鞍馬の竹伐り会式(たけきりえしき)は、京都・鞍馬寺で毎年6月20日に行われる伝統行事です。山伏装束の僧兵に扮した法師たちが大蛇に見立てた青竹を山刀で伐り、その速さを競います。近江座と丹波座の二手に分かれ、先に伐り終えた方角がその年の豊作になるという豊凶占いの意味を持つ、迫力満点の行事です。
CHAPTER 01鞍馬の竹伐り会式とは?
竹伐り会式は、鞍馬寺の本堂金堂の前庭で行われる行事で、約1,000年の歴史を持つとされています。山伏の装束に身を包んだ伐り手が、長さ約4メートルの太い青竹を大蛇に見立て、山刀(なた)で一気に断ち切ります。東方の「近江座」と西方の「丹波座」に分かれて伐る速さを競い、勝った方角の地域がその年は豊作になると伝えられています。
牛若丸(源義経)が天狗に武芸を学んだ伝説で知られる鞍馬山ですが、この竹伐り会式は武芸の鍛錬ではなく、水神への信仰と修験道の験競べ(げんくらべ)を起源とする宗教行事です。毎年多くの参拝者が訪れ、鞍馬の初夏を代表する行事として親しまれています。
- 正式名称
- 竹伐り会式(たけきりえしき)
- 開催日
- 毎年6月20日 午後2時頃から
- 会場
- 鞍馬寺 本堂金堂前庭(京都市左京区鞍馬本町)
- 内容
- 山伏装束の法師が大蛇に見立てた青竹を山刀で伐り、速さを競う豊凶占い
CHAPTER 02由来 ─ 峰延上人と大蛇退治の伝説
竹伐り会式の起源は、平安時代の峰延上人(ぶえんしょうにん)の大蛇退治伝説にさかのぼります。鞍馬山の奥には古くから大きな蛇が棲む池があると伝えられ、修行中の峰延上人のもとに大蛇が現れて修行を妨げました。上人は法力をもってこれを退治し、大蛇は鞍馬山に水を湧き出させることを誓ったとされています。
この伝説の背景には、水神信仰があります。水神は田畑に恵みの水をもたらす一方、洪水や干ばつなど災いを引き起こすこともある二面性を持つ存在として畏れられてきました。龍や蛇の姿で現れるとされる水神を「調伏(ちょうぶく)」し、その力を人々のために役立てる ── 竹伐り会式はこうした水神への祈りを、青竹を大蛇に見立てて伐ることで再現した儀式と考えられています。
パ
新米パパ
大蛇を退治した話が行事になったんですね。なぜ竹を伐るんですか?
博
カゾイロ博士
竹は蛇の姿に見立てられていますが、もうひとつ、修験道の験競べという側面もあります。山伏たちが竹を伐る技と速さを競うことで修行の成果を示すのです。仏教民俗学では、水神祭と修験道の鍛錬が結びついて現在の形になったと考えられていますよ。
CHAPTER 03竹伐り会式の流れと見どころ
竹伐り会式は6月20日の午後2時頃に始まります。まず前日の6月18日に雄竹4本・雌竹4本の計8本の青竹が本堂に運び込まれ、19日の夜には貫主(かんす)による法華経の読誦が行われます。
当日、山伏装束に身を包んだ伐り手たちが本堂前庭に現れると、合図とともに一斉に山刀を振り下ろします。太い青竹を何度も叩き伐る力強い音が境内に響き渡り、見事に伐り終えた瞬間には大きな歓声が上がります。近江座が先に伐り終えれば東方(近江・滋賀方面)が豊作、丹波座が先なら西方(丹波・京都北部方面)が豊作とされ、その年の農作物の出来を占います。
TIP
鞍馬寺へは叡山電鉄「鞍馬駅」から徒歩約30分(ケーブルカーで約2分+徒歩10分)。竹伐り会式は本堂前庭で行われ、観覧無料です。当日は混雑するため早めの到着がおすすめです。
CHAPTER 04鞍馬寺と鞍馬山の信仰
鞍馬寺は奈良時代の宝亀元年(770年)に鑑真和上の高弟・鑑禎(がんてい)が毘沙門天を祀って創建したと伝えられる古刹です。平安時代には皇室の崇敬を集め、鞍馬山は修験道の霊山として多くの行者が修行に励みました。
鞍馬山といえば、源義経(牛若丸)が天狗から武術を学んだ伝説で広く知られています。幼少の義経が鞍馬寺に預けられ、鞍馬天狗(僧正坊)のもとで剣術や兵法を修めたという物語は、謡曲「鞍馬天狗」や歌舞伎でも親しまれています。鞍馬寺の境内には義経供養塔や「息つぎの水」「背比べ石」など、義経伝説ゆかりの史跡が点在しています。
鞍馬山の秋を彩るもうひとつの重要な行事が、毎年10月22日に行われる「鞍馬の火祭」です。鞍馬寺の鎮守社である由岐(ゆき)神社の例祭であり、京都三大奇祭のひとつに数えられています。天慶3年(940年)、都の北方鎮護のために御所から祭神を鞍馬に遷座した際、里人たちが沿道で篝火(かがりび)を焚いて迎えたのが始まりとされます。夜になると鞍馬の集落の各家の前に篝火が灯され、「サイレイヤ、サイリョウ」の掛け声とともに大小の松明(たいまつ)が石段を練り歩く光景は、まさに火の祭典と呼ぶにふさわしい壮観です。
火祭の最大の見どころは、重さ約80キロにも達する大松明を若者たちが担ぎ上げ、由岐神社の山門前に集結する場面です。「チョッペンの儀」と呼ばれる成人の通過儀礼では、若者が神輿の担ぎ棒に逆さにぶら下がるという独特の所作が行われます。竹伐り会式が水神への信仰と豊穣祈願を担うのに対し、鞍馬の火祭は火の浄化力と鬼神鎮護を象徴しており、鞍馬山には水と火という相反する二つの霊力が宿ると古くから信じられてきました。二つの行事を合わせて知ることで、鞍馬山の多層的な信仰の世界をより深く理解できるでしょう。
INFO
鞍馬寺は現在「鞍馬弘教」の総本山で、本尊は毘沙門天・千手観音・護法魔王尊の三身を一体とした「尊天」です。毎年10月の「鞍馬の火祭」も京都三大奇祭のひとつとして有名です。
CHAPTER 05よくある質問
パ
新米パパ / 2歳児のパパ
鞍馬の竹伐り会式はどんな行事ですか?
博
カゾイロ博士 / 行事・風習の専門家
鞍馬寺で毎年6月20日に行われる伝統行事で、僧兵に扮した法師たちが大蛇に見立てた青竹を太刀で断ち切る勇壮な儀式です。近江座と丹波座に分かれて速さを競い、勝った方がその年の豊作とされます。
A.
毎年6月20日の午後2時頃から、鞍馬寺の本堂金堂前庭で行われます。雨天でも基本的に開催されます。
A.
行事の観覧自体は無料ですが、鞍馬寺への入山には愛山費(300円)が必要です。ケーブルカーは別途200円です。
A.
京都市内から叡山電鉄で「鞍馬駅」まで約30分。駅から仁王門を経て本堂まで徒歩約30分ですが、途中のケーブルカーを利用すると約2分で多宝塔駅まで上がれます。
A.
はい、別の行事です。竹伐り会式は6月20日の鞍馬寺の行事、鞍馬の火祭は10月22日の由岐神社の行事です。どちらも鞍馬山で行われますが、主催も内容も異なります。
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CHAPTER 06まとめ
鞍馬の竹伐り会式は、毎年6月20日に京都・鞍馬寺で行われる約1,000年の歴史を持つ伝統行事です。山伏装束の法師が大蛇に見立てた青竹を山刀で伐り、近江座と丹波座がその速さを競う姿は圧巻の一言。水神への信仰と修験道の験競べを起源とするこの行事は、牛若丸伝説の地・鞍馬山ならではの迫力ある初夏の風物詩です。

