亥の子(いのこ)は、旧暦10月の亥の日に、収穫に感謝し、無病息災と子孫繁栄を願う行事です。2026年は11月9日(月)、2027年は11月4日(木)が最初の亥の日。亥の子餅を食べ、子どもたちが地面をついて回る風習が西日本に伝わります。この記事では、由来や亥の子餅、炉開きとの関係を紹介します。
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CHAPTER 01
亥の子とは?読み方・意味・由来

旧暦10月
亥の月
亥の日
お祝いの日
冬
俳句の季語
亥の子は「いのこ」と読み、「亥の子の祝い」「亥の子祭り」とも呼ばれます。旧暦10月(亥の月)の亥の日に行う行事で、江戸時代には「玄猪(げんちょ)」とも呼ばれました。「亥」は十二支のイノシシ。イノシシはたくさん子を産むことから、子孫繁栄や無病息災の願いが込められています。俳句では冬の季語です。
もとは、旧暦10月の亥の日に穀物を入れた餅を食べて病気を防ぐ中国の風習で、平安時代に宮中の行事として取り入れられました。宮中では、亥の月・亥の日・亥の刻(午後9〜11時ごろ)に、亥の子の形をした餅をいただいて万病を払う儀式が行われ、貴族のあいだでは餅を贈り合う習慣もありました。やがて庶民にも広まり、収穫を祝う農村の行事として、近畿地方から西の地域、特に瀬戸内海沿岸で盛んに行われるようになりました。
臼と杵での餅つき
収穫を祝って餅をつき、亥の子餅を作ります

東日本の十日夜との違い

関東・東北など東日本では、同じころに「十日夜(とおかんや)」という似た収穫祭が行われます。どちらも稲刈りを終えて田の神に感謝し、子どもたちが地面をたたいて回る点がよく似ています。
亥の子と十日夜の違い
亥の子十日夜
行う地域近畿地方から西の西日本北関東を中心とした東日本
日にち旧暦10月の亥の日旧暦10月10日
地面をたたく道具亥の子石・藁束藁鉄砲
食べ物亥の子餅ぼた餅・餅

CHAPTER 02
亥の子はいつ?2026年・2027年の日付

亥の子は旧暦10月の亥の日に行います。十二支は12日ごとにめぐるので、旧暦10月の中に亥の日は2〜3回あり、最初の亥の日を「初亥(はつい)」、2回目を「二の亥」と呼びます。地域によっては、2回・3回と続けて祝うところもあります。
◆亥の子の日付(自動計算)
2026年亥の子(初亥)11月9日(月)二の亥11月21日(土)三の亥12月3日(木)
2027年亥の子(初亥)11月4日(木)二の亥11月16日(火)
2028年亥の子(初亥)11月22日(水)二の亥12月4日(月)

二十四節気は太陽の位置、旧暦の行事は新月の日、干支の日は暦の巡りから計算しています。 正式な日付は、国立天文台が毎年2月に翌年分を発表する暦要項で確定します。「頃」は時刻が日付の変わり目に近く、前後する可能性がある日です。

亥の子の日(旧暦10月の亥の日)
2026年2027年
初亥(最初の亥の日)11月9日(月)11月4日(木)
二の亥11月21日(土)11月16日(火)
三の亥12月3日(木)―
今は、旧暦ではなく新暦11月の亥の日に行う地域や、茶道の炉開きもあります。2026年は11月9日・21日、2027年は11月4日・16日・28日が11月の亥の日です。京都の護王神社の「亥子祭」は、毎年11月1日に行われます。
川沿いの紅葉の名所
亥の子は、紅葉が見ごろを迎える11月ごろの行事です

CHAPTER 03
亥の子餅とは?意味・材料・いつ食べる・どこで買える

亥の子餅の意味と材料

亥の子餅は、亥の子の日に食べる餅です。もとは、新米でついた餅に大豆・小豆・ささげ・胡麻・栗・柿・糖(あめ)の7種類を混ぜて作ったといわれます。今は、きな粉や干し柿、胡麻などを混ぜた餅で餡を包み、表面に筋をつけるなどして、イノシシの子(うり坊)の姿に見立てた和菓子が一般的です。
白い器にのった茶色い亥の子餅
うり坊に見立てた亥の子餅

亥の子餅はいつ食べる?

本来は、旧暦10月の亥の日の亥の刻(午後9〜11時ごろ)に食べると病気にならないとされました。今は、11月の亥の日や、茶道の炉開きの時期に食べるのが一般的です。茶道では、炉開きのお茶席の主菓子(おもがし)として出されます。

亥の子餅はどこで買える?

亥の子餅は、10月下旬から11月ごろの期間限定で、和菓子店やデパートの和菓子売り場に並びます。たとえば老舗のとらやでは、鎌倉時代の文献を参考に、きな粉・干し柿・胡麻を混ぜた餅で餡を包んだ亥の子餅を、例年11月の期間限定で販売しています。京都の和菓子店では秋の風物詩として親しまれていて、護王神社の亥子祭(11月1日)では、当日だけ鶴屋吉信の特製「亥子餅」が数量限定で販売されます(護王神社「令和8年 亥子祭のご案内」)。
販売期間や数が限られていることが多いので、確実に手に入れたいときは、近くの和菓子店に早めに問い合わせて予約しておくと安心です。

源氏物語にも登場する亥の子餅

亥の子餅は、紫式部の『源氏物語』「葵」の帖にも登場します。光源氏と紫の上が結ばれた翌日がちょうど亥の子の日で、源氏のもとに亥の子餅が届けられます。源氏はそれをきっかけに、家来の惟光(これみつ)に、結婚の祝いの「三日夜(みかよ)の餅」を用意するよう頼みます。千年以上前から、亥の子餅が宮中の暮らしの中にあったことがわかります。

子どもと作る簡単な亥の子餅

白玉粉とあんこがあれば、家でも亥の子餅風のお菓子が作れます。うり坊の顔を描く工程は、子どもも楽しめます。
  1. 01
    生地を作る
    白玉粉100gに、きな粉大さじ1と水約90mlを少しずつ加え、耳たぶくらいのやわらかさになるまでこねます。きな粉の代わりにココアを少し入れても、茶色くなってうり坊らしくなります。
  2. 02
    ゆでる
    生地を6等分して平らにし、沸騰したお湯でゆでます。浮いてきてから1〜2分ゆでたら、冷水にとります。
  3. 03
    あんこを包む
    水気をふいた生地で、丸めたあんこ(1個20gほど)を包み、楕円形にととのえます。
  4. 04
    うり坊の模様をつける
    竹串にきな粉や黒ごまをつけて、背中に筋や目を描きます。焼きごての代わりに、楽しくアレンジしましょう。

CHAPTER 04
亥の子突き(石搗き)と亥の子の歌|何をする?

亥の子でいちばん有名な風習が「亥の子突き(いのこつき)」です。子どもたちが、何本もの縄をつけた「亥の子石」を持ち上げては落とし、家々の前の地面をついて回ります。地域によっては、石の代わりに藁束で地面を打つところもあります。
地面をつくのは、大地の霊を鎮め、田畑を荒らすモグラなどを追い払うためといわれます。子どもたちは「亥の子の歌(亥の子歌)」を歌いながら地面をつき、終わるとその家から餅やお菓子、お小遣いをもらって次の家へ向かいます。歌の歌詞は地域ごとに違い、お祝いの言葉を歌うもののほか、何もくれない家をからかう歌詞が伝わる地域もあります。
今でも、中国・四国地方などの瀬戸内海沿岸を中心に、子ども会や地域の行事として亥の子突きを続けている地域があります。子どもたちが近所を回る様子は、東日本の十日夜と同じく、日本のハロウィンのようです。

京都・護王神社の亥子祭

京都御所の西にある護王神社では、毎年11月1日に、平安時代の宮中の行事を再現した「亥子祭(いのこさい)」が行われます。祭神の和気清麻呂(わけのきよまろ)が旅の途中でイノシシに守られたという言い伝えから、境内には狛犬の代わりに狛イノシシが置かれています。2026年は11月1日(日)の午後5時から、餅つきなどの儀式が行われます。

CHAPTER 05
炉開き・こたつ開きとの関係

茶室の炉にかけられた鉄瓶と茶道具
茶道では、亥の子のころに炉を開きます
亥の子の日は、茶道の「炉開き(ろびらき)」の日でもあります。夏のあいだ使っていた風炉(ふろ)をしまい、畳に切った炉に火を入れて使い始める日で、茶人にとっての「お正月」ともいわれる大切な節目です。今は新暦11月の最初の亥の日に行うことが多く、炉開きのお茶席では亥の子餅が出されます。
亥の日に火を使い始めるのは、亥(イノシシ)は火を防ぐと考えられていたからです。陰陽五行で亥は「水」にあたり、この日に火を使い始めると、その冬は火事にならないとされました。茶道では炉開きとあわせて、春に摘んで茶壺に詰めておいた新茶の封を切る「口切り(くちきり)」も行われます。

江戸時代は「こたつ開き」の日

江戸時代には、亥の子の日はこたつや火鉢を出す日とされていました。武家は最初の亥の日、町人は2回目の亥の日に、こたつを開いたといわれます。今の家庭でも、亥の子の日を冬じたくを始める目安にして、こたつや暖房器具、湯たんぽを出してみてはいかがでしょうか。
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蓄熱式 充電式湯たんぽ(カバー付き)(新しいタブで開きます)
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お湯を入れずに、充電するだけで温かくなる湯たんぽ。カバー付きで、亥の子の日に「冬じたく」を始めるきっかけにちょうどよい暖房グッズです。

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CAUTION / 湯たんぽ・こたつは低温やけどに注意
湯たんぽや電気あんか、こたつに長い時間ふれていると、低い温度でもやけどをすることがあります。特に赤ちゃんや小さな子どもは皮膚が薄いので、寝るときは布団を温めたら外す、こたつで寝かせない、などに気をつけましょう。
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
亥の子と茶道の炉開きって関係があるんですか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
あります。亥は火を防ぐと考えられたので、火を使い始める炉開きは亥の日に行うのが習わしなんです。江戸時代の人たちも、亥の子の日にこたつを出しました。家族で亥の子餅を食べて、冬じたくを始める日にするのもおすすめですよ。

CHAPTER 06
亥の子に関するよくある質問

A.
旧暦10月の亥の日です。新暦では毎年日付が変わり、最初の亥の日は2026年が11月9日(月)、2027年が11月4日(木)です。新暦11月の亥の日に行う地域もあります。
A.
「いのこ」と読みます。江戸時代には「玄猪(げんちょ)」とも呼ばれました。
A.
本来は旧暦10月の亥の日の亥の刻(午後9〜11時ごろ)です。今は11月の亥の日や、茶道の炉開きの時期に食べるのが一般的です。
A.
10月下旬から11月ごろに、和菓子店やデパートの和菓子売り場で期間限定で販売されることが多いです。数が限られることもあるので、早めに予約すると安心です。
A.
子どもたちが縄をつけた亥の子石や藁束で、歌いながら家々の前の地面をついて回る行事です。終わるとその家から餅やお菓子、お小遣いをもらいます。
A.
亥(イノシシ)は火を防ぐと考えられ、亥の日に火を使い始めるとその冬は火事にならないとされたためです。江戸時代には、亥の子の日にこたつや火鉢を出す習慣がありました。

CHAPTER 07
まとめ

亥の子は、旧暦10月の亥の日に収穫に感謝し、無病息災と子孫繁栄を願う西日本の行事で、2026年は11月9日(月)、2027年は11月4日(木)が最初の亥の日です。うり坊の姿の亥の子餅を食べ、子どもたちが亥の子石で地面をついて回る風習が伝わり、茶道の炉開きや江戸時代のこたつ開きの日でもあります。和菓子店で亥の子餅を見かけたら、家族でイノシシの話をしながら味わい、冬じたくを始めてみてください。