えびす講(えびすこう)は、商売繁盛と五穀豊穣を願って恵比寿様(えびすさま)を祀る日本の伝統行事です。旧暦10月(神無月)に出雲へ出かけない「留守神」として地元に残る恵比寿様を、おもてなしの心でお祀りすることに由来します。関東では10月20日・11月20日前後、関西では1月10日を中心とした十日戎(とおかえびす)として、全国各地で祭りが催されています。この記事では、えびす講の由来と恵比寿様の信仰、2026年〜2027年の主な日程、全国の有名な祭り、お供え物と縁起物、家族での過ごし方まで解説します。
CHAPTER 01えびす講とは?由来と恵比寿様の信仰
「えびす講」の「講」は信仰を同じくする人々の集まりを意味します。室町時代の京都・堺の商人たちが恵比寿様に供物を捧げる集まりを始めたのが起源とされ、江戸時代には庶民の間に広く定着しました。
旧暦10月は「神無月(かんなづき)」と呼ばれ、全国の八百万の神々が出雲大社に集まって不在になる月です。しかし恵比寿様は出雲に行かず、地元に留まって土地と人々を守る「留守神」として信仰されてきました。この留守神をおもてなしし、感謝を伝えるのがえびす講の本来の姿です。

10月20日 / 11月20日
関東の開催日(地域で異なる)
1月10日
関西(十日戎)
七福神で唯一
日本出身の神様
恵比寿様はどんな神様?
恵比寿様は七福神の一柱で、右手に釣り竿、左手に鯛(たい)を抱えた福々しいお姿で知られています。もともとは漁村で大漁の神として崇められ、農村では豊作の神として信仰されました。やがて商業が発展するにつれて商売繁盛の神としても広く信仰されるようになり、七福神の中で唯一の日本出身の神様として庶民から絶大な人気を誇ります。
恵比寿様の起源には諸説ありますが、代表的なのは蛭子命(ひるこのみこと)説と事代主命(ことしろぬしのみこと)説です。蛭子命説では、イザナギ・イザナミの最初の子が海に流され、漂着した先で福の神として祀られたとされます。事代主命説では、大国主命の子である事代主命が釣り好きの神として恵比寿様と同一視されました。どちらの説でも、海から福をもたらす神というイメージが共通しています。
INFO / 恵比寿様と大黒様
恵比寿様と大黒様はセットで祀られることが多い福の神です。恵比寿様は商売繁盛・豊漁の神、大黒様(大国主命)は五穀豊穣・財福の神。親子の神様とする説もあり、七福神の中でも特に人気の高い組み合わせです。商家では神棚にこの二柱を並べて祀るのが定番でした。
- 七福神(しちふくじん)
- 恵比寿・大黒天・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋の七柱の福の神。室町時代に信仰が成立し、正月の七福神巡りや宝船の絵で親しまれている。恵比寿様は七福神の中で唯一の日本出身の神様で、残りの六柱はインド・中国由来。
- 留守神(るすがみ)
- 神無月に出雲大社へ出かけず地元に留まるとされる神様。恵比寿様のほかに、竈神(かまどがみ)や荒神(こうじん)も留守神とされる地域がある。
- 福笹(ふくざさ)
- えびす講・十日戎で授与される笹飾り。笹に小判や鯛などの縁起物を吊るした商売繁盛のお守り。「笹もってこい」の掛け声で知られる。
- 熊手(くまで)
- えびす講や酉の市で購入する縁起物。「福をかき込む」として商売繁盛を願う。毎年少しずつ大きなものに買い替えるのが習わし。
CHAPTER 02えびす講の時期 ─ 地域で異なる開催日
えびす講の開催時期は地域によって大きく異なります。これは歴史的な経緯や暦の違い(旧暦・新暦の対応差)によるもので、同じえびす様を祀る行事でも呼び名や雰囲気がまったく違います。
| 時期 | 名称 | 地域 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1月9日〜11日 | 十日戎(とおかえびす) | 関西(大阪・兵庫・京都など) | 新年の商売繁盛を祈願。9日が宵戎、10日が本戎、11日が残り福。福笹の授与が名物 |
| 1月20日 | 二十日えびす(はつかえびす) | 一部の地域 | 正月の締めくくりに恵比寿様を祀る |
| 10月20日 | えびす講 | 関東・中部 | 神無月の留守神への感謝。前日からのべったら市が有名 |
| 11月20日前後 | えびす講 | 関東・信越・中国地方 | 秋の収穫祭と結びついた形。花火大会も |
新米パパ / 2歳児のパパ
えびす講って、神無月に神様が出雲に行っている留守に行うんですよね?でも関西は1月なのはなぜですか?
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
良い質問ですね。関西の十日戎は新年最初にえびす様に商売繁盛を祈る行事として独自に発展したもので、神無月の留守神信仰とは別の流れです。一方、関東のえびす講は神無月の留守神信仰に直結しています。同じえびす様の祭りでも、地域によって由来が異なるのが面白いところです。
2026年秋〜2027年の主な日程
| 行事 | 日程 | 場所 |
|---|---|---|
| 桐生えびす講 | 2026年11月19日(木)・20日(金) | 群馬県桐生市・桐生西宮神社 |
| 長野えびす講煙火大会 | 2026年11月23日(月・祝) | 長野県長野市 |
| 十日戎 | 2027年1月9日(土)〜11日(月・祝) | 西宮神社・今宮戎神社・京都ゑびす神社など |
| べったら市 | 2027年10月19日(火)・20日(水) | 東京都中央区・宝田恵比寿神社周辺 |
日程は例年の開催日をもとにしたものです。時間や内容は年によって変わることがあるので、出かける前に各神社や主催団体の発表を確認してください。
CHAPTER 03全国の有名なえびす講・十日戎
恵比寿様を祀る祭りは全国各地で行われていますが、特に有名な開催地をご紹介します。
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関西の十日戎
関西で最も盛大なえびす講は、西宮神社(兵庫県)と今宮戎神社(大阪府)の十日戎です。十日戎は1月9日の宵戎から11日の残り福まで3日間行われます。西宮神社はえびす様を祀る神社の総本社で、1月10日早朝の開門と同時に本殿を目指して駆け抜ける「福男選び」がテレビ中継でおなじみ。今宮戎神社では「商売繁盛で笹もってこい」の掛け声とともに福娘が福笹を授与する光景が大阪の冬の風物詩です。京都ゑびす神社は祇園の花街に近く、舞妓さんによる福笹の授与が華やかです。

関東・信越のえびす講
東京では宝田恵比寿神社のべったら市(10月19〜20日)が江戸時代から続くといわれ、日本橋周辺にたくさんの露店が並びます。べったら漬けは麹で漬けた大根の浅漬けで、表面がべたべたすることが名の由来です。群馬県の桐生えびす講は関東一の規模ともいわれ、熊手や福笹の威勢のよい売り声が秋の街に響きます。長野県の長野えびす講は11月23日の煙火大会が、全国でも珍しい晩秋の花火として知られています。
CHAPTER 04お供え物と縁起物、えびす講の過ごし方
えびす講では、家庭の神棚や恵比寿様の像にお供え物を飾って感謝を伝えます。商家では帳簿を新調したり、店先にのぼりを立てて一年の商いへの感謝を表す風習が今も残っています。
えびす講のお供え物
| 品目 | 意味・由来 |
|---|---|
| 鯛(尾頭付き) | 恵比寿様が抱える魚。めでたい席の象徴 |
| 赤飯 | 祝い事の定番。小豆の赤色が邪気を払う |
| 御神酒(おみき) | 神様へのお供えの基本。日本酒を一合〜一升 |
| 大根・牛蒡などの根菜 | 秋の収穫物を供えて五穀豊穣に感謝 |
| 旬の果物 | 季節の恵みを恵比寿様に捧げる |
| べったら漬け(関東) | 麹で漬けた大根の浅漬け。日本橋べったら市の名物 |
商売をしている方は売上帳や財布をお供えすることもあります。一年の商売への感謝を込め、来年の繁盛を祈る意味があります。

縁起物 ─ 福笹と熊手
えびす講や十日戎の参拝では、福笹(ふくざさ)や熊手(くまで)などの縁起物を授かるのが定番です。
福笹は笹の枝に小判・鯛・米俵・打出の小槌などの縁起物を吊るしたもので、「笹もってこい」の掛け声は十日戎の代名詞です。笹は真っ直ぐに伸びる強さと、しなやかに折れない柔軟さから、商売の繁栄を象徴するとされます。福笹は神棚や店の目立つ場所に飾り、翌年のえびす講で新しいものと取り替えます。
熊手は「福をかき込む」縁起物として、えびす講のほか酉の市でも人気があります。毎年少しずつ大きなものに買い替えるのが習わしで、商売が年々繁盛していくことを願います。
新米パパ / 2歳児のパパ
えびす講と酉の市って何が違うんですか?どちらも熊手を買うイメージがあるのですが。
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
えびす講は恵比寿様(七福神)を祀る商売繁盛の祭りで、酉の市は鷲神社の祭りで日本武尊(やまとたけるのみこと)に由来します。どちらも11月に商売繁盛を祈る行事ですが、祀る神様も由来も異なるんですよ。熊手はどちらでも扱いますが、えびす講では福笹も定番です。
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七福神 宝船の置物(新しいタブで開きます)
恵比寿さまを含む七福神が乗った宝船の置物。えびす講にちなんで、商売繁盛を願う縁起物として飾れます。
えびす講の過ごし方
江戸時代の商家では、えびす講の日に店を早じまいして家族で祝い膳を囲む風習がありました。奉公人に休みを与え、主人が食事を振る舞う日でもあったのです。現代でも個人商店や老舗企業がこの日に合わせてセールや感謝祭を行うことがあり、商いと信仰が結びついた伝統が息づいています。
TIP / 現代のえびす講の楽しみ方
商売をしていなくても、恵比寿様にちなんだ縁起の良い過ごし方があります。尾頭付きの鯛を囲んで食事をする、七福神巡りの一環として恵比寿様を祀る神社を参拝する、べったら漬けや鯛焼きを味わうなど、晩秋のちょっとした楽しみとしていかがでしょうか。
えびす講や十日戎は大変な人出になります。子ども連れなら、比較的すいている昼間や、宵戎・残り福など本祭以外の日を選ぶと歩きやすいでしょう。屋台の食べ歩きや福笹選びは子どもにとっても楽しい体験です。人混みではぐれないよう、待ち合わせ場所を決めておきましょう。
CHAPTER 05えびす講に関するよくある質問
A.
地域によって異なります。関東では10月20日や11月20日前後、関西では1月10日(十日戎)が中心です。お近くの恵比寿様を祀る神社に日程を確認するのが確実です。
A.
鯛(尾頭付き)、赤飯、御神酒(日本酒)、大根や旬の野菜・果物をお供えするのが一般的です。商売をしている方は売上帳や財布をお供えすることもあります。
A.
同じ恵比寿様を祀る行事ですが、えびす講は10〜11月に主に関東・信越で行われ、十日戎(とおかえびす)は1月10日に関西で行われます。えびす講は神無月の留守神信仰に由来し、十日戎は新年の商売繁盛祈願が中心です。
A.
七福神の中で唯一の日本出身の神様です。右手に釣り竿、左手に鯛を抱えた姿で知られ、商売繁盛・豊漁・五穀豊穣の神として信仰されています。
A.
神棚がある場合は神棚に、なければ店の入り口や目立つ場所に飾ります。翌年のえびす講の際に神社に返納し、新しいものと取り替えるのが習わしです。
CHAPTER 06まとめ
えびす講は、商売繁盛と五穀豊穣を願って恵比寿様を祀る行事で、神無月の留守神信仰に由来します。関東では10月・11月、関西では1月の十日戎を中心に各地で祭りが開かれ、2026年は11月19日・20日に桐生えびす講、2027年は1月9日〜11日に十日戎が行われます。鯛や赤飯をお供えして一年の恵みに感謝し、福笹や熊手を授かって、家族で福を呼び込む晩秋から新春のひとときを過ごしてみてください。






