新嘗祭(にいなめさい)は、天皇がその年の新穀を神々に供え、自らも食する宮中祭祀で、毎年11月23日に行われます(2026年は月曜日、2027年は火曜日)。収穫への感謝を捧げるこの儀式は、祝日「勤労感謝の日」の原型としても知られています。この記事では、新嘗祭の意味と由来、なぜ11月23日なのか、儀式の内容と大嘗祭との違い、全国の神社の行事と家庭での楽しみ方を解説します。
CHAPTER 01新嘗祭とは?意味と由来
新嘗祭は、毎年11月23日に宮中で行われる収穫感謝の祭祀です。「新」は新穀、「嘗」は食べる・味わうを意味し、その年に初めて収穫された稲穂を天照大神をはじめとする神々に供え、天皇自らも召し上がるという儀式です。

この祭祀の起源は非常に古く、『古事記』や『日本書紀』にも記述が見られ、確かな記録としては『日本書紀』の皇極天皇元年(642年)の条が知られています。稲作を基盤とする日本の文化において新穀の収穫は最も重要な行事であり、天皇が国民を代表して神々に感謝を捧げてきました。現在は皇居の宮中三殿に付属する神嘉殿(しんかでん)で、天皇陛下が夕方から深夜にかけて儀式を執り行います。
新嘗祭は、応仁の乱以降の戦乱の時代に一時途絶え、江戸時代になって再興されました。かつては旧暦11月の2回目の卯(う)の日に行われていましたが、明治6年(1873年)に太陽暦が採用された年に新暦11月の2回目の卯の日である11月23日に行われ、以後この日に固定されています。
11月23日
新嘗祭の日付
飛鳥時代
記録に残る最古の時代
五穀豊穣
収穫への感謝
CHAPTER 02新嘗祭の儀式の内容

宮中で行われる儀式は、夕(よい)の儀と暁(あかつき)の儀の二部構成です。
夕の儀(午後6時頃〜)
天皇は夕刻に身を清めて神嘉殿に入り、新穀の米や粟で作った御饌(みけ)と、白酒(しろき)・黒酒(くろき)と呼ばれる神酒を天照大神をはじめとする神々に供えます。そして天皇自らも同じものを召し上がる「神人共食(しんじんきょうしょく)」によって、収穫の恵みに感謝します。
暁の儀(午後11時頃〜)
深夜に再び同様の儀式が行われます。夕と暁の二度にわたって行うことから、宮中祭祀のなかでも特に重い祭りとされ、天皇陛下は長時間にわたって儀式に臨まれます。
かつては新嘗祭の翌日に「豊明節会(とよのあかりのせちえ)」が開かれ、紫宸殿で舞楽が披露されたり、白酒・黒酒が振る舞われたりする華やかな宴が催されました。
大嘗祭との違い
新嘗祭は毎年行われますが、天皇が即位後に初めて行うものは「大嘗祭(だいじょうさい)」と呼ばれ、一代に一度の重要な皇室行事です。大嘗祭では「悠紀(ゆき)」「主基(すき)」として選ばれた二つの地方の新米が供えられ、通常の年よりも大規模に執り行われます。令和の大嘗祭は2019年11月14日〜15日に行われました。
CHAPTER 03勤労感謝の日との関係
11月23日が「勤労感謝の日」として祝日に定められたのは、1948年の祝日法によるものです。戦前までは11月23日はこの宮中祭祀の日として祝日でしたが、戦後のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の方針により宗教色の薄い名称に改められました。
勤労感謝の日の趣旨は「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」とされていますが、そのルーツにはこの宮中祭祀の収穫への感謝という精神が息づいています。現在も宮中では11月23日に祭祀が変わらず行われており、日本の伝統と現代の祝日が共存している形です。
新米パパ / 2歳児のパパ
11月23日って勤労感謝の日ですよね?新嘗祭と関係があるんですか?
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
はい、深い関係があります。戦前まで11月23日は「新嘗祭」という祝日でしたが、1948年に「勤労感謝の日」に改称されました。収穫の感謝から、勤労全般への感謝へと意味が広がったのです。
CHAPTER 04全国の新嘗祭と家庭での楽しみ方
宮中以外でも、11月23日前後には全国の神社で収穫感謝の祭りが行われます。
- 伊勢神宮:内宮・外宮で「大御饌(おおみけ)の儀」が行われる
- 出雲大社:「古伝新嘗祭」として独自の祭祀を執り行う
- 各地の神社:氏子が新米を奉納し、五穀豊穣に感謝する祭りが行われる
戦後、新嘗祭の日が「勤労感謝の日」として国民の祝日に再編されたことで、この祭祀は一般にはあまり意識されなくなりました。それでも全国の神社では11月23日前後に新嘗祭や新穀感謝祭が営まれ、氏子が新米を奉納する風景が各地で見られます。

稲魂と米の霊力
新嘗祭の根底には、稲には「稲魂(いなだま)」と呼ばれる霊力が宿るという古来の信仰があります。米は単なる食材ではなく、神と人とをつなぐ特別な存在でした。神事で米や餅を供えるのは、その霊力を神と人が分かち合うためとされています。
新嘗祭は宮中の祭祀ですが、家庭でも神棚に新米や旬の食材をお供えして五穀豊穣に感謝する風習があります。新米を炊いて最初の一膳を神棚に供え、家族の食卓に「お下がり」としていただくことで、神様の恵みを分かち合うとされてきました。特別な作法は必要なく、「今年もおいしいお米をいただけることへの感謝」を家族で共有することが、現代における新嘗祭の実践といえるでしょう。
TIP / 新米を味わおう
新嘗祭の時期はちょうど新米が出回る季節です。家族で新米を炊いて「いただきます」と感謝の気持ちを込めて食べることが、現代の新嘗祭ともいえます。お子さんと一緒に稲の実りについて話してみましょう。
CHAPTER 05新嘗祭に関するよくある質問
A.
新嘗祭は毎年11月23日に天皇が行う収穫感謝の祭祀です。大嘗祭は天皇即位後に一度だけ行われる特別な新嘗祭で、即位の礼に続く重要な儀式です。
A.
宮中の新嘗祭は非公開ですが、全国の神社で新嘗祭が行われており、一般の方も参拝できます。お近くの神社で11月23日前後に行われる行事を確認してみましょう。
A.
戦後のGHQ占領下で、国家神道に関わる祝日名が改称されました。新嘗祭の精神を引き継ぎつつ、より広い「勤労」への感謝として再定義されたのです。
A.
かつては旧暦11月の2回目の卯の日に行われていましたが、明治6年(1873年)に太陽暦が採用された年に、新暦11月の2回目の卯の日である11月23日に行われ、以後この日に固定されたためです。
CHAPTER 06まとめ
新嘗祭は、天皇が新穀を神々に供え自らも食する、日本最古級の宮中祭祀で、毎年11月23日に行われます。11月23日の「勤労感謝の日」の原型であり、稲作文化に根ざした収穫への感謝が今も受け継がれています。新米が出回るこの時期、家族で炊きたてのごはんを囲み、お米を育てる人や自然の恵みに「いただきます」と感謝を伝えてみてください。






