一年に一度、天の川をはさんだ織姫(おりひめ)と彦星(ひこぼし)が会えるとされる七夕。子どもに「雨が降ったら織姫と彦星は会えないの?」と聞かれて、答えに迷った経験はありませんか。実は、七夕が雨でも二人は会えるとする言い伝えが各地に伝わっています。この記事では七夕の雨にまつわる言い伝えから、気象庁のデータに基づく過去の天気実績、七夕伝説の三つの源流、そして雨の日の過ごし方まで幅広く解説します。

CHAPTER 01
七夕が雨だと織姫と彦星は会えない?

結論からいうと、七夕が雨でも織姫と彦星は会えるとする言い伝えが多く伝わっています。「雨が降ると会えない」という説もありますが、実際には地域ごとにさまざまな解釈があり、必ずしも会えないとは限りません。
たとえば「雨が降っても鵲(カササギ)が翼を広げて橋をかけ、二人を会わせてくれる」という言い伝えがあります。また「七夕の雨は二人が流すうれし涙」とする見方もあります。雨だからとがっかりする必要はない、というのが昔からの考え方です。
七夕の雨には、「催涙雨(さいるいう)」や「洒涙雨(さいるいう)」という美しい呼び名があります。これは会えなかった織姫と彦星が流す涙の雨とされる一方、再会の喜びの涙とする説もあり、解釈は一つではありません。
水たまりに広がる雨の波紋
七夕の雨は「催涙雨」と呼ばれ、織姫と彦星の涙にたとえられてきました
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
子どもに『雨だと織姫と彦星は会えないの?』と聞かれて困ってしまいました。なんて答えればいいですか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
『雨でもカササギが橋をかけてくれるから、二人はちゃんと会えるんだよ』と伝えてあげるとよいですよ。七夕の雨は再会のうれし涙という言い伝えもあります。雨でも夢のある話として聞かせてあげれば、子どももきっと安心しますね。

CHAPTER 02
七夕の雨にはこんな呼び名がある

七夕の雨には、二人の物語にちなんだ風流な呼び名がつけられています。雨の降るタイミングによって呼び名が変わるのも面白いところです。
催涙雨(さいるいう)
七夕当日(7月7日)に降る雨。会えなかった二人が流す悲しみの涙とも、再会の喜びの涙ともいわれる
洒涙雨(さいるいう)
催涙雨と同義で、涙を注ぐ雨の意。「洒」は涙をそそぐという意味を持つ
洗車雨(せんしゃう)
七夕前日(7月6日)の雨。彦星が織姫を迎えるための牛車を洗う水とされる
酒涙雨(さいるいう)
催涙雨と同じく、二人の涙にたとえた七夕の雨の呼び名
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INFO / 雨にも物語が込められている
七夕の雨を悲しいものと決めつけず、二人の涙や再会の準備にたとえて風流に楽しむのが日本らしい感性です。雨の呼び名を知っておくと、七夕の夜がより味わい深いものになります。

CHAPTER 03
七夕伝説の三つの源流

七夕の雨にまつわる言い伝えを深く理解するために、七夕伝説の成り立ちを知っておきましょう。七夕は三つの異なる行事・伝説が融合して生まれた、奥の深い伝統行事です。
  1. 棚機(たなばた) ― 日本古来の神事。選ばれた乙女(棚機女(たなばたつめ))が着物を織って棚に供え、神様を迎えて秋の豊作を祈った行事。仏教伝来後、7月7日の夜に行われるようになった
  2. 織女と牽牛(けんぎゅう)の伝説 ― 中国で生まれた物語。琴座(ことざ)のベガ(織女星)と鷲座(わしざ)のアルタイル(牽牛星)が旧暦7月7日に天の川をはさんで最も輝いて見えることから、一年一度の再会の物語が生まれた
  3. 乞巧奠(きこうでん) ― 中国の宮廷行事。7月7日に織女星にあやかって機織(はたお)りや裁縫の上達を祈る風習。日本に伝わり、和歌や書道の上達祈願へと発展した
これら三つが奈良時代に融合し、宮中行事として定着。江戸時代に五節句(ごせっく)の一つに定められたことで庶民にも広まり、現在の七夕の形になりました。笹に短冊を飾る風習は江戸時代の日本独自の文化で、もともとは梶(かじ)の葉に歌を書いて手向けていたものが、紙の短冊に置き換わったものです。
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INFO / 笹に飾る理由
笹や竹は冬でも緑を保ち、まっすぐ育つ生命力にあふれた植物として神聖視されてきました。天に向かってまっすぐ伸びる笹に願いを託すことで、その願いが天に届くと考えられていたのです。

CHAPTER 04
七夕に雨が多いのはなぜ?

「七夕はいつも天気が悪い」と感じる方は多いはずです。これは、7月7日が梅雨の真っ最中にあたるためです。気象的にこの時期は雨や曇りの日が多く、天の川がきれいに見える年はそう多くありません。
実は、もともと七夕は旧暦の7月7日に行われていました。旧暦では現在の8月上旬ごろにあたり、梅雨が明けて晴れやすく、月明かりも程よい時期でした。仙台七夕まつりなどが8月に開催されるのは、この旧暦の名残です。天の川を見たいなら、月遅れの8月7日前後や、旧暦の7月7日にあたる「伝統的七夕」(2027年は8月8日(日))を狙うのもおすすめです。
七夕の雨粒の窓
新暦の7月7日は梅雨の真っ最中。天の川が見られる確率は約23%にとどまります

過去の七夕は実際に雨だった?気象データで検証

気象庁の統計データ(1991〜2020年の30年間平均)によると、東京における7月7日の天気出現率は以下のとおりです。
23.3%
晴れ
40.0%
曇り
36.7%
雨
曇りと雨を合わせると約77%で、4回に3回は星空を望めない計算です。さらに長期の調査(1961〜2016年の56年間)では、夕方15時以降に晴れたのは56年中わずか17回。曇りが26回、雨が13回でした。

東京・7月7日の天気(2009〜2018年)

気象庁のデータをもとに、実際の過去10年間の七夕の夜(18時〜24時)の天気を振り返ってみましょう。
年18時〜24時の天気天の川
2009年薄曇→曇×
2010年曇→雨×
2011年曇×
2012年雨→曇×
2013年雷→晴△
2014年曇→雨×
2015年曇×
2016年晴→曇△
2017年晴→快晴◎
2018年曇→薄曇×
10年間で夜に「晴」の記録があるのは2013年・2016年・2017年のわずか3回。天の川がしっかり見えたと言えるのは2017年の「快晴」のみです。やはり新暦の7月7日に星空を期待するのは難しいことがデータからもわかります。
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TIP / 天の川を見るなら旧暦七夕(8月)がおすすめ
旧暦の7月7日(新暦の8月上旬ごろ)は梅雨明け後にあたり、新暦の7月7日より晴れやすい時期です。仙台七夕まつり(8月6〜8日)など、月遅れで開催される七夕祭りもあります。星空を楽しみたい家庭は、8月の七夕も候補に入れてみましょう。
水面に弾ける雨粒
七夕の前日に降る雨は「洗車雨」。彦星が織姫を迎えるために牛車を洗う水だといわれます

CHAPTER 05
雨の七夕でも楽しめる過ごし方

当日が雨でも、七夕の楽しみ方はたくさんあります。室内でできるアイデアを取り入れて、家族で季節を味わいましょう。
  • 短冊に願い事を書いて笹に飾る ― 室内でも十分楽しめる。五色(緑・赤・黄・白・黒)の短冊はそれぞれ中国の五行思想に由来
  • 七夕飾りを手作りする ― 折り紙で天の川・吹き流し・巾着(きんちゃく)・網飾(あみかざ)りをつくる
  • 七夕の行事食であるそうめんを食べる ― そうめんを天の川に見立てて盛りつけると子どもも喜ぶ
  • 織姫と彦星の物語を絵本で読み聞かせる ― 雨の理由を「催涙雨」として教えてあげると豆知識にも
  • プラネタリウムや科学館で星空を楽しむ ― 七夕シーズンは特別投影を実施する施設も多い
雨夜に結ぶ七夕の願い
雨の七夕もまた風情あるもの。短冊に願いを込めて、静かな夜を家族で楽しみましょう
短冊の願い事の書き方や五色の意味は七夕の短冊の書き方の記事、七夕飾りの意味は七夕飾りの意味と種類の記事でくわしく紹介しています。そうめんを食べる理由は七夕の食べ物の記事をご覧ください。

CHAPTER 06
七夕の雨に関するよくある質問

A.
雨でも会えるとする言い伝えが多くあります。「カササギが橋をかけて二人を会わせてくれる」「七夕の雨は再会のうれし涙」などの説があり、雨だから会えないと決まっているわけではありません。
A.
当日の雨は催涙雨(さいるいう)、前日の雨は彦星が牛車を洗う洗車雨(せんしゃう)と呼ばれます。いずれも織姫と彦星の物語にちなんだ風流な呼び名です。
A.
新暦の7月7日が梅雨の時期と重なるためです。気象庁の統計では東京の7月7日の晴天率は約23%。もともと七夕は旧暦(現在の8月上旬ごろ)に行われ、梅雨明けで晴れやすい時期でした。
A.
東京では2009〜2018年の10年間で、夜に晴れたのは2013年・2016年・2017年の3回のみです。56年間の長期統計でも、晴れたのは17回(約30%)にとどまります。
A.
日本古来の棚機(たなばた)の神事、中国の織女と牽牛の伝説、そして裁縫の上達を祈る乞巧奠(きこうでん)の三つが奈良時代に融合して生まれました。
A.
笹は冬でも緑を保ち、天に向かってまっすぐ伸びる神聖な植物とされてきました。もともとは梶の葉に歌を書いていましたが、江戸時代に紙の短冊に置き換わり、笹に飾る風習が庶民に広まりました。
A.
短冊に願い事を書く、七夕飾りを手作りする、そうめんを食べる、絵本で物語を読むなど室内でも楽しめる過ごし方がたくさんあります。星空を見たいときはプラネタリウムもおすすめです。

CHAPTER 07
まとめ

七夕が雨でも、織姫と彦星は会えるとする言い伝えが各地に残っています。カササギが橋をかけてくれる、雨は再会のうれし涙など、雨を悲しいものと決めつけない風流な感性が日本にはあります。子どもに聞かれたら、夢のある話として伝えてあげましょう。
気象庁のデータによると、東京の7月7日は約77%の確率で曇りか雨。56年間で夕方に晴れたのはわずか17回です。梅雨明け後の8月上旬なら晴れやすくなるので、天の川を見たいなら月遅れの七夕もおすすめです。当日が雨でも、短冊・飾り・そうめんなど室内で楽しめる過ごし方はたくさんあります。七夕の由来は七夕とは?もあわせてどうぞ。