおすすめです!
手作り梅干しは、完成までに時間と手間がかかりますが、その分だけ愛着がわく食品です。家族で作った梅干しを食卓に出すとき、「今年も上手にできたね」と笑い合う。そんな何気ない会話が、家族の大切な思い出になっていきます。
土用干しは「手間をかけて、ものを大切にする」という日本人の美徳を体現した風習です。大量生産・大量消費の時代にあって、太陽と風の力を借りて食品を保存し、衣類を守り、書物を次の世代に伝える。この知恵は、サステナブルな暮らしそのものです。
土用干しの梅干しを口にすると、太陽の恵みがぎゅっと凝縮された滋味深い味わいが広がります。この味は機械では再現できない、自然と人の共同作業による特別な味です。
CHAPTER 09土用干しと年中行事
土用は季節の変わり目を知らせる暦の節目であり、年に4回(春夏秋冬)あります。最もよく知られているのは夏の土用ですが、冬の土用(1月下旬頃)もあり、この時期に干し大根や切り干し大根を作る地域もあります。
夏の土用といえば「土用の丑の日」にうなぎを食べる風習が有名ですが、これは江戸時代の蘭学者・平賀源内が、夏場に売れないうなぎ屋のために「本日丑の日」という看板を出したのが始まりとされています。「う」のつく食べ物(うどん、梅干し、瓜など)を食べると夏バテしないという言い伝えもあります。
土用干しを通じて、日本の気候風土と先人の知恵に触れる。それは、私たちの暮らしが自然とどれほど密接につながっているかを実感する貴重な体験です。今年の土用は、ぜひ家族で梅干し作りや虫干しに挑戦してみてください。
土用干しの光景は、日本の夏を象徴する風景のひとつです。ざるに並んだ梅が陽光を浴びて赤く染まっていく様、軒先に吊るされた着物がそよ風に揺れる様。どちらも日本の四季と暮らしが美しく調和した瞬間です。
現代の生活では土用干しを知らない世代も増えていますが、この知恵を次の世代に伝えていくことは日本の食文化・衣文化を守ることにつながります。おばあちゃんに梅干しの漬け方を教わった思い出が、お子さまの代にも引き継がれていく。そんな温かな文化の連鎖を、土用干しを通じて体験してみてください。
太陽の恵み、風の力、時間の魔法。自然の力を借りて暮らしを豊かにする土用干しは、先人から受け継いだ知恵の結晶です。今年の夏、ぜひ土用干しに挑戦して、日本の伝統的な暮らしの知恵を体感してみてください。
土用干しの梅干しには、作り手の愛情と太陽の恵みが凝縮されています。スーパーで買う梅干しとは一味違う、手間暇かけた自家製の味。一度その美味しさを知ったら、毎年の梅干し作りがやめられなくなることでしょう。
日本の夏は蒸し暑く、食品の保存が難しい季節です。だからこそ先人たちは、太陽と塩の力を借りて食べ物を守る知恵を編み出しました。土用干しは、自然と共生する日本人の知恵と工夫の象徴です。
梅雨明けの青空の下、ざるいっぱいの梅を干す。その光景を見るだけで、日本の夏が来たことを実感します。ぜひ今年の土用は、この日本ならではの伝統を体験してみてください。
土用干しの季節は、一年で最も太陽が輝く季節でもあります。その太陽の力を暮らしに活かす知恵を、先人たちは何百年もかけて磨き上げてきました。エアコンや冷蔵庫がなかった時代、自然の力だけで食品を保存し、衣類を守り、書物を後世に伝えてきた日本人の知恵に、改めて敬意を表したいと思います。
土用干しは、目に見えない先人の知恵と、目に見える太陽の光が交差する場所です。ざるに並んだ梅干しが日光を浴びて輝く光景は、日本の夏の原風景として、いつまでも大切にしたい風景です。
土用干しに適した天候と判断基準
土用干しに最適なのは、湿度が低く日差しが強い晴天の日です。理想的な条件は気温30度以上、湿度50%以下、風が適度にある日。天気予報で「洗濯日和」と表示される日は土用干しにも最適です。梅雨明け直後は空気中の水分が多いため、梅雨明けから3〜4日経ってから始めるのがベストです。
朝露が乾く午前9時頃から干し始め、午後3時頃には取り込むのが基本です。夜露に当てると梅が柔らかくなるという伝統的な方法もありますが、虫や急な雨のリスクがあるため初心者は室内に取り込むほうが安全です。曇りの日や雨の日は無理に干さず、天候の回復を待ちましょう。
梅雨が明けた青空の下、一面に広がる梅の赤い色は夏の訪れを告げる美しい光景です。土用干しは手間と時間がかかりますが、完成した梅干しを食べた瞬間にその苦労がすべて報われます。
CHAPTER 10土用干しに関するよくある質問
A.
夏の土用(7月19日頃〜8月6日頃)の期間に行います。梅雨明け後の晴天が3日以上続く時期が最適です。
A.
伝統的には「3日3晩」干します。1日目で表面の水分を飛ばし、2〜3日目で中まで乾燥させて保存性を高めます。
A.
虫干しは夏の土用のほか、寒の入り(1月)の「寒干し」、秋の「秋干し」と年3回行うのが伝統的です。
A.
天日干しをしない「梅漬け」として食べることは可能ですが、土用干しをすることで余分な水分が飛び保存性が格段に上がります。また日光に当てることで梅の色が鮮やかになり、果肉が柔らかくしっとりした食感に仕上がります。土用干しは梅干しの美味しさを決める最も重要な工程といえます。
A.
同じ「土用」の時期の風習ですが、直接の関係はありません。土用の丑の日にうなぎを食べるのは夏バテ防止が目的で、平賀源内が考案したとされるキャッチコピーがきっかけで広まりました。土用干しは保存・防虫が目的で、どちらも夏の暑さを利用・乗り越えるための先人の知恵です。
A.
土用は立春・立夏・立秋・立冬の前の約18日間を指す暦の雑節です。一般に「土用」というと夏の土用(立秋前の約18日間、7月下旬〜8月上旬)を指します。この時期が一年で最も暑く、丑の日にうなぎを食べる「土用の丑の日」もこの期間にあたります。
A.
3日間は目安であり、天候や仕上がりの好みによって調整して構いません。カリカリ梅が好みなら4〜5日間干し、しっとり柔らかい梅が好みなら2〜3日間で取り込みます。大切なのは晴天が続く日を選ぶことです。
CHAPTER 11まとめ
土用干しは、日本人が長い歴史の中で培ってきた「夏の暑さを味方にする知恵」です。強い日差しを利用して梅干しを完成させ、湿気と虫から衣類や書籍を守る。現代のテクノロジーでは乾燥機や除湿機がその役割を担っていますが、太陽の力を借りた自然な方法には、機械では得られない効果と味わいがあります。
土用干しは、夏の土用の強い日差しを活かして梅干し・衣類・書籍を天日に干す日本の伝統的な風習です。梅干しの「三日三晩」や衣類の虫干しなど、先人の暮らしの知恵は現代の生活にも十分活かせます。真夏の太陽の力を借りて、保存食づくりや衣替えの仕上げに取り組んでみましょう。 今年の夏は、ぜひ太陽の恵みを借りた土用干しを暮らしに取り入れて、日本の季節の知恵を体感してみてください。

