酉の市(とりのいち)は、毎年11月の酉の日に行われる、商売繁盛や開運招福を願う日本の伝統行事です。縁起物の「熊手」を買い求める人々で賑わう、晩秋の風物詩として知られています。2026年の酉の市は、一の酉が11月7日(土)、二の酉が11月19日(木)です。この記事では、酉の市の由来、2026年・2027年の日程、熊手の買い方と値切りの作法、屋台や縁起物の楽しみ方、有名な開催地まで解説します。

CHAPTER 01
酉の市とは?由来と歴史

酉の市は、鷲(おおとり)神社や大鳥神社を中心に、11月の酉の日に開催される祭礼です。起源は、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の帰途に鷲宮神社で戦勝を感謝したという伝説にさかのぼるとされています。
◆酉の市の日付(自動計算)
2026年一の酉11月7日(土)二の酉11月19日(木)
2027年一の酉11月2日(火)二の酉11月14日(日)三の酉11月26日(金)
2028年一の酉11月8日(水)二の酉11月20日(月)

二十四節気は太陽の位置、旧暦の行事は新月の日、干支の日は暦の巡りから計算しています。 正式な日付は、国立天文台が毎年2月に翌年分を発表する暦要項で確定します。「頃」は時刻が日付の変わり目に近く、前後する可能性がある日です。

酉の市の発祥は、現在の東京都足立区花畑にある大鷲神社(花畑の鷲大明神)の祭りとされています。もとは近郊の農民が秋の収穫に感謝して鶏を奉納する祭りでしたが、やがて商売繁盛を願う行事へと発展し、江戸中期以降は地の利のよい浅草の鷲神社が酉の市の中心地となりました。「おとりさま」の愛称で親しまれ、江戸の年末の風物詩として浮世絵にも描かれています。
もともと酉の市は「酉の町(まち)」と呼ばれていました。浅草の鷲神社は、日蓮宗の長國寺(ちょうこくじ)と隣り合っており、神仏習合の時代には両者が一体となって酉の市を盛り上げてきました。なお、全国の大鳥神社の総本社は大阪府堺市の大鳥大社とされています。
酉の市の起源には仏教側の伝承も残されています。1265年(文永2年)、日蓮上人が上総国(現・千葉県)の鷲巣(わしのす)で国家平穏を祈祷したところ、明星が輝き、鷲の背に乗った鷲妙見大菩薩(わしみょうけんだいぼさつ)が現れたと伝えられています。この霊験にちなみ、1771年(明和8年)に浅草の長國寺(ちょうこくじ)へ鷲妙見大菩薩が勧請され、11月の酉の日に出開帳(でがいちょう)が行われるようになりました。現在も長國寺は鷲神社に隣接しており、神仏習合の歴史を今に伝えています。
江戸時代には遊女屋・料理屋・船宿・芝居などが天井に熊手を飾り付ける風習が広まりました。華やかな飾り熊手が商家の繁盛を象徴するようになり、これが現在の商売繁盛の縁起物としての熊手の起源とされています。
酉の市の中心が花畑から浅草へ移ったのには、意外な理由があります。花畑の鷲大明神の酉の市は、かつて境内で開かれる賭博が名物で、参詣人を目当てに博徒が集まっていました。あまりの過熱ぶりに、幕府は1776年(安永5年)に酉の市での賭博を禁止。これを境に花畑の人出は減り、吉原に近い浅草の鷲神社が「酉の市といえば浅草」と言われるほど賑わうようになりました。
11月の酉の日
開催日
江戸時代
始まった時代
商売繁盛
熊手に込められた願い
熊手で飾られた鷲神社の鳥居
酉の市の日は、鳥居も縁起物の熊手で飾られる

「三の酉」と火事の言い伝え

酉の日は12日周期で巡るため、11月に酉の日が2回ある年は「二の酉」まで、3回ある年は「三の酉」まで酉の市が開かれます。
「三の酉まである年は火事が多い」という言い伝えがあります。三の酉がある年は11月下旬まで夜遅くまで人が出歩くことになり、火の不始末への戒めとして広まったとされます。科学的な根拠はありませんが、空気が乾燥する晩秋に火の用心を意識するきっかけとして、今も語り継がれています。三の酉のある年には、防火のお守りとして熊手守りを求める人もいます。もうひとつの説として、浅草の酉の市は隣の吉原遊郭への通り道でもあったため、男性たちの足が遊郭や賭け事に向かわないよう、「火事が多い」という噂が自然に生まれたともいわれています。

CHAPTER 02
2026年・2027年の酉の市の日程

酉の市は11月の酉の日に開かれます。2026年は一の酉と二の酉の2回、2027年は三の酉まである年です。
酉の市の日程(2026年・2027年)
2026年2027年
一の酉11月7日(土)11月2日(火)
二の酉11月19日(木)11月14日(日)
三の酉なし11月26日(金)
浅草の鷲神社では、酉の日の午前0時に打ち鳴らされる「一番太鼓」を合図に始まり、24時間にわたって開かれるのが恒例です。開催時間は神社によって異なるため、事前に確認しましょう。最も混雑するのは夕方から夜にかけてで、活気ある雰囲気を味わいたい方にはこの時間帯がおすすめです。
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
酉の市は毎年何回あるのですか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
11月の酉の日に開催されるため、年によって2回(二の酉まで)か3回(三の酉まで)になります。「三の酉がある年は火事が多い」という俗信もあり、三の酉のある年は特に火の用心を心がけるとされています。

CHAPTER 03
熊手の買い方と値切りの作法

この行事の主役は、商売繁盛や開運招福を願う縁起物「熊手」です。熊手は「福をかき込む」という意味が込められた縁起物で、毎年少しずつ大きいサイズを購入するのが慣わしです。熊手には「おかめ」「大入」「大判小判」「七福神」などの飾りがつけられており、華やかなものほど御利益があるとされています。

熊手の飾り物

熊手にはさまざまな縁起物が飾りつけられています。代表的なものとして、おたふく・鶴・大入り袋・米俵・亀・鯛(たい)・編笠・千両箱・大判小判・桝・宝船・稲穂・松竹梅・当たり矢・巻物・扇片などがあります。
このほか、起き上がり小法師なども飾られ、それぞれに商売繁盛・開運招福の願いが込められています。熊手が大きくなるほど飾り物の種類も増え、豪華になっていくのが特徴です。

熊手が縁起物とされる由来

福をかき込む道具説
熊手はもともと落ち葉をかき集める農具。その動作になぞらえ、商売人のシャレで「運をかき込む」「金銀をかき集める」道具として縁起物に転じた。
鷲の爪で福を鷲掴み説
鷲が獲物を鷲掴みにする爪の形に似ていることから、福や運を力強くつかんで離さない縁起物とされた。鷲神社の祭神・日本武尊が白鳥(大鳥)に化身した伝説とも結びつく。
勝利祈願の軍扇説
武将が戦場へ赴く際に奉納した軍扇が、勝ち戦から戻ると熊手のような形に開いていたことから、開運や勝利を招く道具として崇められるようになったとも伝えられている。

買い方のポイント

  • 初めての方:まずは小さいサイズ(1,000〜3,000円)から始める
  • 値切り交渉:熊手は値切るのが粋とされる。値切った分はご祝儀として渡すのが伝統的な作法
  • 手締め:購入後は売り手と一緒に三本締めで祝い、縁起を担ぐ
  • 飾り方:自宅や店舗の入口に向けて、目線より高い位置に飾る
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TIP / 熊手の買い方のコツ
初めての方は小さめの熊手(1,000〜3,000円)から始めましょう。毎年少しずつ大きくしていくのが縁起がよいとされています。購入時の値切り交渉も酉の市の楽しみの一つですが、最終的にはご祝儀(しゅうぎ)として端数を上乗せして支払うのが粋です。

値切り交渉と手締めの流れ

  1. 01
    価格を聞く
    気に入った熊手を見つけたら、店主に値段を尋ねます。
  2. 02
    3段階ほどに分けて値切る
    「もう少し勉強してよ」と少しずつ値下げを交渉します。店主も「しょうがないなぁ」と応じてくれるのがお約束。
  3. 03
    値切り前の価格で支払う
    交渉が成立したら、実際には値切る前の元の価格をそのまま支払います。
  4. 04
    お釣りをご祝儀として渡す
    差額分を「ご祝儀」として店主に渡します。「買った(勝った)!」「負けた!」と掛け合うのが粋なやりとりです。
  5. 05
    手締めで締めくくる
    購入後は売り手と一緒に三本締め(または一本締め)で祝い、お互いの繁盛を願います。周りのお客さんも一緒に手を打つのが酉の市ならではの光景です。
つまり値切り交渉は値引きが目的ではなく、買い手が「お大尽(おだいじん)気分」を味わうための縁起のよいやりとりです。近年はこの風習を行わない店もありますが、常連になると対応してくれるお店も多いようです。
手締めにも意味があります。もとは争いごとが収まったときの和解の作法で、指を開いて手を打つことで「手に武器は持っていません」と示したのが始まりといわれます。酉の市では、売り手と買い手がお互いの繁盛を願って打ち合う、門出の合図になっています。
古い熊手は翌年に持参して「熊手納め所」に返納し、新しいものに買い替えるのがマナーです。返納せずに処分する場合は、お清めの塩をかけてから廃棄するのが望ましいとされています。

CHAPTER 04
屋台・縁起物の楽しみ方と有名な開催地

熊手の購入だけでなく、境内には多数の屋台が並び、縁日の雰囲気も楽しめます。お好み焼き、焼きそば、あんず飴、切山椒などの露店が立ち並び、年末の訪れを感じさせる賑やかな空間が広がります。

熊手守り(かっこめ)

露店の飾り熊手とは別に、神社から授与される「熊手守り」も酉の市の名物です。小さな竹の熊手に稲穂やお札を付けたもので、「福をかき込む」ことから「かっこめ」の通称で親しまれています。神棚や仏壇、居間の高い位置に飾るのが一般的で、飾り熊手より手頃な価格で手に入るため、初めて酉の市を訪れる方にもおすすめです。
酉の市に並ぶ縁起熊手

八つ頭と切山椒

熊手と並ぶ酉の市の縁起物が八つ頭(やつがしら)です。里芋の一種で、大きな芋はかつて「頭の芋(とうのいも)」と呼ばれていました。「人の頭(かしら)に立つように出世できる」という験担ぎに加え、一つの芽から多くの芽が出ることから「子宝に恵まれる」とも言い伝えられています。江戸時代の錦絵にも、熊手と八つ頭を抱えて帰る庶民の姿が描かれており、古くからの定番土産でした。近年は八つ頭を扱う屋台が減りつつありますが、浅草の鷲神社周辺では今も購入できます。
切山椒(きりざんしょう)は、この行事ならではの名物餅菓子です。上新粉に砂糖と山椒の粉を加え、短冊形に切り分けたもので、紅白の色合いが縁起物として好まれています。もともと酉の市では黄金餅(こがねもち)という粟餅が名物でした。餅米と粟を半々で搗いた黄色い餅が金色の小判に見えることから「お金持ちになれるように」と縁起を担いだものですが、現在は黄金餅に代わり切山椒が主流となっています。山椒は日本最古クラスの香辛料で、葉・花・実・幹・樹皮まで余すことなく使える植物です。捨てる部分がない=無駄がないことが「有益である」に通じ、縁起物とされています。浅草の鷲神社周辺では、この時期だけの限定品として和菓子店で販売されます。
切山椒(きりざんしょう)
酉の市の名物和菓子。山椒の香りが効いた紅白の餅菓子
新米パパ
新米パパ / 2歳児のパパ
酉の市って子連れでも楽しめますか?
カゾイロ博士
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
屋台が並んで縁日のような雰囲気ですから、子どもも楽しめますよ。ただし、浅草など有名な神社の夜は身動きがとれないほど混雑します。小さな子ども連れなら、比較的すいている平日の昼間に行き、ベビーカーより抱っこひもが安心です。迷子に備えて、子どもの服に連絡先を書いたメモを入れておきましょう。小さな熊手守りを一緒に選ぶのも、よい思い出になりますよ。

有名な開催地

浅草・鷲神社の酉の市の熊手と提灯
浅草・鷲神社の酉の市
  • 鷲神社(東京・浅草):江戸時代から続く最大規模の開催地。70万人以上が訪れる
  • 花園神社(東京・新宿):新宿の繁華街に位置し、アクセスの良さで人気
  • 大國魂神社(東京・府中):関東三大酉の市の一つに数えられる
  • 大鳥大社(大阪・堺):関西を代表する開催地で、西日本最大規模の熊手市が開かれる
  • 金毘羅大鷲神社(神奈川・横浜):横浜を代表する酉の市で、「横浜のお酉さま」として親しまれている
  • 八王子・大宮など:関東各地でも酉の市が開催され、地域ごとの特色ある熊手市が楽しめる
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11月の火焚き神事(お火焚き)

酉の市と同じ11月に各地の神社で行われるのが「火焚き神事(お火焚き)」です。京都の伏見稲荷大社をはじめとする各地の神社で行われる秋の収穫感謝と厄除けの神事で、護摩木や火焚串を焚き上げて五穀豊穣や無病息災を祈ります。
火焚き神事の炎
火焚き神事では、お火焚き饅頭・おこし・みかんを供える風習があります。特に京都では、11月に入ると和菓子店にお火焚き饅頭が並び、みかんとともに神社に奉納したり、家庭で食べたりする習慣が残っています。酉の市が関東を中心とした商売繁盛の行事であるのに対し、火焚き神事は京都を中心とした秋の感謝の行事であり、ともに11月を代表する神事として日本の晩秋の風景を彩っています。

CHAPTER 05
酉の市に関するよくある質問

A.
玄関や神棚の近くなど、目線より高い位置に飾るのが一般的です。商売をされている方はレジの近くやお店の入り口に飾ることが多いです。
A.
翌年の酉の市に持参して、神社の「古熊手納め所」に返納するのが一般的です。近くの神社でお焚き上げしてもらうこともできます。
A.
2026年は一の酉が11月7日(土)、二の酉が11月19日(木)で、三の酉はありません。2027年は一の酉が11月2日(火)、二の酉が11月14日(日)、三の酉が11月26日(金)です。神社によって開催時間が異なるため、事前に確認しましょう。
A.
科学的な根拠はありません。三の酉まである年は夜遅くまで出歩く人が増えるため、火の用心を促す戒めとして広まったとされています。乾燥する晩秋に火の元を見直すきっかけにしましょう。

CHAPTER 06
まとめ

酉の市は、11月の酉の日に熊手を買い求めて商売繁盛や開運を願う、晩秋の伝統行事です。2026年は一の酉が11月7日(土)、二の酉が11月19日(木)の2回で、2027年は11月26日の三の酉まであります。初めての方は小さな熊手や熊手守りから始め、値切った分をご祝儀として渡す粋なやりとりや手締めも楽しんでください。小さな子どもと行くなら、混雑する夜を避けて昼間にお参りするのがおすすめです。