事納(ことおさ)めは、毎年12月8日に行われる日本の伝統行事で、一年の農作業や祭事を締めくくる年末の節目です。2026年の事納めは12月8日(火)、2027年は12月8日(水)。2月8日の「事始め」と対をなし、この二つの日で一年の仕事のサイクルが完結します。この記事では、事納めの由来と事八日の意味、御事汁の風習、針供養や一つ目小僧の厄除け、仕事納め・御用納めとの違いまで解説します。
CHAPTER 01事納めとは?由来と「事八日(ことようか)」の意味
2月8日と12月8日はともに「事八日(ことようか)」と呼ばれ、古くから特別な日とされてきました。「事」は祭事や農作業を意味し、2月8日にこれらを「始め」、12月8日に「納める」という一年の循環を表しています。
ただし地域によって解釈が逆になる場合もあります。関東では12月8日を事始め、2月8日を事納めとする地域があり、これは正月の神事を中心にした考え方に基づいています。正月行事の準備を12月8日に「始め」、正月行事を2月8日に「納める」というわけです。この二つの解釈は「事の神(田の神・農耕の神)」を中心に考えるか、「正月の神(年神様)」を中心に考えるかの違いによるものです。
| 解釈 | 2月8日 | 12月8日 | 中心となる「事」 |
|---|---|---|---|
| 農事中心(主流) | 事始め(農作業開始) | 事納め(農作業終了) | 田の神=農耕の神 |
| 正月中心(関東の一部) | 事納め(正月行事終了) | 事始め(正月準備開始) | 年神様=正月の神 |
12月8日
事納めの日付
2月8日
対になる事始めの日
農事の締め
一年の仕事を終える日
農作業や祭事の締めくくり ― 具体的に何をするのか
「農作業や祭事を締めくくる」とは、具体的には以下のような作業や行事を指します。農村ではこの日をもって一年の田畑の仕事を正式に終えたとし、翌年の農事開始(2月8日の事始め)まで農作業を休む期間に入りました。
- 農具の手入れと片付け:鍬・鎌・千歯こきなどの農具を洗い、刃を研ぎ、油を塗って蔵に仕舞う。道具への一年の感謝を込めた作業
- 脱穀・籾摺りの最終作業:秋に刈り取った稲の脱穀や籾摺りの残りを仕上げ、米蔵に納める
- 屋敷周りの整備:畦道や水路の修繕を済ませ、冬の間の畑に堆肥を入れておく
- 祭具の片付け:秋祭りや収穫祭で使った幟・注連縄・神輿の装飾品などを手入れして仕舞う
- 物忌み:この日は農作業をしてはならない、山に入ってはいけないという物忌みの風習がある地域もあった

CHAPTER 02御事納め(おことおさめ)と御事汁(おことじる)
事納めは「御事納め(おことおさめ)」とも呼ばれます。「御」がつくのは、農作業の終わりを神事として丁寧に扱う表現で、田の神への感謝と翌年の五穀豊穣を祈る意味が込められています。
御事納めの日に食べる行事食が「御事汁(おことじる)」です。大根・人参・里芋・ごぼう・小豆・こんにゃくの6種類の具材を入れた味噌汁で、「六質の汁」とも呼ばれました。栄養豊富な根菜と小豆で体を温め、一年の無病息災に感謝するとともに、冬を乗り切る力をつける意味がありました。
INFO / 御事汁の具材と意味
御事汁の具は、大根・人参・里芋・ごぼう・小豆・こんにゃくの6種類が基本です。根菜と小豆で体を温めるとともに、小豆の赤い色には魔除けの力があるとされ、こんにゃくは体の中の砂を出す「砂おろし」の食べ物として、年末の行事食によく使われてきました。
CHAPTER 03田の神送り・針供養・一つ目小僧の厄除け
農村では12月8日に田の神を山へ送り返す行事が行われてきました。春に山から里に降りてきた田の神が、秋の収穫を見届けた後に再び山へ帰るという信仰に基づいています。各地で藁束を焚いたり、餅を供えたりして感謝の祈りを捧げました。

また、12月8日は「針供養(はりくよう)」の日としても知られています。一年間使い古した針や折れた針を豆腐やこんにゃくに刺して供養し、針への感謝と裁縫の上達を願う行事です。硬いものを縫い続けてきた針に、最後は柔らかいものに刺して休んでもらうという心遣いが込められています。針供養は関東では2月8日、関西では12月8日に行うところが多く、地域によって日付が異なります。

2月8日に行われる浅草寺(東京)の淡島堂や、淡嶋神社(和歌山)の針供養は特に有名です。12月8日には、京都の法輪寺(嵐山)などで針供養が営まれます。近年は和裁・洋裁の学校の生徒が参拝することも多く、伝統行事が若い世代にも受け継がれています。
一つ目小僧と目籠の風習
事八日には「一つ目小僧」などの妖怪が訪れるという言い伝えがあり、各地で魔除けの風習が伝わっています。代表的なのが目籠を軒先に掲げる風習で、竹で編んだ籠の網目が無数の「目」に見えるため、一つ目小僧が驚いて逃げるとされています。
また、にんにくやヒイラギを戸口に吊るして厄を除ける地域もあります。節分の柊鰯にも通じるこの風習は、季節の変わり目に邪気を払うという日本人の信仰が根底にあります。そのほか、針千本や蜂の巣を戸口に掲げて魔除けとする地域もありました。
新米パパ / 2歳児のパパ
事八日に目籠を飾るのはなぜですか?
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
事八日には一つ目小僧がやってくるという言い伝えがあります。目籠の網目を見ると「自分より目が多い」と驚いて逃げるんだそうです。玄関に目籠を掲げて魔除けにする風習が残っていますよ。
CHAPTER 04仕事納め・御用納めとの違いと現代の過ごし方
年末に「仕事を終える」行事は複数ありますが、それぞれ由来と日付が異なります。事納めは農村の民間行事で12月8日、御用納めは官公庁の最終業務日で12月28日、仕事納めは民間企業の年内最終勤務日で12月28日前後です。
| 名称 | 日付 | 由来・対象 | 終わるもの |
|---|---|---|---|
| 事納め(ことおさめ) | 12月8日 | 民間の年中行事 | 一年の農作業・祭事 |
| 御用納め(ごようおさめ) | 12月28日 | 官公庁の制度(明治以降) | 役所・公共機関の業務 |
| 仕事納め(しごとおさめ) | 12月28日前後 | 民間企業の慣例 | 会社・個人の仕事 |
「御用納め」はもともと江戸時代にお役人が年内の仕事を終える日を指した言葉で、明治以降に官公庁の制度として定着しました。「仕事納め」は御用納めが民間に広がった呼び方です。一方、事納めはそれよりはるかに古い農耕文化に根ざした行事であり、現代の「仕事納め」とは約20日も日付が異なります。
新米パパ / 2歳児のパパ
事納めと御用納めは同じですか?
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
由来は異なります。事納め(12月8日)は農作業を終える民間行事で、御用納め(12月28日)は官公庁の最終営業日です。事納めのほうが約20日も早いんですよ。現代の「仕事納め」は御用納めが民間に広がった呼び方ですね。
現代における意義と過ごし方
現代の暮らしではこの日を特別に意識する機会は少なくなりましたが、12月8日は年末に向けたスタートラインとして活用できます。大掃除の計画を立てたり、一年を振り返って来年の目標を考えたりするのに適した日です。
また、「一年の仕事を区切る日」という考え方は、年末の忙しさに追われがちな現代人にとって、心のゆとりを取り戻すきっかけになります。仕事のデスク周りを整理したり、不要なものを処分したりと、小さな「納め」の行動を積み重ねることで、気持ちよく新年を迎える準備が整うでしょう。
TIP / 現代の事納め
12月8日を一年の区切りとして、デスクの整理や今年の振り返り、来年の目標設定をしてみましょう。農具の手入れが現代のデスク整理に置き換わっただけで、「道具への感謝と翌年への備え」という本質は変わりません。
CHAPTER 05事納めに関するよくある質問
A.
事納めは12月8日、事始めは2月8日に行われる対になった行事です。事納めは一年の農作業や祭事を終える日、事始めは新しい年の仕事を始める日です。ただし地域によっては12月8日を事始め(正月準備を始める日)と捉える場合もあり、解釈が異なることがあります。
A.
農具の手入れ・片付け、田の神送り、脱穀の仕上げなど一年の農作業を締めくくります。また「御事汁(おことじる)」と呼ばれる、大根・人参・里芋・ごぼう・小豆・こんにゃくの6種類の具材を入れた味噌汁を食べる風習があります。針供養を行う地域もあります。
A.
事八日(ことようか)とは、2月8日と12月8日の年2回の行事を合わせた呼び名です。2月8日の事始めで一年の農作業が始まり、12月8日の事納めで締めくくります。
A.
事納めの丁寧な呼び方です。「御」がつくのは、農作業の終わりを神事として扱う表現で、田の神への感謝と翌年の五穀豊穣を祈る意味が込められています。御事汁を食べる風習もこの呼び名とセットで伝えられています。
A.
事納め(12月8日)は農村の民間行事、御用納め(12月28日)は官公庁の最終業務日、仕事納め(12月28日前後)は民間企業の年内最終勤務日です。由来も日付も異なり、事納めが最も古い歴史を持つ農耕文化に根ざした行事です。
A.
いいえ。かつて農村で広く行われていた行事ですが、現在は祝日ではありません。戦後、農業中心の生活から離れるにつれて徐々に行われなくなりつつあります。
A.
太平洋戦争開戦の日(1941年)であり、仏教の成道会(お釈迦様が悟りを開いた日)でもあります。
CHAPTER 06まとめ
事納めは、12月8日に一年の農作業や祭事を締めくくる日本の伝統的な年末行事です。2026年は火曜日、2027年は水曜日にあたります。農具の手入れや田の神送り、御事汁を食べる風習、目籠で一つ目小僧を追い払う厄除けなど、2月8日の事始めと対になる「事八日」の文化が各地に伝わっています。現代では、デスクの整理や一年の振り返りをする日として取り入れ、子どもと一緒に古くなった道具に「ありがとう」を伝えてから年末の準備を始めてみてはいかがでしょうか。






